straight
というわけでワンショットサンプルについての講義を始める。まず、この講義はこだわるとすごく長くなる。なので、今回はシンプルにまとめた。シンプルだが内容は濃い。どういう風にシンプルにしたかというと、例えばこういうサウンドはモジュレーションをこの設定でとかはやらない。

最初に大まかな目次を書いておくので、あ、俺が知りたいことと関係がないや。と思ったら、スルーしたほうがいい。


目次

●俺がワンショットサンプルを作ることになったきっかけ

●ゲーム効果音の種類

●ゲームの効果音制作のすすめかた

●制作方法その1 既存のサンプルまんま使い

●制作方法その2 既存のサンプルを加工

●制作方法その3 ソフトシンセのSFXプリセットから作る

●制作方法その4 波形編集ソフトで作る

●制作方法その5 abletonのsimplerで作る

●制作方法その6 自分で録音して作る

●制作方法その7 ソフトシンセで一から作る

●制作方法その8 偶然を利用して作る








-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●俺がワンショットサンプルを作ることになったきっかけ

では、まず俺がワンショットサンプルを作るきっかけになったところから説明したい。仕事でゲームのボタン押したときの音を作ってと言われたのだ。要するに効果音だ。サンプル集に入っているものだとSFX(サウンドエフェクツ)という名前がついていることが多い。ちなみにDTMにおいてのワンショットは、ドラムサウンドだったり、アクセントとなるサウンドだったりする。実はゲームサウンドと作り方は大差ない。

 
例えばこういうものだ。

最初俺は、なんだ、そんなの簡単じゃないか。適当にサンプルCDから選んで入れちゃえば終わるじゃん。と思って取り組んでいたのだが、それは思ったよりも難しくディレクターのOKをなかなかもらえない。最初、このディレクター耳悪いんじゃないか?と思っていたが、たしかに絵と合わせるとしっくり感が足りない。このしっくり感こそが実は、音効的SFXを作る時のセンスの分かれ目になる。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

●ゲーム効果音の種類

さて、ゲームの効果音の場合、システムの効果音ゲーム世界内の効果音とで明確に音の種類を分けなければいけない。また、さらにややこしいのがBGMに入っているワンショットサウンドが、それらとぶつかってもいけない。ゲームの音作りというのは実に奥が深いのがわかると思う。最高のゲームサウンドというのは、それらが全て調和して、プレイヤーが知らず知らず気持ちよくゲーム世界に没入されるように設計されていなければいけない。


 
ちなみに俺が最高だとおもうゲームサウンドは、このデッドスペースだ。環境音とクリーチャーの声の聞き間違いをわざと誘発していたり、一歩抜きん出た恐怖演出にしびれた。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●ゲームの効果音制作のすすめかた

これが一番大事なところ。ここを無視すると絶対に作れない。

まずワンショットサンプルを作るときには、絶対に最初にしなければいけないことがある。それは、最終的に作るサウンドを カタカナ で、あらかじめ作るということだ。例:プチュン。ギョバーー。これがないと始まらないのである。これを無視していると無限地獄に陥る。

さらに、ゲームのサウンドを作る時は、そのサウンドが鳴る時の状況とプレイヤーに喚起させたい感情(例:状況➔メニュー画面で決定ボタンを押した時。感情➔これでいくぜ!!)を用意しておく。自分の作っているサウンドがただしいのか迷った時は、これを指針にすればよい。DTMの場合は曲にあっているかどうかとか、それが曲のどういう位置を占めるのかなど考えつつ。

ゲームの制作現場において、ディレクターはゲームの全体を見渡せている。サウンドクリエイターは、まだそこまで見えていない。なので、ディレクターの頭の中にある完成形の中で鳴っている音というのを、取り出してやるのだ。これを取り出す作業は、ほぼカウンセリングに近い。なにしろ向こうはサウンドの素人だ。にもかかわらず、理想はしっかりもっている。

完全にコンセンサスが取れてから、ようやく制作にとりかかる。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その1 既存のサンプルまんま使い

foobar2000-02

この方法は簡単だ。自分が欲しいサウンドを、既存のサンプルの中から探し出すのだ。俺は数百ギガのサンプルから、これだと思うサウンドを見つけ出していた。そしてそれには途方もない時間がかかる。ただし、何度も繰り返すうちにそれを高速化する方法を身につけた。

必要なもの
foobar2000
soundideas社とかのサンプル集(超高い)

foobar2000というのはフリーのオーディオプレイヤーだ。windowsで動く。そしてwavではなくflacで音を管理をする。flacはわかっていると思うが、ロスレス圧縮されたオーディオファイルだ。これがwavより優れているのは、タグ管理できることだ。

よってタグ管理されたサウンドをfoobar2000の検索で、絞り込んで、それを高速で聞いていくということだ。これで無駄なサウンドを聞かなくてよいので、一気に絞り込める。当然既存のサウンドファイルは英語でファイル名がつけられているので、英語での検索が大事になってくる。うなり声➔growlとか知ってなければいけない。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その2 既存のサンプルを加工

既存のサンプルのここがちょっとちがうんだよなー。って場合は、その部分をカットしたり、別のものを組み合わせてより近くしていく。
ableton-live-10

必要なもの
ableton live

まず、既存のサンプルをableton liveにぶちこむ。ワープをオフにして、素の状態のファイルを加工していく。加工の仕方としては、別のトラックに別のサンプルをいれて、例えばアタックを固くしたかったら、固い音を入れたり、残響をつけたかったら、リバーブかけたりするのだ。はっきり言ってここで何をするのか?というのは、経験としか言いようがない。あらゆる実験をして使える音を見つけていくわけだ。ただ、何度も言うが、最終的にどういう音を作りたいか、カタカナで考えてないと、絶対にゴールにたどり着けない。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その3 ソフトシンセのSFXプリセットから作る
download

必要なもの
native instrumentのなんでも入りパックみたいなの。

native instrumentのサウンドは正直平べったくて固いので、使いづらい事が多かったが、特にFM8のSFXプリセットは使いやすいサウンドがたくさんあった。プリセットを切り替えながら鍵盤を弾きながら音を出していって、一度MIDI録音して、細かく調整してオーディオに書き出し、そこからまたエフェクト処理とか、他の音を足したりして完成させていた。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その4 波形編集ソフトで作る

K0000603505

必要なもの
soundforge

ソニーのサウンドフォージュという、波形編集ソフトは、ウインドウズで効果音作成するやつは、全員もってなければダメだ。なぜならこのソフトにしかないバッチ機能というのがあって、たくさんあるファイルを一気に加工できるからだ。普通にDTMやってたら波形編集ソフトを使う場面がわからないと思うが、DAWの波形編集というのは、ぶっちゃけ波形編集ソフトに比べたらおもちゃみたいなものだ。soundforgeは本当に強力なツールだった。

さて、このsoundforgeには周波数と波形(三角とか、のこぎりとか)を決めて、サウンドを生成できる機能がある。FM合成機能もある。また、ADSRやピッチエンベロープもついているので、数値をいじりながら目的のサウンドを作ることができる。またsoundforgeについているwave hamerというコンプレッサーはとにかく使える。こいつでパンプしてやると、そのあとソフトシンセのサンプラーに突っ込んでも使える元波形になる。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その5 abletonのsimplerで作る

必要なもの
ableton live

ソフトウェアサンプラーに、それらしき音がする元波形を打ち込んで、スタートポイントを適当にいじりながら、手で演奏していると、ふと、あ、これイメージに近いかも。というサウンドに巡り会える。それを起点に作り込むことがあった。正直この手法が一番DTMで使える方法だと思う。前にシェアした海外のアーティストもそうやって作っていた。ableton使いならこの技は知っておいてほしい。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その6 自分で録音して作る。

R-09HR-01

必要なもの
すぐファイルを転送できるレコーダー。エディロールのやつがオススメ。
ableton live

たとえば、コツ。という音を作る時に、俺はシンセで作るよりも、実際にコツという音を録音したほうが早いこともある。そしてレコーダーを持って固いところに何かをぶつけて録ったり。口でコ!とツ!と言ったりして後で合成したりした。

クリス・クラーク(現クラーク)というテクノの重鎮がいるが、彼のサウンドはそういう現実音とアナログ・シンセの野太い音で構成されている。かっこいい。テクノにおいては、サンプルした環境の残響が、DAWの中で作る残響と全く違うので、非現実的なサウンドが出せるわけだ。ただ、これはヒップホップ以降のエレクトロニカでは、もう死ぬほど試された技術である。今は一周回ってプリセットまんま使いが流行っている。ちなみに彼は環境音を録るときもマイクやレコーダーにこだわっている。彼にあこがれて買ったMPC1000は今でもタンスに眠っている。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その7 ソフトシンセで一から作る

1200px-Nintendo-Famicom-Console-Set-FL

必要なもの
DAWとシンプルなソフトシンセ

実はこれが一番むずかしい。過去の偉大なゲームサウンドクリエイターや、電子楽器のプログラマーたちが、シンセのパラメーターをいじって、それらしいサウンドを作り込んで、今のみんなが耳にする808のサウンドとかファミコンの音があるわけだ。当時は今みたいにDAWなんてなかったから、本当にコードを書いてプログラミングしていた。だからサウンドプログラマーと呼ばれていたのだ。

ファミコンのサウンドにおいては、現実では絶対にしない音が、サンプリング出来ない時代だったからこそ、ここはこのサウンドで行きましょう。といった感じにクリエイターたちの置き換えがあり、それが独特な電子音の世界を作っていたのだ。

これは俺のような80年台に少年期を迎えた人間には、このサウンドが最も最初のシンセサウンドの原体験だったので、だからこそ、すんなりテクノ・ミュージックに移行できたわけだ。それ以前の人たちは、今でこそ言われなくなったが、「あーピコピコね。」とバカにしていた。つまり、生楽器至上主義の人たちだ。

ファミコンの与えた影響はでかい。今のチャートに、ピコピコがならない曲を探すほうが難しい。ピコピコつまりブリープサウンド。同時発音数3とかの世界。チップに電圧が足りない時のよれた感じとか。電子音も生楽器のように意図しないズレがあったのだ。(そこまで再現しているチップチューンは少ない)

話がそれてしまったが、効果音を作る最終的なゴールは、このシンプルな波形から何を創造できるか?になっていくと思う。その最たるクリエイターこそがAphex Twinだと俺は思っている。


このTUSSという変名でリリースしたとき、AphexTwinを耳で聞けているやつは、すぐにリチャードの音だ。とわかった。わからないやつは単なるブームで聴いていたやつだ。良い耳があれば、リチャードがいかに他と違うサウンドを出してるかがわかるぞ。奇抜な音なのに調和が取れている。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●制作方法その8 偶然を利用して作る
必要なもの
ableton live、ソフトシンセ、MIDI鍵盤

これは結構面白いんだが徒労に終わることも多いので、時間があるときにのみおすすめの方法だ。適当にソフトシンセを立ち上げて、鍵盤を適当に弾きながらレコーディング、さらにループで録音させたままにしておいて、ピッチベンドやら、あらゆるパラメーターをランダムにいじりながら、あ!これはと思う音が出るまで、多重MIDI録音していく。

いい音ができたらそれをMIDI編集してオーディオに書き出す。これは再現性が低いので、煮詰まったときとかに、最終手段としてやっていた。




-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------


さて、駆け足であらゆるワンショットの作り方を説明した。まず大事なのはどんなワンショットサウンドを作るか、事前に決めておくことが重要。そしてそれをカタカナにして、一体どういう構成で作ればよいか想像すること。あとは実験実験で、自分のやり方をみつけてくれ。俺がすごく優れているとは思ってはいないが、効果音に関しては、ある程度自信があった。曲作りのセンスはなかったので、ハリウッドのスタジオで音効で働きたいと思っていた。

最後に俺が映画を見ていて、この効果音は絶対に俺じゃつくれないな。と思ったやつ。


トランスフォーマーの効果音は気が狂ってるな。と思った。

 
映画がずっとやっている間、まるでリチャードデバインを聞いているかのような感じだった。


よくわからない。ここをもっと教えて欲しい。とかあったらコメントかけ。