とあるDTMerは決まった音色でしか曲を作らない。その音色でなら無限に曲を生成できると彼は言った。しかしある時、頼まれ仕事で、いつもと違うニュアンスの曲を彼は作らなければいけない時に、これまでではありえないくらい、クオリティの低い曲を作った。

そう。彼は音色選び(作り)に関してはド素人だったのである。

話は変わるが、ヘビーメタルはギターのサウンド、ドラムのサウンド、使うエフェクターの種類、レコーディングのプロセスなんかが、ほぼ固定なので、やはり音色選び(作り)という途方もない作業をしなくても済む”作曲に専念できるジャンル”であるといえよう。

このように、あるジャンル音楽を作るというのは、無限の選択から解放され、作曲に専念できる安心感がある。

下手な人は、ここでお手本を用意せずに延々音色の組み合わせばかりして、一向に作曲が進まない。しかしながら、斬新な組み合わせというものを模索する過程では、音色の組み合わせはやりたくなるのもわかる。大抵音色をあれこれ組み合わせたがるやつは、新しいサウンドを作りたい思っているのだ。

しかし、ひとつづつプリセットを探すなんてことをやっていたら、とてもじゃないが作業は終わらない。そんな時に役に立つのがサンプルだ。サンプルは音色という抽象的なものから、もう少し具象的なものになった素材だ。これをジャンル関係なく適当に並べるだけで、思ってもみなかった音色の組み合わせが生まれる。もちろん細かく操作できないという制約がつくが、そこは工夫なのだ。どう工夫するかは自分であれこれやってみればいい。案外みんなやってない。

一つのジャンルのサンプルしか使わないのはもったいない。せっかくのDTMというフライパンで卵焼きしか作らないようなものだ。

せっかくSpliceのようなサービスがあるのだから、あらゆるジャンルのサウンドを組み合わせて、新しいサウンドを模索してみては?

それとも、できる曲が、特定のジャンルじゃないことが怖いか?それは日本人だからだ。日本人のDNAに刻まれた、他人と足並みをそろえないと村八分になるという恐怖がDNAに刻まれているのだ。村八分を恐れるやつが、DTMをやるな。
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