Roland EF-303

Bad Gear - Roland EF-303

この回の結論

Roland EF-303 は、90年代キッズが音楽雑誌をめくりながら欲情した類の機材。同期する FX、手で触れるコントロール、ほぼどんなセットにも噛み合う佇まい、おまけにドラムとシンセまで乗っている — 大した約束だったし、Roland はまあまあ守った。ただしタイミングは怪しく、音 (特にドラム) は限られ、見た目は新品同様なのにノブが壊れている実機はビルドクオリティへの信頼をまるで与えてくれない。ブティック版 EF-03 が出るのも時間の問題だろう — オリジナルの消防車カラー、I/O は全部ミニジャックに格下げ、そして皆さん大好きな 10ミリのウルトラショートストロークフェーダー付きで。

何を喋っているか

  1. 世界一嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。Roland のヴィンテージ TR や TB を思わせる3桁の数字を見ると、シンセオタクのトカゲ脳がパブロフの犬みたいによだれを垂らし始める。60年代のレアなスポーツカーだろうが時計だろうが、ガタの来たダンスミュージック用 FX 箱だろうが関係ない。
  2. というわけで今日は Roland EF-303。DJ と電子音楽家を想定して作られたこの FX ユニットは、我らが大好きな音楽機材メーカーが90年代末〜2000年代初頭に出したグルーヴツールの中でも、レアで謎めいた部類に入る。
  3. 神聖な「303」の名を DJ エフェクターに貼るのはやや誤解を招く、と思うかもしれない。だが Roland の弁護をすると、見た目以上の中身がある。前面を支配する1ステップ1フェーダーの栄光のシーケンサー、触ってくれと言わんばかりの MC-303 風ノブ、派手なボタンの数々。エフェクトプログラムは13種。
  4. 定番のフィルターと EQ、Roland 印の lo-fi、リングモジュレーター、良質なモジュレーション、グルーヴィーなスライサー、それと一見ごく普通のコンプとリバーブ。
  5. どの処理も90年代末のデジタル臭さが濃厚で、例の16ステップシーケンサーがなければ何も語ることはなかった。シーケンサーは各プログラムの主要2パラメータかエフェクトバランスをモジュレートでき、パターン長も縮められる。
  6. ループ / ワンショット / ステップ実行の切替、そしてランダムを含む5つの方向モードが気に入っている。ステップ感はスムージングで均せるし、大抵は何らかの LFO か時間系の魔法が動いていて、マスターテンポに同期して音価で指定できる。いいね。
  7. frequency range パラメータの効き方はプログラムごとに大きく違うが、だいたい — お察しの通り — エフェクトのかかる周波数帯域を決める。そこまでは実にグルーヴィー。だがシンセ部はどうか。正直、やや期待外れ。シーケンサー自体は303っぽいモチーフを作るのに良く働くのだが。
  8. スケールを設定でき、フェーダーの音域を制限でき、16分以外の分割も選べ、スライド・レスト・音長も打ち込める。それでもモノシンセ2種とドラム部はあまりに限定的。どちらのシンセもカットオフとレゾナンスしか弄れず、違いはディレイが付くか歪みが付くか程度。
  9. ただし MIDI 経由でならさらに多くのパラメータに触れる。ドラム部は4音で1キット、それが4キット。EF-303 は MIDI クロックを渋々受け付ける。
  10. そして自分が吐き出すクロックはあちこち散らかっている。MIDI 実装が予想より良いのは助かった。というのも手元の個体は4つあるメインエンコーダーのうち2つが、自分のせいじゃないと気付くまで半日かかるほど陰湿な壊れ方をしていた。ジャムでは外部 MIDI コントローラーを使い、これは完璧に動いた。ただしプログラム間をシームレスに切り替えることはできない。
  11. 切替の過程でシーケンサーのタイミングもよく狂う。フォノプリアンプとマイク入力を内蔵、RCA 端子に文句を言うのは筋違いだろう。ヘッドホンで FX 設定を試聴できるのは良い配慮。自分の地域で、臓器を売らずに済む値段の EF-303 を見つけるのは少々骨が折れた。
  12. EF-303 のコンセプトは面白いし、発売当時を考えれば機能も豊富。では Roland は実行段階でしくじったのか。今日のイントロ曲でドラムとシンセ部はもう聴いてもらった。そう、ほとんど滑稽な量のフィルターのステップ感は、リバーブとディレイの雲でごまかせる。ではエフェクターとしての原点に戻ってみよう。
  13. オールドスクールな DJ FX の良い詰め合わせ。プログラムをつっかえずに切り替えられないのは制約で、ジャム丸ごとで EF-303 をタイムキープさせるには何テイクか必要だった。とはいえこういう音を求める層は確実にいる。次はモノシンセプログラムを聴きたい。
  14. モノシンセによるジャム。
  15. EF-303 — ダンスフロアの人間全員をどうしてもトラウマにしなきゃいけない時に。類似品にご注意」。アシッドモノシンセとしては野蛮な解釈だが、実は気に入っている。エフェクトも音も、これ以上ないほど90年代末。というわけで盛りに盛ったレトロ Goa トランスで限界まで押してみる。ダサいのは百も承知だが、他にどうしろと。超汚いアシッドテクノもあるが、それは MC-09 の回でやった。
  16. 「あの回も絶対見てくれ。話が逸れた。ああそうだ、ランダムな90年代末のドラッグミュージック」。
  17. Verdict。Roland EF-303 は、自分のような90年代キッズが昔の音楽機材雑誌をめくりながら欲情した機材の一つ。同期する FX、手で触れるコントロール、既存のほぼどんなセットにもぴったり収まり、ドラムとシンセがおまけのさくらんぼ。相当な約束だった。
  18. そして Roland はそれを守るまあまあの仕事をした — まあ、おおむね。タイミングに問題があり、音、特にドラムは限られ、見た目は新品同様なのに壊れたノブは全体のビルドクオリティへの信頼をまるで与えてくれない。ブティック版 EF-03 が出るのは時間の問題だろう。オリジナルの消防車カラー、I/O は全部ミニジャックに格下げ、そして皆さん10ミリのウルトラショートストロークフェーダーが大好きだと聞いている
  19. 視聴に感謝、また次回。高評価・登録・パトロン、そしてどんな機材を番組で見聴きしたいかコメントを、といういつもの締め。