この回の結論
SH-01A で作業するのは気持ちのいい体験だ。馴染みのある VA サウンドに気の利いた追加機能が少々、そして音楽制作の邪魔をする要素が何もない。だがまさにそのミニマルさが、今の時代には売りにくさになる。多くのシンセ好きは Uli のアナログ代替品を選ぶだろうし、筋金入りの Roland ファンでさえ、さっき触れた S1 のほうがずっと現代的な解釈をかなり手頃な値段で出してくる。機材選びが常に合理的判断で決まるわけじゃないのは全員知っている。本当に大事なのは、青と赤の限定版をまだどこで買えるかだ。
何を喋っているか
- 世界一嫌われたオーディオ機器の番組へようこそ。このポスト SF 時代において、Roland Boutique は「不朽の名機のミニチュア・クローン」から、Roland Cloud という音楽機材版スカイネットが放つ自律戦闘ドローンへと進化した。しかも Reverb の転売ヤー御用達の密輸品の顔をして。
- 今日の題材は SH-01A。あの SH-101 を 2018 年にデジタル化して縮めた転生体だ。これでもまだ「オールドスクール組」に分類されるので、80年代のオリジナルとの比較に耐えつつ、機能てんこ盛りの新しい兄弟たちにも追いつかなきゃいけない。楽しくなりそうだ。
- 一見したところ、チビ SH は要件を全部満たしている。ミリタリー風の塗装、オリジナルのピッチ/モジュレーションのアレとキーター用グリップの代わりに載った、体格に不釣り合いなデカいタッチストリップ。ただし実際に弾ける自己完結型が欲しいなら、人類史上最悪クラスのキーボードにもう100ドル払うことになる。
- 他のブティックのスライダーがほぼ喜劇的な小ささなのに対し、SH-01A のはまだ使える。それでもライブの熱の中で事故を起こすには十分小さい。オシレーターセクションはデジタルの ACB エンジンで、健全なシンプルさ。PWM 付きパルスとノコギリ波。
- クソタイトなサブオシレーターはオリジナルと同じ3モードを搭載。ノイズもあり、Roland は追加で Spectrum と2オクターブ分を足してきた。悪くない。フィルターはゴムみたいな粘りが滲み出ていて自己発振もするが、設定を極端にすると醜い頭をもたげるエイリアシングは隠しきれない。
- エンベロープ1基と同期できない LFO 1基。俺みたいな質素なシンセ野郎にはこれで十分だ。攻撃的で無調な FM サウンド用のターボブーストもある。さらに、厳密にモノフォニックだったオリジナルに対し、Roland は4声ポリモードを導入した。
- コードモードでは複数オシレーターの怪物じみた化け物を作れる。ユニゾンは残念ながらデチューンもパンも無し。アルペジエーターは「これ以上基本的にはなれない」レベル。そして1840年代の電信みたいな見た目の100ステップシーケンサーではコードも打ち込める。
- 兄弟機と違って SH にはエフェクトが一切無い。この超とっつきやすいシンセエンジンは、骨みたいに乾いたベース、ブリープとブループ、そしてお馴染みのテクノ的ノイズを求めているなら十分応えてくれる。
- CV/GATE は出力だけで、対になる入力が無い。ただし外部クロック入力はフロントパネルに載った。Roland 製品なのでメニューダイブはそれなり、マニュアルはマニュアルを名乗る資格が無い。ノイジーな micro USB 電源、薄っぺらいスピーカー、リアパネルを見た時の感情の起伏といったブティック恒例の癖も予定通り。
- SH-01A 1台の値段で、もっと小さいのに音は近い AIRA Compact S1 が2台買える。今回も機材を貸してくれた Klangfarbe に感謝。SH-01A は SH-101 の代役という仕事を非常に真剣にこなしている。問題は、この筐体サイズが致命傷か、あの名機のトーンを再現できているか、コンセプトが今でも通用するかだ。
- シンセの音は今日のイントロ曲で既に聴いてもらった通り。ベテラン業界人のプロ意識で仕事を片付けるタイプだ。ではシーケンサーにファンキーなモールス信号を送ってみよう。
- アナログ純粋主義者は SH-01A の音の特性のいくつかに気分を害するだろう。だがフィルターはレゾナンス高めでよく機能するし、スイートスポットは山ほどある。次は追加されたポリ機能で、現代版の80年代ポリシンセになれるか確かめたい。
- (ポリでのパッド試奏。本人は笑うだけ)
- よし、SH-01A はリッチなヴィンテージ・パッドの第一候補ではないが、結果は十分に面白く使える。外部エフェクトとの相性も良い。構造は単純でも SH-101 系の万能さは伝説的だ。というわけでSH-01A とちょっとした DAW マジックだけで、ドラム込みの1曲を丸ごと作る。怪しい倉庫パーティー、気合の入った家事、高性能な買い物ツアーに似合う、意外と不穏なサウンドトラックだ。
- (SH-01A 一台だけで作られたトラックのフル再生)
- Verdict。SH-01A で作業するのは清々しい体験だ。馴染みの VA サウンドに気の利いた追加機能が少しあるだけで、音楽制作から気を逸らすものが何も無い。ただしまさにそのミニマリズムが、今の時代には売りにくさに変わる。多くのシンセ好きは Uli のアナログ代替を選ぶだろうし、筋金入りの Roland ファンでも S1 のほうが現代的だ。
- S1 はこの題材に対してずっと現代的な答えを、非常に手頃な値段で出してくる。とはいえ機材選びが常に合理的判断でなされるわけじゃないのは全員承知の通り。本当に重要なのは「青と赤の限定版はまだどこで手に入るのか」だ。