この回の結論
ゼロ年代に実績あるデジタルシンセエンジンを使い回して、品質の怪しいコンパクト機に詰め直したのは Novation だけではない。KORG は Radias を microKORG XL にし、Roland はもっと前に MC-505 をハッピーピル漬けにしたような D2 を出した。この手の機械では毎回「1. なんだこれは 2. くそ、いい音するじゃないか 3. 誰がこの三菱ミラージュ / シボレー・スパークに V8 エンジンを積んだんだ」の三段階を通ることになる。鍵盤弾きとしては素人の自分でも、XioSynth の鍵盤は間違いなく人類への侮辱だと言えるし、オーディオインターフェイスとそのドライバをプロの制作に使う気にはならない。ただし熱帯の国を長期で旅するには理想的なシンセかもしれない。小さくて軽く、音楽を作るのに必要なものは全部入っていて、ビーチでココナッツウォーターを飲んでいる時にビルドクオリティやドライバなど気にならない。そしてサルに盗まれようが、フルムーンパーティーで欧米人観光客に吐かれようが、こちらの心は折れない。
何を喋っているか
- 「世界一嫌われたオーディオ機材」の番組 Bad Gear へようこそ。散々議論を呼んだ初代 Bass Station の回のあと、触っただけでバラバラにならない Novation 製品を試したくなった。
- 幸い、あのイコン的英国ブランドが生んだ別の物議機を、地元の売買掲示板でかなり妥当な値段で発見。Novation XioSynth 25 だ。49 鍵版と中身は同一で、A-Station や X-Station によく似た 8 ボイスのバーチャルアナログエンジンに機能を少し足し、より安く小さくまとめた一台。2007 年の発売当時、自分はこれが本気で欲しかった。
- 当時これさえあれば電子音楽制作の全ての望みが叶うように見えた。単純な時代だった。一見して XioSynth は何でも屋だ。Novation らしい VA サウンド、大量の物理コントロール、ゼロ年代の Acer ノート PC みたいなタッチパッド、ピッチ/モジュレーションのジョイスティック。さらにサウンドカードと、Logic 7 / Cubase SX3 / Live 5 用のコントロールサーフェス機能まで入っている。
- UI の基本は理解しにくくないが、だいたいは半分ランダムにボタンを押してツマミを回していれば何とかなる。充実したエフェクトセクション、アルペジエーター、そして X-Gator — 全開のトランスと Timbaland の R&B を思い出させるリズミックゲート。実際に鍵盤が弾ける人にはサステインペダル入力もありがたいはず。
- 初代 Bass Station と比べると、ビルドクオリティは「グラグラ」から「ペラペラ」に進化した。XioSynth をリリースした時、Novation はあまり友達を作れなかったらしい。だがネットで浴びている憎悪に本当に見合う機材なのか。冒頭の Michael Nyman オマージュで既にこの音は聴いてもらった通り、音の性格は明るくて前に出る、microKORG XL を思い出す感じだ。
- microKORG XL はこの小さな Novation の 2 年後に出た機材。ここからは、ほぼ電池駆動で組んだセットアップで XioSynth の多機能ぶりを試していく。
- XioSynth は Moog ではない。それでも音は弾いていじって楽しい。オーディオインターフェイスのドライバは自分のラップトップで動くものが見つからず、クラスコンプライアント動作は一応 OK、ただしレイテンシーは大きめ。初代 Bass Station と DAWless ジャムをやりたかったが、MIDI IN が無い。MIDI スルー箱として置いてあるラップトップは見なかったことにしてほしい。
- 演奏デモ。
- これも XioSynth の万能ぶりの証明。XY パッドはさっと雑にいじるには気持ちいいが、繊細な音作りとなると限界がある。X-Gator の設定は簡単で、リズムゲート系エフェクトの再流行を自分はまだ待ち続けている。個人的に好きなのはパッド系の音で、次はそのクラシックな Novation トーンをゆったりしたシャッフルグルーヴで聴かせる。
- パッドのデモ演奏、そして Verdict へ。
- ゼロ年代に、実績あるデジタルシンセエンジンを品質の怪しいコンパクト機に再利用したメーカーは Novation だけではない。KORG は少し後に Radias を microKORG XL にし、伝統的な意味でのシンセではないが Roland はその数年前にMC-505 をハッピーピル漬けにしたような D2 を出した。この手の機械では毎回三段階を通る。1. なんだこれは 2. くそ、いい音するじゃないか 3. 誰がこの三菱ミラージュ/シボレー・スパークに V8 エンジンを積んだ。
- 鍵盤弾きとしては素人なので鍵盤の質にはうるさくないつもりだが、XioSynth の鍵盤は間違いなく人類への侮辱。オーディオインターフェイスとドライバをプロの制作に使う気にもならない。ただし熱帯の国を長期で旅するには理想的なシンセかもしれない。小さくて軽く、音楽制作に必要なものは全部入っている。ビーチでココナッツウォーターを飲んでいる時、ビルドクオリティやドライバのことなど気にならない。
- そしてサルに盗まれようが、パンガン島のフルムーンパーティーで欧米人観光客に吐かれようが、心は折れない。見てくれてありがとう、また次回。高評価とチャンネル登録、そしてどんな機材を扱ってほしいかコメントもよろしく。