この回の結論
Zoom ARQ AR-48 は充実した機能セットと非常に革新的なコンセプトを持つ本格的なグルーヴボックス。DAW で期待するような音をハードウェアの世界に持ち込んでいて、UI もおおむね直感的だ。ただしこのサイケデリックな物体の中では、マニュアルにも YouTube のどの動画にも説明されていないことが山ほど起きている。全体的に未完成で、今の投げ売り状況を見るとこのまま放置される気がする。ファームウェアをハックする救世主が現れてこのマシンを別次元に引き上げてくれたら最高なのだが。それまでには、ステップシーケンサーでベロシティを打ち込む方法くらいは分かっているかもしれない。
何を喋っているか
- イントロ曲。この曲自体が AR-48 の内蔵ライブラリで作られている。
- 「世界で最も嫌われているオーディオ機材の番組へようこそ」。今日は Zoom ARQ AR-48 Aero RhythmTrak、オールインワンの制作・ライブパフォーマンス楽器。「私はハードコアな Zoom ファンだ」と自己申告し、この番組のほぼ毎回で Zoom のマルチエフェクターを使っていること、フィールドレコーダーが良いことは皆知っている、と言う。Zoom の製品ラインナップは普段「控えめ」を叫んでいるのに、2017年の AR-48 はかなり大胆な一手だった。
- スペック上は MPC や Digitakt を軽く超える機能セット。そして例の「型破りな」デザイン。このリング型楽器は creativity をブーストする — ただし「これが何に見えるか」という人々のアイデアの方を。ミレニアム・ファルコンでもサイケデリックな冷戦後の核ミサイル照準装置でもないが、UFO、ビンテージのキッチン照明、ニンテンドーのコントローラー、フリスビー、フラフープ、バンドのフロントマン専属ヨーコ・オノのためのデジタルタンバリンに喩えるのは、そう的外れでもない。
- そして古き良き「サイモン」ゲーム。デザイン部門が eXistenZ 級のボディホラーまで振り切らなかったことには感謝する。ぱっと見、AR-48 はスペック表の項目埋めを超えている。円形の32ステップシーケンサーがシンセセクション、ロンプラー、リサンプリング可能な本格サンプラーをトリガーする。あらゆる種類のクリエイティブエフェクトも入っている。
- ステージや DJ ブースで本気で恥をかきたい者は、取り外せるコントローラーリングでヨガのポーズを決めながら実際にパラメーターをいじれる。ルーパーと SD カードリーダーまで放り込んである。一方で接続端子は最低限まで削られていて、ステレオ出力1つ、ステレオ入力1つ、どちらもミニジャック。そして MIDI IN が無い。無限のクリエイティブな自由を求める人向けには、コントローラーリングをワイヤレス運用する Bluetooth アダプターが別売りである。
- 価格の推移が面白い。3年前は希望小売価格 415ユーロ31セント。そして自分はつい先日、投げ売りセールで新品を90ドルで買った。「その間に何があったのかは知りたくもないが、明らかに人々は新型 iPhone のようには行列を作らなかった」。ではなぜ Zoom はこの機能てんこ盛りの目障りな物体でグルーヴボックス業界をひっくり返せなかったのか。イントロ曲で既に AR-48 の音は聴いてもらっていて、内蔵ライブラリの音はトラックによく馴染む。
- 「使い方は一切分からないまま、とりあえず勢いで行ってみよう」。マニュアルを読む前のジャム。
- 「悪くない。ステップシーケンサーでベロシティを打ち込む方法はまだ分からないが、サンプルは弾いていて楽しい」。AR-48 の出す信号は非常にコントロールされていて、「すでにマスタリング済みというか、なんというか、そんな感じ」。ストンプボックスとアナログのバスドラムで少し荒らしてみることにする。
- ジャム。演奏中に「聴いてる人、like と subscribe を」。
- 「ステップシーケンサーでベロシティを打ち込む方法は、やっぱりまだ分からない」が、それ以外はこのグルーヴボックスは十分に筋が通っている。音は「ちょっと太すぎるくらい」の Jomox のキックドラムと張り合えるし、アルペジエーターも良い結果を出す。届いた箱を見て苛立ったのは、パッケージにダブステップへの言及が2つあったこと。「今は2011年か? 本当にやらなきゃ駄目なのか?」
- 「うわ、なんてこった」。ダブステップの流れでオチが付く。
- Verdict。AR-48 は充実した機能と非常に革新的なコンセプトを持つ本格的なグルーヴボックスで、DAW で期待する音をハードウェアの世界に持ち込んでいる。UI もおおむね直感的。それでも「このサイケデリックな物体の中では、マニュアルにも YouTube のどの動画にも説明できなかったことが山ほど起きている」。全体が未完成で、今の投げ売り状況を考えるとこのまま放置されそうだ。
- ファームウェアをハックする救世主が現れて、このマシンを別次元へ引き上げてくれたら最高なのだが。「それまでには、ステップシーケンサーでベロシティを打ち込む方法くらいは分かっているかもしれない」で締め。見てくれてありがとう、like と subscribe を、次はどんな機材を見たいかコメントで教えてくれ。