Roland Boutique JU-06A

Bad Gear - Roland Boutique JU-06A

この回の結論

Roland 最新の Boutique Juno は素直に良い音がする。オリジナルを知っている人はエミュレーションの弱点をすぐ見つけるだろうし、Uli Behringer のほうが Roland のマーケティング部より算数が得意だというのは公然の秘密だが、この番組で扱った Boutique の中ではおそらくこれが一番楽しい。ただし「楽しい」以上の用途で JU-06A を選ぶかは微妙で、Boutique の筐体と接続端子はステージで実際に弾くには向いていないし、トラックを作っている最中に TAL-U-NO-LX みたいなプラグインの DAW 統合の滑らかさを恋しがっている自分に気づいた。Roland の経理部隊が microKORG サイズの本物の 8 ボイス Juno に GO を出すまでには時間がかかるだろう。まあ、その頃には宇宙billionaire の子供につけるポップスターの名前のネタくらいにはなっているかもしれない。

何を喋っているか

  1. 世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。Boutique シリーズを技術的にどう思うかは別として、Roland がマーケティングでは完全に一枚上手だったのは確かだ。
  2. 小型化・機能削減されたシンセとドラムマシンのライン。ほぼ全機種がこの番組行きになるくらいの論争を巻き起こしたのに、割高な価格にもかかわらず驚くほど売れている。「まあ、これは違うかもしれないが」と一言挟んでから、2019 年の JU-06A の話へ。初期 Juno のベスト盤とも言えるデジタル機で、第一世代 Boutique の限定版 JU-06 の後継。
  3. Roland は GAS (機材買い病) を刺激するのに十分な機能を追加しつつ、上位機種も売り続けられるようにした。まさに天才の所業。Boutique は定義上あらゆるチェック項目を満たすことが科学的に証明されている。ちゃんとした筐体と、ちゃんとしていない鍵盤は相変わらずオプション。ただし今回はパッチ/シーケンサーのボタンを緊急用のノート入力に使える。
  4. 内蔵スピーカーは、ミニジャック端子と USB 電源という永遠の悲劇に対する笑いの提供役。前作と比べると JU-06A は本物にだいぶ近い見た目になり、ピッチ/モジュレーションのタッチストリップを廃止して、その場所に強化版 Juno-60 アルペジエーターを載せてきた。
  5. これは大歓迎。Juno-60 と Juno-106 のファンなら即座に馴染むはずで、あの典型的なフェーダー配列は、たとえば JP-08 よりずっといじりやすく、DCO エミュレーションにも直接触れる。
  6. 伝説のフィルター、ローカット、エンベロープ、LFO を順に鳴らしていく。
  7. 2 つのシンセモデルは確かに音が違う。エミュレーションの忠実度について自分は専門家ではないと断りつつ、「俺の Juno センサーがビリビリ来ている」。一方で明らかに忠実でないのがボイス数で、オリジナル 2 機種はどちらも最大同時発音 6 ボイス、それ自体そもそも多くはない。
  8. しかも旧 Juno は分厚い音で知られている。その上での JU-06A の 4 ボイスは、Roland ファンへの平手打ちであると同時に、マーケティングが数学に勝った勝利宣言だ。友達を作るもう一つの確実な方法は、ポリシンセにモノフォニックシーケンサーを積むこと。
  9. モノ音色で知られる楽器のほうにポリフォニックシーケンサーを載せておきながら、である。このシーケンサーは最大 16 ステップに限られるが、操作は素直でモノシーケンサーとしては驚くほど多彩。Juno は内蔵コーラスがあってこそ楽しい機材で、JU-06A のコーラスには文句なし。ディレイ FX も良い追加。
  10. よく話題になるサブオシレーターの揺れ (バグ) を再現しようとしてみた。106 エミュレーションのほうは驚くほどクリーンだが、60 のサブは確かに少しファンキーに揺れる。Chord 機能で即座にジャジーな響きが手に入り、外部クロック入力はモジュラーと仲良くしたがっている。膨大なパラメーターは隠しコマンドの向こう側。
  11. 「何か押しながらこれを押す、ただしボタンが光ってることを確認」方式で、毎回マニュアルを引く羽目になる。コーラス、ノイズ、複数台のポリチェイン、ポルタメント、LFO 波形、シーケンサー設定などがそこに埋まっている。
  12. 2 モデルそれぞれに 64 パッチスロット、電池駆動も可能。試聴機を貸してくれた Klangfarbe に感謝 (先週の reface CS よりは少しお高い)。Roland はオリジナルの再現を立派にやり遂げ、いくつかの制限つきで機能満載の楽器を作った。ではネット上の炎上は正当なのか。イントロ曲で既にこのシンセは聴いているはずで、品のある控えめさと相当な重量感で仕事をしている。
  13. 第一世代の 16 ステップシーケンサーという制限をあえて受け入れて 1 曲。
  14. 「これはかなり気に入った」。フィルターはレゾナンスを上げても優秀で、こういうミニマルなアレンジなら発音数の制限もさほど問題にならない。ただし手持ちの MIDI インターフェースとの組み合わせでクロックの問題が出たため、アルペジオのオーバーダブは無し。Juno はハウス系サウンドで知られる。
  15. というわけでハウスで実地テスト。
  16. 確かに仕事はする。ベースは良い。完全に破綻させるのはほぼ不可能な一方で、「悪くない音」を「素晴らしい音」に化けさせるのは、少なくともこの文脈では難しかった。もう一段上げられるか試したい。「チャック・ノリスならシンセを何本重ねるか」の答えはもちろん「全部」。
  17. 80年代シンセウェイヴを、ゼロ年代 EDM の音で、70年代プログレ&クラウトロックのスタジアムバンドが演奏する、という代物。
  18. Verdict。Roland 最新の Boutique Juno は良い音がする。オリジナルを知る者はエミュレーションの弱点を必ず見つけるし、Uli Behringer のほうが Roland のマーケティングチームより算数が得意なのは公然の秘密
  19. それでも番組で扱った Boutique の中ではたぶんこれが一番楽しい。ただし「楽しい」以外の用途で JU-06A を選ぶかは怪しく、Boutique の形状と端子はステージ演奏向きではない。制作中は TAL-U-NO-LX のようなプラグインの DAW 統合の滑らかさが恋しくなった。Roland の経理部隊が microKORG サイズの本物の 8 ボイス Juno を承認するには時間がかかるだろう。
  20. 「まあ、宇宙billionaire の子供につけるポップスターの名前のネタにはなるかもしれない」と締めて終了。高評価・登録・Patreon 支援と、次に扱ってほしい機材のコメント募集。
  21. 恒例の月イチ ボコーダー・シャウトアウト。ティア 4。数週間前に扱った Nord Lead 2 にはボコーダーが無いので、一番近いのは Nord Modular G10 あたりか、という推測付き。
  22. ティア 6 は Roland VT-3 を全開にして TC の FX を足す。改めて支援に感謝、また来月。