このスネア、クソみたいな音がする

Bad Gear - These Snares sound like SH*T!!!

この回の結論

ER-1 を弾くのは楽しい。他のドラムマシンとは全く違う、いじりがいのある音がたくさんあるだけでなく、シンプルさと奥深さを兼ね備えた珍しい機材だから。癖のあるビンテージな UI と機能にも味はあるが、このデジタルな良さを全部、今の製品で欲しい。今のところ Korg のラインナップはその期待に応えていない。「Korg が長年ためこんだ名機のモデルとアルゴリズムを全部載せた新品のドラムマシンが買えたら最高なのに。……今のは忘れてくれ」。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われているオーディオツールの番組、Bad Gear へようこそ」。いや、Korg Electribe ER-1 の回はまだ無い。自分でも調べて確かめた。そして、
  2. そう、スネアは本当にクソみたいな音がする。見た目からして全部の条件を満たしている。サンプリング担当、ダンス系ロンプラー担当、そしてアニメ『ボブズ・バーガーズ』で有名になった赤いやつのようなしょぼいシンセ担当の兄弟機と違い、ER-1 はデジタルドラム専門。
  3. シーケンサーは兄弟機と同じ64ステップ。近年の音楽機材史でも屈指のガタガタな時計に頼っていて、パーカッションシンセ4つ、あらかじめ入ったローファイなサンプル4つ、それに後で話すいくつかの小ネタを鳴らす。主な音源は単純なオシレーターが中心で、
  4. サイン波と三角波を出せ、音程も変えられる。面白いのはここからで、6種類のモジュレーション源で周波数を揺らせる。普通の波形、昔の SF っぽい奇妙さが出るサンプル&ホールド、例のしょぼいスネアの元になるノイズ、そして単純なエンベロープ。
  5. エンベロープを使うと Kraftwerk 風のザップ音や、横揺れ具合がいろいろなキックが作れる。音量用の単純なエンベロープと、「ロウブースト」という基本的なフィルターで音をまとめる。スカスカの細い音から、低音の効いたオーバードライブまで。元のサンプルは好みでなかったので、「Electribe の呪術師」から代替ファームウェアを買い、
  6. 自分のサンプルを読み込めるようにした。ちょっと面倒で Windows PC 専用。このチャンネルに専用の解説動画があるので見てほしい。今回はもっと聴きやすい 808 の音を入れた。どちらにしてもサンプル再生で触れるのはピッチ、ディケイ、ロウブーストだけ。チョークグループは2つ。
  7. 音作りの仕上げはグルーヴィーなディレイ。ただし常に全部の音にかかるので理想的とは言えない。それに変なリングモジュレーター。これはパーカッション1と2、または4とオーディオ入力にかけられ、外部の音をシーケンサーでトランスゲートできる。
  8. 強弱を付ける方法はマスターのアクセントトラックだけ。Volca ユーザーにはおなじみの Korg のモーションシーケンスで、パラメータを滑らかにつなぐ初歩的なオートメーションができる。TR 式シーケンサーのタイミングは
  9. あちこちズレる。スウィングは72時間ぶっ通しで飲んだ後のドラマーみたいな音。癖が多すぎてライブが悪夢になりかねない。パターンを書くような基本操作でも再生を止める必要がある。ミュートは保存も呼び出しもできず、つまみは誘うような見た目なのに、触った瞬間にパラメータが飛んで
  10. 音を完全に台無しにすることがある。ソングモードや設定変更ではメニュー潜りもある。代替ファームで貧弱な MIDI 実装は改善されるが、MIDI 同期は相変わらず博打。初代エレクトライブを使うたびに、ぐらぐらのノブが付いたこの頼りない装置が、いまだに1999年みたいに動くことに驚く。ステレオ出力1系統だけなのも制約。
  11. Mk2 はほぼ同じ。その DNA は Volca Drum に受け継がれ、プラグイン版もある。中古の値段は「今の持ち主がどれだけ金に困っているか」次第。ER-1 は初代エレクトライブで一番象徴的な機種で、今でも唯一無二の音がする。なぜこのスネアで許されたのか。イントロの曲で既に聴いている。『ボブズ・バーガーズ』の脚本チームにはシンセオタクがいるらしい。スウィングを上げ、
  12. 内蔵ディレイの制限をかわしながら、お約束の TB-3 を足した1本目のジャム。
  13. ピークタイムというよりウォームアップだが、言いたいことは伝わるはず。キックは混ぜにくいことがあり、音程のある音のピッチ合わせは一苦労。サンプルを差し替えたことは1ミリも後悔していない。でもグルーヴはある。次は兄弟機と組んで、オーディオ入力のトランスゲートを試す。
  14. 2本目のジャム。
  15. ついにクソみたいな音じゃないキックとスネア。ただ、ER-1 の巨大なベース音を半音単位で弾けないのは惜しく、オーディオ入力のシーケンスは小ネタ止まり。いじるのは楽しいが、ER-1 の音はやや荒い。DAW とギターチューナーの力で磨き上げて、抽象的な1999年の SF バンガーと、開き直ったデジタルなサブウーファーの試験曲を作れるか試す。
  16. 3本目のジャム。
  17. 結論。ER-1 を弾くのは楽しい。他のドラムマシンとは全く違う、いじりがいのある音がたくさんあるだけでなく、シンプルさと奥深さを兼ね備えた珍しい組み合わせだから。癖のあるビンテージな UI と機能にも味はあるが、このデジタルな良さを全部、今の製品で欲しい。今のところ Korg のラインナップはその期待に応えていない。
  18. 「Korg が長年ためこんだ名機のモデルとアルゴリズムを全部載せた、新品のドラムマシンが買えたら最高じゃないか?……今のは忘れてくれ」