80年代回帰シンセ

Bad Gear - Korg Poly-800 - 80s Throwback Synth

この回の結論

KORG Poly-800 は決して取っつきのいい楽器ではない。電卓みたいな見た目と物理コントロールの絶望的な少なさは、当然ながら万人向けではない。しかも価格を抑えるために各所で手を抜いており、その最たる例がフィルター1基しかないこと。それでもこの小さなキーボードが好きだし、再評価されているのには理由がある。独自のキャラクターを持った音を作れて、しかも80年代のノスタルジーをちゃんと喚起する — その時代の実体験を持たないほど若い者にまで。Poly-800 はシンセ界のベスト・キッドと言える。最後に本来の力を発揮するオタクの負け犬だ、多少の改造の助けを借りて。

何を喋っているか

  1. 「世界一嫌われたオーディオ機器の番組」Bad Gear へようこそ。ここ数週間 Roland のスポンサー契約が動いてるように見えたが、残る疑問は「どっちがどっちのスポンサーなんだ」
  2. その呪いがついに解けた。住宅ローンを組まずに KORG Poly-800 を入手できた。1983年のこの設計傑作がいつの間にかレアで高価になってたのは驚き。ゼロ年代初頭に友達が持ってたが、当時は全員一致で「史上最大のクソ」という評価だった。
  3. Poly-800 は1000ドルを切った初のフルプログラマブル・シンセで、狙いは明確に予算の限られた奏者。ステージ用のコンパクトで軽い楽器が欲しくて、あと全般的なイケてる感じも欲しい層向けに、上位機の機能を大量に積んだ。発売時は大騒ぎになり、その後長らくシンセ好きに蔑まれ、今は「クールなシンセ」として復権中。一見するとチェック項目は全部埋まっている、まあ一応。
  4. はっきりさせておくと、名前に反してこの楽器はポリフォニックではない。パラフォニックで、8ボイスがアナログフィルター1基を共有する。フィルター・エンベロープは「鍵盤を押すたびに再トリガー」と「汚い指を離すまで何もしない」で切り替えられる。
  5. 次はオシレーター部。DCO はアナログか否か論争のために、もうポップコーンを用意してある。コメント欄でやってくれ。その DCO で KORG はオルガン的な加算方式+ノイズを採用していて、その変てこな音が自分は好きだ。
  6. オシレーターは2基あり、スタックすれば太い音になるが、パラフォニー数は4に減る。アンプとフィルター用の3つのエンベロープは単純な ADSR ではなく、ブレークポイントとスロープの第2ステージを持つ。80年代シンセサントラ的な、うねるベースドローンにうってつけ。コーラスも大のお気に入り。
  7. 一方 MIDI は非常に基本的。Poly-800 mkII (字幕は「802」) は SysEx を扱えるが、初代はノート、ピッチベンド、モジュレーション、プログラムチェンジのみ。鍵盤は当時の廉価機に載っていた典型的な80年代の安物ノン・ベロシティ。KORG はコードメモリーも実装した、もちろんメジャー7thを仕込む必要がある。
  8. さらにギミック的だがポリフォニックで MIDI 同期できるシーケンサーも。シーケンサーとプログラムメモリーの書き込み許可ボタンはリアパネルにあって、軽いが絶え間ないウザさ。音色はテープにバックアップでき、フットスイッチで音色を順送りできる。
  9. その音色は安っぽいキーボード系トーン、ブラス系ベース、まろやかなストリングス、それに学校で一番イケてる子になれたはずのリード
  10. 操作は簡単だが常に快適とは限らず、物理コントロールの少なさを埋める改造が山ほど存在する。言うまでもなくジョイスティックが付いてる物は何であれクールだ。電池コンパートメントもあり、ビルドクオリティは既に時の試練に耐えたと言える。ただしキーター (ショルダーキーボード) というコンセプトの方は自信がない。
  11. Poly-800 は今では当たり前になった多くのシンセ機能を広い層に届けた。では今も現役たり得るか。イントロ曲で既にこのシンセの音は聴いていて、意外なほど大人びた音がしていた。もっとミニマルなアレンジで踏ん張れるか試す。
  12. 「うわ、これは生々しくて骨太、しかも心地よい」。人によっては汚すぎるかもしれないが、この全体のキャラクターは好き。ただしエンベロープはもう少し速くてキレがあってほしい。
  13. 内蔵シーケンサーは制限が多いが完全に実用範囲、特に外部 MIDI クロックに同期させたとき。エフェクターも足して、きれいなポリメーターで遊ぶ。
  14. 「変てこなレトロ、いいね」。ライブでこのシーケンサーは使いたくないが、スタジオでジャムるときのアイデア製造機としては悪くない。
  15. バリューボタンでのパラメーター編集は理想的とは言えず、手で触れるコントロールが恋しかった。Poly-800 のレトロな味わいには抗いがたく、また7thコードのフィナーレを作りたい衝動が強まってきた。というわけでコンセプトを次の次元へ持っていく、〈1995+送料〉のレトロキッチュなウィーン産クラウドラップ・インスト、80年代トラップ・バラード
  16. その曲を演奏。
  17. Verdict。Poly-800 は取っつきのいい楽器ではない。電卓みたいな美学と、不安になるほどの物理コントロールの欠如は当然ながら万人の趣味ではない。しかも価格を抑えるため各所で手を抜いており、その最たる例がフィルター1基のみという点。それでもこの小さなキーボードは大好きだし、再評価されているのには理由がある。独自のキャラクターを持つ音が作れて、なお80年代ノスタルジーを引き出せる。
  18. その時代の実際の記憶を持たないほど若い人間にすら効く。Poly-800 はシンセ界のベスト・キッド、最後に本来の力を発揮するオタクの負け犬だ — 多少の改造の力を借りて。見てくれてありがとう、また次回。チャンネル登録と Patreon、それに次に扱ってほしい機材のコメントもよろしく。
  19. パトロンへの感謝と恒例の月例ボコーダー・シャウトアウト。まず Tier 4。そして自分の元祖 microKORG グースネックマイクがついに再発見されたことを祝いたい。
  20. Tier 5と6。Seizer Blockband から「一番変な音がするデバイスで」とのリクエスト。Chet Daisuke の動画にあるニンテンドー DS のトークボックス改造を試したが、どうやら自分の DS は違う機種だったらしい。そこで手元で一番変な箱、Red Sound Darkstar を使った。支援に感謝、また来月。