この回の結論
VP-03 はオリジナルに期待される事をだいたいやるし、いくつかの制限を除けばそれなりにこなす。ただし本物のストリングスマシンとボコーダーの通は、ヴィンテージ実機とそのアナログクローンが持つ微妙なニュアンスの欠落に気付く。本職の鍵盤弾きは 6 声ポリなんて 10 フィートの棒でも触りたがらないし、Waldorf Streichfett や Roland 自身の VT シリーズの方が自分みたいなツマミ回しには面白い。お気に入りのシンセブランドが多国籍の巨大企業でよかったと思う時がある。これだけ的を外した製品を出していたら、他の会社ならとっくに店じまいしている。
何を喋っているか
- 「世界一嫌われたオーディオ機材の番組」Bad Gear。世の中に存在するボコーダーの数と、現実にボコーダーが必要な場面の数には、ひどい不均衡がある。
- 今回は Roland Boutique VP-03。伝説の VP-330 をデジタルで縮小再現したストリングスマシン兼ボコーダー。2017 年の発売時点で出足が悪く、そこから下り坂を転げ落ちた。本当は D-05 を手に入れたかったが、そう簡単には見つからない。
- 一見、レトロな新奇玩具のツボを全部押さえている。別売り 100 ドルのキーボードで補強も可。内蔵マイクはマイクとしては駄目、絶対に推奨しない。スライダーは他の Boutique より気前のいいサイズで、ボタンも超かわいい。
- 象徴的なオリジナルと同じヴィンテージ Roland のカラースキーム。ただし後で話す「気が遠くなるほど間抜けな制限」がいくつかある。できるのは 4 つ。ボコーダー、有名な 70 年代の明るいストリングス、そして心地よく不気味な合唱の音。
- それと、Roland が 1980 年頃に幸いにも搭載をやめてくれた、あのそこそこ役に立つプリセットのピッチエンベロープ。ストリングスは 1979 年版の奇妙なパラフォニック・エンベロープ挙動をそのまま引きずっている。
- ハイファイ寄りのトーンコントロール付き。合唱セクションは表面上は伝統のスプリット機能が消えていて、男声と女声のセット+艶やかなアンサンブル効果に縮小。ただし隠しメニューで男声と女声の境界線を設定できる。
- 3 つのセクションはリリースパラメータを共用、例のピッチベンドも共通。ボコーダーは好きなキャリアで鳴らせる、いいね。それについては今日の Patreon シャウトアウトで。全体としては Roland のもう一つのアイコンへの、敬意ある小型化に見える。だがこの小箱には暗い側面もある。
- アナログのディバイドダウン方式だった VP-330 は全鍵ポリでしかも位相がロックされていた。VP-03 の 6 声は位相キャンセルを起こしやすく、オリジナルからすれば冒涜に見える。さらに傷口に塩、物理的なキャリア入力が一切ない。外部音声を入れる唯一の手段は USB オーディオ、つまり a) パソコン b) 専用ドライバ c) 数々の理由で最高に面倒。
- 16 ステップ・シーケンサーはかなり原始的。ただし奇妙なサンプリング機能があり、コードメモリーは使える。
- VP-03 の音がオリジナルに忠実かどうかは専門外だし正直どうでもいい。だが原典と「Uli のアナログ解釈」との比較は山ほどあって、そのどれもが今の Roland を本当にひどく見せる。しかも Boutique 用キーボードまで足すと、意外に希少な VP-03 は 2018 年の VC340 より高くつくことが多い。
- Boutique のボコーダーは、Roland が何をやっても許されていた時代の産物。Behringer の犠牲になった最初のシンセの一つでは? 冒頭のイントロ曲で既に 03 の音は聴いている。あれはダーク DAW 術に手を出す必要があったが、それでも恐怖の交響曲のままだった。最初のジャムではソフト側の介入を最小限にしてみる。
- ジャム。おそらく忠実に再現されたエンベロープのだらしなさのせいで、打ち込んだコードは後処理で前倒しする羽目になった。
- それでもストリングスの艶やかな柔らかさと、合唱音のザラついたキャラクターは気に入った。サンプリング機能は、それ以外は普通の作りの機械にくっついた妙な追加物。というわけで放屁音を録音してコードを弾く時間。
- 「面白い機能だ。二度と使わなくて済むのが嬉しい。」確かにエッジの効いた音は作れるが、ワークフローは便利とは言い難く、結果はだいたい期待外れ。
- 次は、基本的な DAW の小細工で現代的な楽器に化けるか試す。「見たか Teenage Engineering、お前らがあのひどい Choir を市場に出す何年も前に、Roland は完全に無用な人声合成を切り拓いていた。」とんでもない原型。
- Verdict (結論)。VP-03 はオリジナルに期待されることをおおむねやるし、いくつかの制限つきではあるが、それなりの出来でこなしている。
- ただし通はヴィンテージ実機とそのアナログクローンの微妙なニュアンスを恋しがる。まともな鍵盤弾きは 6 声ポリなど 10 フィートの棒でも触らない。Waldorf Streichfett や Roland 自身の VT シリーズの方が、自分みたいなツマミ回しには面白い。お気に入りのシンセブランドが多国籍の巨大音楽企業でよかったと思う時がある。的を外した製品の量が計り知れないので、他社ならとっくに廃業している。
- 見てくれてありがとう、また次回。高評価・登録・Patreon、そして概要欄のリンクをどうぞ。Bad Gear の導師が何を買えと命じてこようが、支援はよろしく。
- 月例ボコーダー・シャウトアウト。何ヶ月もプラグイン処理とグラニュラー実験をやった後、今回はクラシックなボコーダーに 8bit 処理をひとひねり。ティア 4。
- パトロンのシャウトアウトが続く。
- ティア 6 のシャウトアウト。
- 「支援してくれて本当にありがとう。来月また会おう。」