サウンドトラック製造機

Bad Gear - Yamaha SY-22 - The Soundtrack Machine

この回の結論

「Yamaha SY22 なんて、しょぼい FM セクションが付いただけのロービット romper だろ、だってヤマハだし」と切って捨てるのは簡単だし、それは必ずしも間違っていない。内蔵サンプルライブラリは今の基準だと極小、2オペレーターは FM の名門の作にしては貧相、さらに追い打ちでフィルター無し・いかにも80年代な UI が人によっては即アウト。だがジョイスティックで複数の音をブレンドできること、そのスムーズなワークフローは「楽器は部品の総和以上のものだ」ということをまた証明している。SY22 は KORG 家の近親者ほどアイコンにはなれなかった — そしてそれはむしろ good thing だ。2021年でもプリセットのまま使っても許される。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われているオーディオ機材の番組」bad gear へようこそ。シンセメーカーが鍵盤にジョイスティックを載せ始めたのは、もちろん80年代。デジタル波形をいい感じにかき混ぜるためのやつだ。
  2. 始まりは1986年の Sequential Circuits Prophet VS、頂点は1990年の KORG Wavestation。今日はその Yamaha SY22 「ダイナミックベクターシンセ」。あの伝説の KORG 機と同時期に出て、しかもほぼ同じ人間たちが設計したのに、同じサクセスストーリーにはならなかった。
  3. それでもこのヤマハ製 romper × FM ハイブリッド、上位機だがジョイスティックの無い SY-77 の弟分は、Skinny Puppy や Moby といった名の通った連中の機材に入り込んでいる。「最初は興味があるだけだった、今は注目している」。SY22 にはジョイスティックがある、つまり条件は全部クリアだ。機能的な80年代末のデザインと UI。
  4. ベロシティとアフタータッチ付きの悪くない鍵盤、大人向けのピッチ/モジュレーションホイール、そしてそれ以外はほぼ何も無い。サンプルベースおよび FM のエレメントを最大4つまで組み合わせ、ジョイスティックでブレンドしたりデチューンしたりできる。
  5. プリセットの品揃えが面白い。ストリングス、「ドギー・ハウザー」系エレピ、いくつかの定番シンセ音。80年代の映画学科の学生がサウンドトラックの夢を見るときの、まさにあの材料。
  6. 鈴も笛も全部入りのドラムキット。それに、あなたの好みではないかもしれないが結婚式のギグでならたぶん問題なく機能する、大量の食パン的な音色群。
  7. 旧世代の AWM 波形は 1MB のライブラリから、12bit / 22kHz のサンプル。確かに味があり、使える変わり種も多く含まれている。一方で 2オペレーターの FM エンジンには少しがっかりした。256のプリセットパッチに固定されている。
  8. いじれるのはモジュレーターレベルとフィードバックだけ。振幅とピッチは LFO でモジュレーションでき、各エレメントに「ややこしいが強力な」エンベロープ、ボイス全体には簡素なエンベロープがある。
  9. ポリフォニーは16ボイス、8パートマルチティンバー。90年代初頭のデジタルヤマハなので、言うまでもなくプリセットは全部おぞましいリバーブとエフェクトに漬け込まれている。そして例のゴージャスなレゾナント付きマルチモードフィルターが — 冗談だ、もちろんフィルターは無い。ベクターの動きはボイスに記録できる。かっこいい。
  10. 標準 UI から触れない内部パラメーターの多くは SysEx でいじれる。無料の MIDI Forge の SY35 用ボイスエディターが SY22 でも問題なく動く。内蔵サンプルを使ったウェーブフォームシーケンスなど、気の利いた追加機能もいくつか入っている。
  11. ボイスランダマイザーもある。リアパネルに驚きは無し。本体は頑丈で軽い。鍵盤無し・微妙にアップグレードされた TG33 のほうが狭いスタジオには向く。あと、SY22 を Reverb に600ドル超で出すのがあなたのカルマにとって良いことなのかは分からない。ああ、こっちのほうがそれらしい値段だ。
  12. SY22 が持ち込むもの — ロービットのサンプル、簡素な FM、そしてジョイスティック。このマイナーなヴィンテージ鍵盤を嫌える人間がいるだろうか。今日のイントロ曲でもう SY22 は鳴っている。本物のフィルターがあれば良かったが。では1990年のプリセット地獄に潜ろう。
  13. プリセットのみのジャム。「こいつはストーンヘンジ味が強い」。1つか2つなら今の編曲でも使えるかもしれないが、これは明らかにやり過ぎだった。
  14. さらに、ジョイスティックを使えない状態だと基本の音要素はすぐ飽きる。次のジャムでは、デジタル陣営の主役がこいつ1台だけで持ちこたえられるか試す。
  15. ジャム。そして評価が反転する。
  16. 「今度はまったく別の話だ」。エレメント間をなめらかにモーフィングするのが簡単で、サステインしている音を切らずにボイスを切り替えられるのは他の多くの楽器にも欲しい機能。息づかいのあるロービットサンプルと安っぽい FM ターボに溺れそうになるが、このシンセはもっと攻撃的で前に出る音も出せる。次は80年代末のザラつきを。「ハッカーって本当に『侵入した』とか言うのか?」ホログラフィック・ヘアスプレー・ハードコア。
  17. アグレッシブ寄りのジャム。
  18. Verdict 前半。「しょぼい FM セクション付きのロービット romper だろ、だってヤマハだし」と言うのは簡単で、それは必ずしも間違いではない。サンプルライブラリは今の基準では極小、2オペレーターは名門 FM メーカーの歴史からすると貧相。追い打ちでフィルター無しと非常に80年代な UI。
  19. Verdict 後半。それでもジョイスティックで複数の音をブレンドできること、スムーズなワークフローは「楽器は部品の総和以上だ」と改めて示している。KORG 家の近親者ほどアイコンにはなれなかった — そしてそれがむしろ良い。2021年でもプリセットのまま使って許される。
  20. 締め。高評価・チャンネル登録・パトロン、それと「次はどんな機材を見て聴きたいか」のコメントをどうぞ。