例の Teenage Engineering のやつ

Bad Gear - That Teenage Engineering Thing

この回の結論

PO-33 はコンピュータ抜きの電子音楽制作へ入る、古典的なゲートウェイドラッグ。汎用性の高いロービットサンプラーエンジンは階級を超えて殴ってくるし、コンセプト全体が Teenage Engineering の商才の証明になっている。ただし値札が控えめでも、ポケットオペレーターはあっという間に金のかかる習慣になる。接続端子の乏しさ、おもちゃっぽい UI、貧弱な作りを考えると、EP-133 のようなもっと大人の楽器の方を選ぶ。ちなみにポケットオペレーター全ラインナップの値段があれば、オリジナルの Moog と歩行器と1ヶ月分のラーメンが買える。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組、Bad Gear へようこそ」。シンセオタクが機材を買いに出ると、割高に見える選択肢にいくらでもぶつかる — プラ筐体に入っただけの汎用 Raspberry Pi、今後5年動かし続けるのに必要な修理代の約50%の値段で売られている名機、そして世界中の GAS 患者の血圧を上げる例の Reverb 相場狂乱。
  2. 今日の題材は PO-33。2018年のロービットサンプラーであり、極小グルーヴボックスであり、なくてはならない塩キャラメル色の LED チェイサーでもある。安くて強力なのは確かだが、これは「財布に中世的な仕打ちをする」という Teenage Engineering の陰険な戦略の一部でもある。
  3. 一見この小さなポケットオペレーターは「寮の部屋を出たらユーロラック中毒になりたい」層が好むヒップスター記号を全部乗せしている。例の悪名高いハンガー、誰も頼んでいない疑似アニメーションに浪費されるモアレ発生装置みたいなレトロディスプレイ、そしてターミネーター2でジョン・コナーが使った ATM カード以来、最もそぎ落とされたプロダクトデザイン。
  4. 内蔵メモリは超クランチーなローレゾ音声40秒ぶんで、おそらく8bit / 23kHz サンプルレートで格納されている。これを8つのメロディックスロットで音階的に鳴らすか、同数のドラムキットとして鳴らすかを選べる。基本的なスライスにも対応。付属のトーナル素材は正直やや物足りない。
  5. 一方でストックサンプルのパーカッシブ系にはなかなか良いものが混じっている。内蔵マイクか、左側の多機能入力に突っ込んだ何かで自分の素材をサンプリングできるのは言うまでもない(この入力は後で詳しく見る)。総ポリフォニー4音は制約だが、ノートスチールの処理は謎めいた優雅さでこなしてくる。
  6. 音作りの機能は最小限に抑えられている。トリム、ボリューム、ピッチ、それと十分実用的なレゾナンス付きハイパス/ローパスフィルター。エンベロープも LFO も一切なく、特にアンプリチュード用のそれが心底恋しくなる。
  7. FX を打ち込みで差し込むこともでき、主にサンプル再生に作用する。上に挙げた音色パラメータの大半と同様、これらをステップにロックしてパターンに書き込める。シーケンサーはごく基本的な16ステップ型だが、パターンチェインは朝飯前。他のポケットオペレーターと違い、メロディックパートに使えるスケールは1つだけ。
  8. スケールが1つしかない制限は、私と違って基礎的な音楽理論の心得があれば回避できる。さらに、やたら表面的なマニュアルが省いている追加機能のリストもある — ラチェット、ノートレングス、そして自分では絶対に全部覚えきれないであろう立派なワークフローハック群。とはいえ基本操作はすぐ体に入る。
  9. 接続端子はミニジャック2つのみ。どちらもアナログシンクとオーディオを同時に扱えるので複数台のデイジーチェーンが可能だが、MIDI も CV/ゲートもない。本当にポケットオペレーターをポケットに入れたいなら専用ケースを買うべきで、理想を言えば OP-1 デザインのやつが欲しくなる。
  10. PO-33 一台の値段で Uli(Behringer)謹製の逸品がほぼ買える。電池駆動のみという仕様は最悪だし、これが世代を超えて受け継がれる機材コレクションの一部になると期待してはいけない。ポケットオペレーター全般、特に33は、オタク向けの珍品おもちゃに見えるが実は強力な楽器。デザインの傑作なのか、それとも手っ取り早い金稼ぎなのか。今日のイントロ曲で既に PO-33 の音は聴いている(少しズルをした)。
  11. 結果は「まあ、興味深い」。この小さなギミック一台からアレンジ丸ごと絞り出せるのかを試す。
  12. ジャム後の感想。「うわ、今のブレイクめちゃくちゃクランチーだった」。パンチイン FX は素晴らしいし、ポリフォニーが限られている割にビートを一本立ち上げるのは簡単。ただしジャム中に手軽にバリエーションを作るための、サンプルスロットのミュート/ソロのやり方は見つけられなかった。次は大きめのセットアップに組み込んで、みずみずしいシンクの楽しみを味わう。
  13. PO-33 を他機材と同期させてのジャム。
  14. ここでも PO のロービットな古色は実によく効く。ただしパターンスロットの数が限られているので、この使い方でライブセット一本を通しきるのは無理。MIDI と CV/ゲートの入力がないのは本当に痛い。最後はこの楽しく劣化した、風変わりに壮大なマイクロハウスで、楽器としての音の資質に焦点を当てる。
  15. Verdict。PO-33 はコンピュータを使わない電子音楽制作の世界への、古典的なゲートウェイドラッグ。
  16. 汎用性の高いロービットサンプラーエンジンは階級以上のパンチを打つし、コンセプト全体が Teenage Engineering の商才の証明になっている。だが値札が控えめでも、ポケットオペレーターはすぐに金のかかる習慣になる。接続端子の乏しさ、おもちゃっぽい UI、脆弱な作りを考えると、ここにある PO-33 より EP-133 のような大人の楽器の方を選びたい。
  17. ちなみにポケットオペレーター全ラインナップぶんの値段があれば、オリジナルの Moog と歩行器と1ヶ月分のラーメンが買える。「見てくれてありがとう、また次回」。いいね・登録・Patreon・下のリンクのお願いで締め。「あなたの bad gear の導師が何を買えと命じてこようとも」。