この回の結論
MC-202 は「シーケンサーの設計にまだ標準が無かった時代」の産物で、ワークフローはいわゆる「通好みの味」だ。だが音源部は本物のヴィンテージの宝で、SH-101 の要となる音作り機能がいくつか欠けているのが惜しいものの、この狂った相場の中では今の価格には納得がいく — 特にきちんと改造された個体なら。少なくとも俺にとって、202 こそが元祖 Roland ブティックだ。上位機に並ぶ音質、大量のミニジャック、妙に歪な UI、そして当時のシンセ原理主義者たちに間違いなく馬鹿にされていたであろう佇まい。
何を喋っているか
- 世界で最も嫌われたオーディオ機器の番組へようこそ。Roland は間違いなく史上最高のシンセブランドだが、俺のような筋金入りの信者ですら、ミニジャック、やる気を削ぐ表示、殺意を覚えるメニュー潜り、そして「27時間ぶっ通しの酒盛りの果てに思いついたとしか思えない製品哲学」には手を焼く。
- 今日の題材は 1983年の MC-202。アナログシンセ+シーケンサーで、SH-101 と TB-303 の隠し子である可能性があるだけでなく、前述の悪しき伝統すべての根源でもあるらしい。一目見て思う — Roland Boutique はこういう見た目であるべきだった、と。
- ミリタリー調のカラーリングだけが SH-101 を思わせるわけではない。エンベロープ1基、LFO1基、サブオシレーター付きのオシレーター部、PWM、フィルターというモノシンセ構成も、1982年のあの名機とほぼ同じ (後で述べる数点の例外を除く)。
- 小さいゴム鍵盤はさておき、このエンジンを鳴らす主たる手段は内蔵シーケンサー。魂を粉砕する UI の悪夢である TB-303 よりも、さらに扱いにくいという評判の持ち主だ。303 がパターン主体なのに対し、202 のシーケンサーはリニア — 全部を一気に打ち込むしかなく、演奏中にパターンを切り替えることもできない。
- 入力確定のあの気持ちいい確認音を味わえ。Pitch モードで音符を並べ、ご想像どおり Step モードでステップ長を決め、Gate モードでゲート長を個別に設定する。
- 音量とフィルターにかかるアクセント、ポルタメントは専用ボタン持ち。Cycle を押せば自作の「作曲というより仕掛け」をループできる。第2のシーケンストラックで CV とゲートによる外部機材の制御も可能。
- ただし MC-202 に不揮発メモリは無い。電源を切った瞬間、大事な楽想は全部消える — 先にテープインターフェースでバックアップを取っていない限りは。ユーロラック勢とヴィンテージ愛好家は外部キーボード用の入力端子に目を留めるだろうが、罠がある。制御データが機械の先史時代の CPU を通るため、その謎めいたクオンタイズがノートのタイミングを本気で台無しにする。
- 内蔵シーケンサーを使わずにポルタメントを鳴らす方法も見つからなかった。つまり壮大なソロは弾けない。それ以外では、202 はあらゆるピコピコ、ブヨブヨしたベース、ドラム、アシッドなシンセラインに対応する準備ができた状態で生まれてきている。
- ただし LFO の波形選択と、もっと重要なノイズ源が無い — 史上最もグルーヴィーな鍵盤 (SH-101) にはあったやつだ。この根本的な制約と MIDI の不在を思えば、何世代ものシンセ馬鹿がこの楽器をもう少し扱いやすくしようと試みてきたのも当然だ。
- 要所の結線に手が届きやすいので改造も豊富。外部 CV/ゲート使用時に CPU をバイパスするものから、高解像度ディスプレイを追加しワークフロー自体を根本から変える (おそらく良い方向に) 強力な Tubbutec のキットまで。MC-202 の相場は SH-101 と同程度。202 を貸してくれた Feedback Underground Studios の Philli に感謝。
- 使いやすい古典的シンセエンジンが、難攻不落に見える謎 UI と古代の接続規格の壁の向こうに封印されている。この小さな MC は手間をかける価値があるのか。今日のイントロで既に 202 は鳴っている。驚いたことにメインのシンセラインは CV/ゲートで完璧に鳴ったが、他のトラックはそうもいかず、少しズルをした。
- 恒例「自分が何をやっているのか全く分からない」コーナーの音出し。
- 中途半端にインスパイアされたメロディと、シーケンサーによる精神的苦痛はさておき、ベース音はなかなか肉厚。エンジンの血縁関係のおかげで即座に「実家のような安心感」がある。一方でコンポーザー部の打ち込みは本気で試練。もっと面白いシンセラインと、高音域での生き生きした音が作れるか試す。
- こっちのほうがずっといい。コンポーザーは直感的とは程遠いが、「偶然の産物しか生まれないワークフロー」を受け入れられるなら、案外すぐにコツはつかめる。
- ずっと後の子孫にあたる機種の、もっと素直なパターン系シーケンサーと組ませると相性がいい。具体的な音楽的アイデアを打ち込みたいなら、基礎的な音楽理論の知識と紙が役に立つ。次はその真逆 — 自分と同い年の機械の上でうっかり打ち込んでしまったシンセラインが、自分の作曲能力を超えて複雑だった場合のアルペジオとベースのショーケース。
- Verdict。MC-202 はシーケンサーの設計に標準がまだ無かった時代の機械で、ワークフローは「通好みの味」とでも呼んでおこう。
- だが音源部は本物のヴィンテージの宝。SH-101 の要となる音作り機能が欠けているのは残念だが、この狂った相場では今の値付けにも納得がいく — 特に丁寧に改造された個体なら。少なくとも俺にとって 202 こそ元祖 Roland ブティックだ。上位機種に並ぶ音質、大量のミニジャック、妙に歪な UI、そして当時のシンセ原理主義者たちにきっと嘲笑されていたであろうこと。
- 締めの挨拶。高評価・登録・Patreon、そして「次はどんな機材を見たい/聴きたいか」をコメントで、といういつもの呼びかけ。