この回の結論
シンセを解剖して食っている人間として、音作りや音楽制作を素朴に楽しむのが難しくなることがよくある。Lyra-8 はその解毒剤として完璧だ。いつもの手口はここでは通用せず、結果ありきの戦略はまるで報われない。良い音にする唯一の方法は手放すこと。作者の意図どおりに使えたかは怪しいが、間違いなくシンセの儀式の中心にはいた — 毎週金曜18時 (中欧時間) にこのチャンネルで執り行われる儀式の。
何を喋っているか
- 世界一嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。察しのとおり自分は多少コントロールフリークで、ベースはタイトでなければならず、ドラムブレイクは他と違う効き方をしなければならず、セットアップは全部「オーストリア人サイボーグ」の位置に同期している。
- 今日は SOMA Lyra-8。この「オルガニズミック・シンセサイザー」であり儀式の道具であり産業文明のアイコンは、演奏する楽器には見えない — こっちが演奏される。オレンジ版とピンク版のどっちが2030年に高値をつけるかは一見して分からない。鍵盤はノーミー向けなので、この軍用グレード機の8つのアナログ音声は鍵盤を持たない。
- 操作子はサイエントロジーの測定器 (E メーター) のツマミにしか見えない。各トーンジェネレーターはそれぞれ違うレンジをカバーし、mellow (まろやか) と harsh (荒い) の間で調整できる。
- ピッチはクオンタイズされていない。チューニングの作業自体は気持ちいい。あとは古めかしいエンベロープのアサインくらい — 個別ボイスのツールはそれで全部。このシンセの本体は謎めいた FM (周波数変調) のマトリクスにある。オシレーターのペアは隣り合ったもの同士で変調し合える。
- 驚くほど複雑な LFO があり、これは後ほど見る。Lyra の信号は FX 込みで全部メイン出力へ。外部 CV ソースも受け付ける。このノイズミュージック DJ セットの「2デッキ」にはそれぞれマスターチューニングのツマミが付いている。
- サステイン用の hold ノブがあり、エンベロープスイッチとボイスペアの変調量との絡み合いは言葉で説明しづらい。hold gate 入力で外部信号から hold を制御できる。ただし単一ボイスごとのサステインは有料アップグレードが必要かもしれない。
- より複雑な FM 構造を導入すれば、変調の相互依存をさらに一段深くできる。各ボイスには調整不可の専用ビブラート・ジェネレーターが付く。
- 例のハイパー LFO は2基の矩形オシレーターを持ち、ソフトシンク可能、加算か乗算のどちらかを選べる — 複雑なパターンが作れる。この緻密な変調の網に、同じくらい複雑なモジュレーション・ディレイが添えられる。同期不可のディレイライン2本構成。
- 変調ソースは自己変調、LFO を square にしたときの end 機能の出力、そしてここでしか使えない謎めいた三角波の一種から選べる。これらを外部 CV に差し替えるのも自由。フィードバック・パラメーターの自己発振がかなり過激になるのは言うまでもない。
- ディストーション・エフェクトは大好き。ミックスノブ付きで、この楽器のマスタリング段と考えていい。バランス・モノ出力のおかげで、意図的にノイジーな回路の外から余計なノイズが乗らずに済む。サラウンドや追加処理を考えると複数出力が欲しかった。
- 上記のインターフェース類があっても、この楽器はチームプレイヤーとは言い難い。自分の知るどのモジュラー規格の CV 作法にも従わない。耳で基本的な音程感は出せるが、調律された音階は Lyra の作者の関心事ではなかった。この重くデカい美しいローテクの塊の値段は、Akai MPC One+ や Roland SP-404MK2 Stones Throw エディションと同じくらい。無料のソフトウェア・エミュレーションを試してみるのも手。
- Lyra-8 はアナログ・シンセシスの清々しく異質な解釈だ。サウンドデザインと儀式的な音楽制作の新世界を開くのか、それとも王様は裸なのか。イントロ曲で既にこのオルガニズミック・シンセは鳴っている — 劇場時代なら15,000の案件になっていた仕事だ。20分のジャムから Bad Gear に値する30秒を掘り出せるか試す。
- どれだけランダムに見えても、Lyra を弾くのは簡単ではない。
- 背後にあるシンセシスの原理を知っていてもさほど助けにならない。この奇妙な構造と哲学に身を委ねるしかない。LFO と FX セクションは特筆もの。こういうフリーフォームのジャムは楽しいが、そろそろ自分のシンセオタク的 OCD を満たしたい — Lyra を「普通のシンセ兼 FX の主役」として使ってみる。
- Lyra をそこそこ普通のシンセに仕立てることは可能ではある。だが明らかにそういう作りではない。
- 変調の関係が複雑すぎて音色も音程も絶えず変わり、長時間安定させておくのが難しい。いつもの制作アプローチと、この楽器の予測不能さの間のスイートスポットを探す — 「怪物的な狂気のモンタージュ」で。劇伴、サブウーファーのベンチマーク、そして総じて「落ち着かない (uneasy) リスニング」向けの音。
- Verdict へ。シンセを解剖して生計を立てている身としては、音作りや音楽制作の過程を素朴に楽しむのが難しくなることが多い。
- Lyra-8 はその完璧な解毒剤に思える。いつもの手口は通用せず、結果ありきの戦略はまるで報われず、良い音にする唯一の方法は手放すこと。作者の意図どおりに使ったかは怪しいが、毎週金曜18時 (中欧時間) の「シンセの儀式」の中心には確実にいた。
- 見てくれてありがとう、また次回。高評価・登録・パトロン・コメントもよろしく。次にどんな機材を見たいか教えてくれ。