Play Plus

Bad Gear - Play Plus

この回の結論

初代 Play のアーリーアダプターだったら自分もガッカリしただろう、と正面から認める。大金を払うか中古価値の目減りを飲むかの二択は飲み込みにくい。ただし騒動を全部方程式から外せば、Play+ は強力で革新的なグルーヴボックスであり、tracker 兄弟ほど変態的ではないものの、万人向けとは言えない癖は山ほど積んでいる。それでも「自分の Digitakt にステレオサンプリングとシンセが数基載るなら数百ドル払う」と言ってしまい、「これでシンセレビュアーの職を失わないことを祈る」と締める。

何を喋っているか

  1. 「世界一嫌われたオーディオ機材の番組、Bad Gear へようこそ」。音楽テクノロジーは残酷で薄っぺらい金の溝、泥棒と狂人が自由に走り回り善人が犬のように死ぬ長いプラスチックの廊下だ、という恒例の口上。「そしてネガティブな面もある」
  2. 今日は Polyend Play+。リリース時の異様な騒動を考えると意外かもしれないが、これでも2023年冬の機材炎上ランキングでは2位でしかない。本機は Polyend から長期貸出で送られてきたものだが、他の機材と同じように容赦なく焼く、と先に宣言。
  3. 筐体は初代 Play とほぼ同一。中身はチップが強化され、ステレオを扱えるようになった8トラックのサンプラー/シーケンサーに、4種のエンジンから選べるシンセスロットが3つ追加されている。
  4. 本体を掘る前に、まず例の騒動の話。初代 Play を持っている人には心臓に悪い内容。2022年春に出た初代は高評価で、tracker の変態的な良さを、あの難解なワークフローを覚えずに味わえるうえ、要望の多かったハンズオンな操作子も付いていた。
  5. ただし初代にはモノラルのサンプル再生、本物のシンセシスがない、といった制限があった。おそらくチップ市場の供給問題が原因。そしてわずか1年半後、Polyend は「本当はこれを最初に出したかったんだろうな」という機体を、その欠点を潰しマルチトラック USB オーディオまで足して出してきた。
  6. しかもこれはファームウェア更新ではない。アーリーアダプターは愛機を自腹でポーランドに送り、さらに $399 を払う。払わなければ無印の値下げのせいで中古価値が落ちるのを見ているしかなく、アップグレード済み機体の総コストは1,000ドル超。Benn Jordan が「自分はこれで構わない」と公言して炎上し、機材レビュアー廃業を宣言する事態に。血圧の話はさておき、この動画は一応グルーヴボックスの話である。
  7. ワークフローの基本は microSD からサンプルを読み込む方式。ただし RAM は極小で、ステレオサンプル約3分ぶんしか入らない。「まあどうせクリエイティブなシーケンスが全てだしな」。ステップごとに別のサンプルと音色パラメータを割り当てられ、リアルタイムではない DJ 風のレゾナントフィルターも載る。
  8. 原始的な AD エンベロープ、オーバードライブ、ビットクラッシュ、リバーブ、ディレイ、そして音量・パン・ピッチ・サンプルスタートの定番。サンプル内のループポイントを設定する方法は見つけられなかった。8トラックの最大パターン長は64ステップで、その制限を回避するためのシーケンサー小技が大量に積まれている。まずはマイクロタイミング。
  9. ラチェット。チャンスは単純な確率を超えた作り込みで、ランダマイズはサンプル選択やアクティブ状態といった基本項目にも割り当てられ、Duke まで呼び出せる。パターン長はトラックごとに独立して変えられるので、Play はポリメーターの化け物になる。
  10. 特に変則的なプレイモードを掘っているときに効く。これらの機能は8本のモノフォニック MIDI トラックにもコード機能付きでミラーされていて、外部ハードや DAW のソフト音源、そして内蔵シンセを鳴らせる。
  11. 内蔵シンセの話。Play+ セッション内の全シンセ合計で最大同時発音数は8。エンジンは VA ポリ系が2種と2オペ FM という構成(字幕が潰れており正確な名称は不明)。フロントパネルにシンセパラメータのラベルは一切ない。物理コントロールはマクロだけ。
  12. 自分で音作りをしたいならRoland も顔負けのメニューダイブが必要。残念。ノブはスムースだが、ダブルタップのスイッチ機構のせいでジャムを何度か台無しにした。細かい編集にはステップ付きのメインエンコーダーのほうが好み。エフェクトとは別にマスターの音破壊系も載っているが、これは tracker で気に入らなかったやつとほぼ同じ。
  13. Play は「演奏される」ために作られているのに、ノートのリアルタイム録音がうまく機能せず苦戦した。パフォーマンスモード自体は素晴らしいが、自分のジャムのスタイルには合わなかった。パターンのミュート/ソロとバリエーションの考え方は良い。
  14. 内蔵キーボードとピアノロールには慣れが要る。ステムのエクスポート機能は超便利。ビルドクオリティは上等で全体のデザインも好きだが、ミニマルすぎる端子まわりは万人受けしないだろう。Play+ のリリースは筋金入りの Polyend ファンをかなりの数怒らせた。この騒動に見合う製品なのか。
  15. 新しいシンセの音は冒頭のイントロ曲で既に聴いているはず。仕事はきっちりこなす。ただしファクトリーライブラリにダッドロック系のドラムマシンのサンプルは見つけられなかった。ではプレイしてみよう。
  16. 最初の混乱期を抜ければワークフローはすぐ自明になり、多少の癖と時々のバグを別にすれば、Play での音楽制作は快適。シンセは気持ちいいくらい汚い。ただしサンプルモードと MIDI モードの切り替えは、
  17. ライブ演奏の最中には必ずしも実用的ではない。というわけで実際の DAWless セットアップを組んで回避してみる。
  18. 結果はまちまち。定番のクラシックなサンプルは見当たらなかったが、ファクトリーサンプルは量も質も一級品。ポリフォニックの MIDI 録音は慣れが必要。ではストックライブラリでのジャムを混ぜ、DAW の艶を足して、「夜の子らよ、なんという音楽を奏でることか」。ローファイと
  19. ダウンビート、ベルリン・スクール、擬似オーケストラのバカ騒ぎを一曲に詰め込んだ Bad Gear フィナーレへ。
  20. Verdict。まずこれだけは先に言う。初代 Play のアーリーアダプターだったら自分もガッカリしていた。大金を払うか、中古価値の目減りを受け入れるかの二択は飲み込みにくい。だがそれを全部方程式から外せば、Play+ は強力で革新的なグルーヴボックスだ。tracker 兄弟ほど変態的ではないが、
  21. 万人向けとは到底言えない癖は山ほど積んでいる。そのうえで「自分の Digitakt にステレオサンプリングとシンセが数基載るなら、数百ドル払っても構わない」「これを言ったせいでシンセレビュアーの職を終わらせずに済むことを祈る」と締めて、いつもの「いいね・登録・パトロン・見たい機材のコメントを」。