この回の結論
multi/poly はモダンなプラグインみたいな音がする。実際にプラグインだからだ。奥が深く多才で、学習コストはそれなりにあるものの、より特化した兄弟機たちよりは威圧感が少ない。ただし UI は、役には立つが複雑な内部構造を把握し続けるには不向きで、この安っぽい見た目と質感を考えると将来の SE 版を待つ手もある。KORG のようなメーカーは Marvel を思い出させる — 過去の栄光に寄りかかり、本当の革新は小さい会社任せ。それでも「本質的に壊れてない・誰も頼んでない理由のある製品でもない・会議室で生まれた二番煎じのスロップでもない」何かが出た瞬間、我々真のファンは喜んで割高なチケットを買う。
何を喋っているか
- 世界一嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。歴史的文脈を取り払って眺めると、今は「大企業どもがスイス/ドイツ/中国の革新者のアイデアを盗んで、それを素人臭くデジタルで模倣して手っ取り早く稼ごうとしている」ように見えるかもしれない、という前振り。
- 今日の題材は KORG multi/poly。この virtual analog シンセ兼「変装した Raspberry Pi」は、楽にしてくれと丁重に頼んでくるような顔をしている。見た目は AI 生成画像を CAD レンダリングに変換する処理が失敗したみたいだし、機能はマーケティングの惹句が処理しきれない量が載っている。
- 一見すると multi/poly は Kaoss、King KORG、wavestate、opsix、electribe を全部かき集めて、01/W をひとつまみ加えたような代物。そして北大西洋のゴミベルトよりプラスチックが多い。
- ポリフォニー数とマルチティンバー性は90年代末のロムプラーに恥じないレベル。パラメータを pong の物理演算で動かせる。鍵盤版のアフタータッチ無しキーベッドについて散々聞かされた身としては、KORG の小さいシンセモジュール版で逃げるのが正解かもしれない。
- 先祖の栄光の痕跡は、伝統的だがモーフ可能な波形を持つクラシック系オシレータに残っている。minilogue 的なシャークフィン波形も入っている。ただしウェーブテーブル・オシレータには、より特化した modwave のデュアルモードが無い。自作ウェーブテーブルの読み込みは可能。
- ウェーブテーブルには各種の破壊系加工がかけられる。そして波形整形(ウェーブシェイピング)オシレータは、お決まりのウェストコースト的な放屁音の遥か先まで行く。
- 好きなオシレータを4基選び、シンクと X モードの対象にできる。ノイズと専用のリングモード音源もミックス可能。全部がデュアルフィルタ・セクションに送られ、メーカー曰くフィルタは書き直されたとのこと。ステレオ動作も可。
- お約束のモデル群に加えて、SEM 系の新しいアルゴリズムなどのクラシックも用意されている。アナログという竜を追いかける話でいえば、KORG は自社名機の VCA エミュレーションまで入れてきた。そしてドライブは11まで上がる。ループ可能な4基のエンベロープは見た目より深く、LFO はまず枯渇しない。
- 兄弟機を触ったことがあるなら、メニュー潜り式だが強力なモッドマトリクスにも馴染めるはず。強化されたモジュレーション・プロセッサのおかげでユーロラック級の狂気も出せる。同じく過剰装備な FX セクションも小改修され、ヴィンテージな歪みや Leslie のワブルを仕込める。
- 21世紀の便利機能ばかりの中で忘れちゃいけないのが layer rotate。1982年の Mono/Poly へのオマージュで、4つのレイヤーを順に回していける。グローバル・アルペジエータと組み合わせると、音作りが簡単になりすぎる。
- 実績あるマクロノブは、複雑なマルチティンバー音色のコントロールに便利。特にモッドホイールや Kaoss パッドのルーティング、モーションシーケンサーに録っておいたツマミ操作と組み合わせると効く。
- 面倒ならランダマイズを押して終わりにしてもいい。ズルの話ついでに、公式エディタソフトも落とせるし、いっそ数百ドル浮かせてプラグイン版を選ぶ手もある。やや期待外れな楽器を連発した後、KORG はまたもやステロイド漬けの virtual analog シンセを出してきた。偉大な遺産に見合うのか?
- multi/poly の音は今回のイントロ曲で既に聴いている。普通に使える。まずは軽くプリセットサーフィンからリラックスして始める。
- 嬉しい驚き。モダンなデジタルの艶がクラシックな音色によく合う。ポリフォニーは有り余っていて、音は多彩でいじりやすい。一方でメニューシステムはやや古臭いが、同系統の KORG シンセに慣れていれば致命的ではない。次は音作りの可能性を深掘りする。
- 音作りデモ(演奏中心)。
- drumlogue よりドラムマシンとして優秀な KORG シンセ、またしても登場。さらに multi/poly はシネマティックな音色が得意で、ウェーブフォールディング・オシレータはフィルタのカットオフを一度もいじりたくない時の良い代替になる。刷新された FX セクションは、ジャムやライブで効いてくる磨かれた音を出せる。次は実際のミックスでの働きを確認する — 「まあまあ単調で、間に合わせ以上の音楽づくりの記念品が詰まったマルチバース」的なやつで。
- ミックスに載せたデモ演奏。
- Verdict。multi/poly はモダンなプラグインみたいな音がする、なぜなら実際プラグインだから。奥深く多才で、学習曲線はあるが特化型の兄弟機より取っつきやすい。ただし UI は複雑な内部構造を追い続けるには理想的でなく、この安っぽい見た目と手触りを思うと将来の SE 版待ちもアリ。KORG のようなメーカーは Marvel フランチャイズを思い出させる。
- 過去の栄光に寄りかかり、本物の革新は小さい会社に任せきり。それでも「本質的に機能不全でない・誰も頼んでない理由がある製品でもない・会議室で捻り出された二番煎じのスロップでもない」ものを出した途端、我々真のファンは喜んで割高なチケットを買う。視聴に感謝、また次回。
- 締めの定型。高評価・チャンネル登録・patron 支援、そして下のリンクの利用をどうぞ — あなたの機材欲(gear GAS)が何を買えと命じてこようとも、チャンネルの支えにはなる。