この回の結論
最初に触った電子楽器が ReBirth だった人間なので、Box の中での音楽制作は不慣れではない。それでも徐々にハードへ移ったのは、皆が好きなのと同じ理由 — 迷いのないインターフェース、手で触れる制作体験、そして何より良い音。その最後の一点について言えば、Sylenth1 は期待を裏切らない。フィルタは良く、オシレータには重みがあり、UI は今何が起きているか把握しやすい。だがそのシンプルさこそ最大の弱点でもあり、同じく旧世代の Massive や Serum の方が音作りの選択肢という点ではコスパが上。ハード派だろうがプラグイン愛好家だろうが、この骨董ソフトについて一つ認めざるを得ないことがある — 同時代のハードシンセの多くより、遥かに上手く歳を取った。
何を喋っているか
- 世界一嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。1980年以降生まれなら、どれだけ筋金入りのハードシンセ・スノッブを気取っていても、ソフト音源に手を出した暗い過去があるはずだ、と切り出す。
- 今回は Sylenth1。このオランダ産プラグインは、DX7 や M1 や Casio VL1 のようなハードの名機と同じ意味で、実際の音楽制作に深い様式的影響を与えた最初期の VST インストゥルメントの一つ。番組に登場する理由は二つ — 当時ですら同価格帯のプラグインが Sylenth1 の遥か上を行く機能を積んでいたこと、そしてもう一つは当時のエレクトロニックミュージックを思い出せば分かる、と。
- 一見すると Sylenth1 は必要な箱に全部チェックが入っている。ただ本当のチェックではないだけ。ほぼ独立した2パート、それぞれ2基のオシレータで VA の定番波形は揃うが、ウェーブテーブルもサンプルも、PWM すら無い。
- フィルタの形も基本のみ。モジュレータは ADSR エンベロープ2基と LFO 2基という慎ましい編成、仮想パッチポイントが4つ。エフェクトはかなり旧式のセクションだが、コンプレッサーが意外なほどパンチが効いている。
- 例のわざとらしい甘さ(アーティフィシャル・スウィートネス)と、ステップシーケンサー的なアルペジエータ。以上、それで大体全部。当然ながらこのエンジンは擬似アナログ音色、ポストモダンなトランス、そして 2010年式 EDM スタイルの犯罪行為には最高に効く。
- 各種の効果音とノイズ、ブレイクダウンとドロップ用の素材も出る。ただし LennarDigital はシンセ構造に良い工夫と機能をいくつか入れており、それが制作の主力機に押し上げた。LFO はかなり速く回る。
- シンプルだが機能的なフィルタのルーティングとマスターコントロールを評価。古式ゆかしいオシレータ設計は究極の太さのために最適化されていて、オシレータあたり最大8ボイスのユニゾンをデチューンしてステレオに広げられる。
- ハードシンセに慣れた人間には天文学的に見えるポリフォニー数まで積み上がる。ただし全体のポリフォニーは16ボイスに制限。本物のソフト骨董品なので歴史も豊か — UI は SynthEdit 風のオリジナルスキンに戻せる、ドット絵の栄光そのままで。
- Sylenth のレディー・ガガ的な音は Swedish House Mafia を笑わせ、山羊の主 deadmau5 本人は Twitter でこのソフトを海賊版で使っていたと認めた。Sylenth1 のバックアップコピーを使うのが、あまりに当たり前になりすぎて完全にミーム化した。DJ Carnage は海賊版らしきものを使っているところを現行犯で押さえられた。
- ここまで人気が出れば当然、この楽器の初期プリセットは数え切れないヒット曲で使われた。そのうちいくつかは、あまり上手く歳を取らなかった。
- ハードのインターフェース感触が欲しければ、専用の Sylenth DIY ビルドで全振りする手もある。同時代のソフト音源の多くが今や見捨てられた中、Sylenth1 は今も現役で、もっと新しくて機能満載の競合とほぼ同じ価格で売られている。ヴィンテージのハードは良質なワインのように熟成して値も保っているが、同じ法則がソフトにも当てはまるのか、それとも単に時代遅れのプラグインなのか。
- 今日のイントロ曲にはすでに Sylenth1 が入っていて、これまでで一番好きなバージョンかもしれない、と。ここで EDM の大罪を犯す時間 — 一番最初のプリセットをそのまま使って、逃げ切れるか試す。追加処理なし、Sylenth1 だけのジャム。
- 「あれは本当に驚いた」。2010年 EDM 美学込みで、Sylenth1 は過剰処理っぽく聞こえないまま完成品レベルの音を吐き出す。手持ちの慎ましい 2021年 Mac mini は汗一つかかなかった。
- フィルタは滅法いじりがいがある。次は、他のシンセだらけのセットアップの中に「もう一台のシンセ」として放り込んだ時にどう振る舞うかを見る。
- Sylenth のパッチのプロ然とした光沢は好きだが、慎ましいハイブリッド機材のあの毛羽立った質感は、完全デジタルなワークフローだと恋しくなる。さらに深刻な同期の問題にも遭遇した — プラグインのせいではないが頭には入れておけ、と。Sylenth1 はメインストリームのチャートと巨大なダンスフロアの音と結びついているので、次はこの楽器のダークサイドを掘る。
- 「猛烈にフィルタをかけた、楽しい産業廃棄物デストリップ」でダークサイド探索。
- Verdict。最初の電子楽器が ReBirth だった身としてボックス内制作は不慣れではないが、徐々にハードへ移った理由は皆と同じ — 整理されたインターフェース、手触りのある制作体験、そして良い音。最後の点について Sylenth1 は期待を裏切らない。
- 良いフィルタ、重みのあるオシレータ、状況を把握しやすい UI。だがそのシンプルさが同時に最大の弱点で、Massive や Serum の方が音作りの選択肢ではコスパが上。ハード派かプラグイン派かに関係なく、この古代のソフトに認めるべき点が一つ — 同時代のハードシンセの多くより遥かに上手く歳を取った。
- いつもの締め。高評価・登録・パトロン・コメントで次に見たい機材を、と。そして月例のボコーダー・シャウトアウト。先週の MS2000 と microKORG は同じシンセエンジンのはずなので、完全に非科学的な二台のボコーダー比較をやる。
- tier 4 のパトロン名を microKORG のボコーダーで読み上げる。
- tier 5 と 6 は MS2000 のボコーダーで。「支援ありがとう、また来月」。