Kawai K-1 II

Bad Gear - Kawai K-1 II

この回の結論

ガタの来た古いデジタルシンセは山ほどあって、今でも価値があるのはどれかを見分けるのは難しい。Kawai K1 は、どの形態のものであれ、使い方次第で「盛りを過ぎた古代のデジタル・チーズ製造機」にも「暗く邪悪で謎めいた音の尽きない泉」にもなる。ユニークで壮大で、そして現代のポップスにはまるで向かない音が欲しいなら、でかくて高いモジュラーシステムを買うか、それとも——いや、モジュラーを買え。俺は鍵盤を修理に出す。

何を喋っているか

  1. 世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組 Bad Gear へようこそ。「遅れてでもやらないよりマシ」ということで、この番組に初登場となる Kawai 製品の話をする。
  2. K1 II デジタルシンセサイザー。1988年のオリジナル K1 が出たのは、誰もが PCM 波形のデジタルシンセを欲しがっていた時代。Roland の D50 が高価だが揺るぎない王者で、D10 のような廉価版はまだ出ていなかった。その隙間を埋めたのが K1 だ。
  3. KORG M1 や D50 の明るくてチャート向きな音が主流を支配する中、K1 はずっと日陰者だった。音色の幅は安っぽい音楽制作の定番から、チェーンスモーカーのシス卿にふさわしいサウンドデザインまで。一見すると K1 II は「ジョイスティックで」全項目にチェックが入る出来だ (ticking→joysticking の駄洒落)。
  4. あの過剰な80年代がなぜ史上最もスマートな見た目のシンセを産んだのか不思議になる、ミニマルな UI。アフタータッチ付きのまともな鍵盤 — もちろんこの個体では完璧なコンディションだ。…まあ安かったからいい。小さいが十分な表示器も付く。中身はまたしてもフィルター無しのロービットな代物。
  5. 204 の合成波形と 52 の 8bit PCM 波形から最大4つを選び、それが「シングル」を構成する。ジョイスティックでブレンド・ミックスできる。数週間前に取り上げた Yamaha SY22 とかなり似た仕組み。
  6. ただしジョイスティックは Yamaha の方が楽しい。音の加工はディレイ段付きのアンプエンベロープ、オートベンドという名の簡易ピッチエンベロープ、トランスポーズ、固定ピッチ、ビブラートに限られる。
  7. それとリングモジュレーション。豊富なキーボードスケーリングとベロシティ設定は、16ボイスという限られたポリフォニーを考えれば大歓迎。8パートのマルチティンバー+ドラム専用9チャンネルというのは少々皮肉な構成だが、スプリット・レイヤー・ベロシティスイッチなど良い機能もある。
  8. ドラムチャンネルはシングルモードでも使え、これは初代には無い。ドラムサンプルの選定はこの手の機材には珍しく趣味が良く、ピッチ変更と好きなマッピングができる。80年代ロンプラーのプリセットは皆好きだろうが、K1 のそれも期待を裏切らない。息づかいたっぷりのコーラス。
  9. ゲーム音楽みたいなストリングス、シンセエンジンのショーケース的な音、しっかりしたオルガン。
  10. そしてまたしてもシタール。調べた限り、キーボード版の K1 II だけがマルチエフェクトを積んでおり、これは正直かなり気に入っている。バージョンの話をすると、初代にはキーボード・デスクトップ・ラック版があり、この K1 II にもラック版がある。驚いたことにマニュアルが実際に役に立つ。
  11. 操作はビデオデッキ並みに簡単で、そして楽しさも同じくらい。価格はかなり上がったが、中欧のローカルな売買掲示板ならまだ許せる範囲。Reverb は論外。Niels Schneider の優れた K1 の VST プラグインもチェックすること。Kawai K1 シリーズは80年代デジタルシンセの伝説たちの安価な代替として出た。
  12. 当時それは務まったのか、そして今買う理由はあるのか。K1 II の音は今回のイントロ曲で既に聴いている通り、良くも悪くもかなり独特だ。まずは Digitakt と組んだ1本目のジャムで、ポリフォニーを限界まで使い切る。
  13. 「これはあまり好きになれない」。生の音のいくつかは他の楽器との混ぜ物なら機能するかもしれない。
  14. だが K1 の無加工の音だけでアレンジ全体を組み立てるのはかなり厳しかった。もう一台シンセとエフェクトペダルを数個足して、この穴がどこまで深いか見てみる。
  15. 「LFO から電話だ。プリセット返せってさ」 (バンド LFO のネタ)。Moog フィルターの歪みと少しのディレイで、K1 は途端に輝きだす。ポリフォニーの問題には何度かぶつかった。
  16. だが Roland TB-3 との相性はかなり良い。暗くザラついたロービットな音のキャラクターは、単純で本来なら平凡なモチーフにドラマを足すのに最適。「90年代の Coolio が80年代のテクノオタクと一緒に70年代のソ連製タイムマシンに乗り込んで、ハイパーポップ・トラップの未来に向けてゼロ年代クランクコアを作る」みたいな用途に理想的だ。
  17. Verdict (結論)。ガタの来た古いデジタルシンセに事欠くことはなく、
  18. どれが今でも本当に価値があってどれがそうでないかを見極めるのは難しい。用途次第で Kawai K1 は、盛りを過ぎた古代のデジタル・チーズ製造機にも、暗く邪悪で謎めいたものたちのための尽きせぬ音源にもなる。ユニークで壮大で、そして現代のポップスにはまるで向かない音が欲しいなら、でかくて高いモジュラーシステムを買うか、
  19. いや、モジュラーを買え。俺は鍵盤を修理に出す。見てくれてありがとう、また次回。高評価・登録・パトロン支援、それとこの番組で見たい・聴きたい機材があればコメントで。