この回の結論
Arturia MiniBrute は分裂症気味の楽器だ。1機能1ノブ、スライダーがエンベロープとオシレーターミックスを目で見せてくれる、シンセとして限界まで自己説明的な機械で、初心者がゼロから音を作る原理を学ぶのにこれ以上の教材はまずない。まさに「シンセの形をしたチュートリアル」。一方で MiniBrute の音色から逃げたパッチを作るのは難しく、Arturia のシンセ全般が言われる「明るすぎ・攻撃的・ちょっと薄い」批判はここにも当たる。まろやかでバランスの取れた音も出せるが、そこに辿り着くには時間と根気が要り、初心者には萎える要素になり得る。ロックギタリスト上がりのシンセ愛好家にはおそらく理想的な機種で、いいオーバードライブペダル1個の値段で中古が買え、出てくる倍音は歪んだエレキギターを思い出させる。そして君の手元には、MiniBrute が友達になりたがっている FX ペダルの山があるはずだ。
何を喋っているか
- Bad Gear へようこそ。今日は Arturia MiniBrute。ほぼ音楽が入らなかった DrumBrute の回のあと、「Arturia の機材をこの番組に出すとは何事だ」とコメント欄でずいぶん焼かれた、という自白から始まる。
- 誤解するな、Arturia は好きだ。革新的なアプローチも素晴らしい UI も、BeatStep Pro は間違いなく史上最高のステップシーケンサーの一つ、プラグインも良い。MicroFreak は Bad Gear の文脈の外でテストすべきかもしれない、むしろ Red Gear だな。ただし Arturia 印のアナログサウンドだけは昔から自分の琴線に触れなかった。
- それでいい、好みは人それぞれだ。バグパイプやバンジョーの音が全員好きなわけじゃないのと同じ。MiniBrute は Arturia がアナログシンセ界に初めて踏み込んだ機種で、当時みんな本気で盛り上がっていた。ノブとボタンだらけの新しくて機能満載の楽器はいつも人の首を振り向かせる。しかも開発の頭脳の一人が、発生学に強いフランスの分子細胞生物学者で超古い電子音楽オタクとくれば、箱の外の発想が出てくると期待していい。
- 一見して MiniBrute はチェックボックスを埋め尽くす暴走状態。巨大なオシレーター1基に super mega ultra ハイパーソウ、PWM、そして Metallizer —— Arturia が三角波を地獄に送って連れ戻す手口。使いやすい LFO セクション、ビブラート、名に恥じないアルペジエーター。この小ささでアフタータッチまで付き、Brute Factor は Minimoog のフィードバックループ技を自分流に解釈したもので、さらに凶暴でカオスな音が出る。
- エンベロープをフェーダーで操作するのは昔から大好きだ。後継機のようなパッチベイこそ無いが、CV/Gate の in/out はモジュラー好きに嬉しい。オーディオ入力もあり、鍵盤も文句なし。パネルの配置も良く、減算合成を人に教えるなら MiniBrute は理想的な出発点。初期ロットには問題があったが、自分の個体のビルド品質は十分以上。金属筐体が良く、ノブのぐらつきも許容範囲。
- 良くも悪くも Arturia は 70 年代の無名シンセ Synthacon の Steiner-Parker フィルター設計を選んだ。ハンダゴテから手を離せない連中には Hackabrute のページに内部情報が山ほどある。中古なら米ドル/ポンド/ユーロいずれの法定通貨でも 200 前後、オーストリアの地元の売買掲示板には最近もっと安いのが出ていた。これだけ機能が乗っているのに、このセクシーなフランス製モノシンセにネット上で敵意が向くのは驚きだ。
- イントロ曲でもう MiniBrute の音は聴いている。使える音を作り込むのにいつもより時間がかかった。ただの Moog クローンではないのがはっきり分かる。まずは BeatStep Pro と内蔵アルペジエーター、アフタータッチをフィルターにルーティングしたミニマルなジャムで、生で少し直接的すぎる出音をそのまま聴かせる。
- 演奏後、「骨みたいにカラカラに乾いていた」と評する。ただしこんな剥き出しの状況では大抵のシンセが助けを必要とする、と擁護してから、エフェクターを軽く踏ませてリズムの土台も心地よいものに差し替える。
- FX ペダルとリズムトラック付きの2本目のジャム。
- 「MiniBrute にこれほどの汎用性があるとは思わなかった」と驚く。Brute Factor が邪悪な音を出すのは周知だが、ディレイ・リバーブ・モジュレーションをかけるとクリーミーなリードやシンセラインが本当に映える。BeatStep Pro との CV 接続は完璧に機能し、モジュラーの部品なしでもモジュレーションの宇宙が開く。残るは純粋な汚さがどこまで出せるか —— 「本気のドイツ製テック IDM、全開のダンスフロア掃討機」で容赦なく攻める。
- ハードな IDM トラックの演奏。
- Verdict。MiniBrute は分裂症気味の楽器だ。一方では、1機能1ノブでスライダーがエンベロープとオシレーターミックスを目に見せてくれる、シンセとして限界まで自己説明的な機械。
- 減算合成の基本機能と少しの追加を備え、初心者がゼロから音を作る原理を学ぶならこれ以上のシンセはまずない。シンセの形をしたチュートリアルだ。他方で MiniBrute の音色から離れたパッチを作るのは難しく、Arturia のシンセ全般が「明るすぎ・攻撃的・少し薄い」と批判されがちなのはここでも当たる。まろやかでバランスの良い音も出せるが、辿り着くには時間と根気が要り、初心者には萎える要因になる。
- ロックギタリスト上がりのシンセ愛好家にはおそらく理想的な機種。いいオーバードライブペダル1個の値段で中古が買える。出てくる倍音は歪んだエレキギターを思わせるし、君の家には MiniBrute が友達になりたがっている FX ペダルの山があるはずだ。見てくれてありがとう、また次回。次に扱ってほしい機材はコメントで。