Roland S-1

Bad Gear - Roland S-1

この回の結論

個人的な意見だが、S-1 は1990年以降の Roland 製品で最も考え抜かれた一台だ。コンパクトな筐体ゆえの制約は多いしメニュー潜りは相当な苦行だが、音は良い。音源は隅々までいじれるし、強化されたオシレーターはほぼ Waldorf 的な音まで出る。初心者にも入りやすく、経験者にも深い。そして正直に言うと、S-1 をこの番組に呼び込んだアンチコメントに、この俺が珍しく本気でイラっとした稀なケースだ。もちろん完全に不条理な話だが、良識ある視聴者の皆さんが「好きなシンセを Bad Gear に出す」ためにこの新たな力を悪用するなんて考えもしないはずだ。……いや、するのか?

何を喋っているか

  1. 恒例のオープニング。世界一嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。ここに出る機材は苦労して席を勝ち取った連中だ。意味不明な難解機材、まともに使えないプリセットを満載したひどいチーズ工場、大物の名前にタダ乗りした恥知らずな金稼ぎ、Balenciaga みたいなデザイン、そしてノスタルジア商法。それでもまだ氷山の一角にすぎない。
  2. 今日の題材は AIRA Compact S-1。2023年製、工場から出たてホヤホヤで、「こいつどうやってこの番組の出演資格を満たすほどの炎上を短期間で集めたんだ」と疑いたくなるレベル。とはいえ一見すると条件は全部揃っている。
  3. Roland Boutique がまだデカすぎると思っていた人向けの、T-8 や J-6 でおなじみの頑丈なプラ筐体。定番のツマミ。そして「使って不快だった2オクターブ鍵盤」の中でも屈指の小ささ
  4. そしてこの楽器のメニュー構造という悪魔のダンジョンを攻略するためのメインエンコーダー。Roland は食物連鎖の上のほうのシンセには ZEN 系の技術を使っているが、S-1 はより本物っぽい音がすると評判の ACB ベース。Boutique の SH-01A とかなり近い。
  5. この4ボイスのポリ音源は、史上最高にカッコいい鍵盤 SH-101 がベース。アナログっぽいオシレーター音、PWM、そして2種類のノイズ。パルスはトライアングルに置き換えられ、スムーズとステップの2形態がある。
  6. より実験的な波形は、まんま「せんせいマグネットお絵かき」方式で描くだけで作れる。Multiply でシンクっぽい音も出せる。Chop は作った波形の一部を削り取る機能で、
  7. Comb と組み合わせれば派手な金属質を足せる。この「外見より中身が広いターディスみたいなオシレーター」が、自己発振もできる音楽的な VA フィルターを通る。オリジナル同様、モジュレーションは最小限。
  8. エンベロープはアンプ用の1基のみでオルガン風ゲートにも設定可、LFO も1基。D-Motion は名作 D-Beam の後継として十分すぎる存在で、「Bad Gear の最後のオチとして俺が思いつきそうな代物」。前衛的なダンスの動きがそのままフィルターいじりに変わる。
  9. テルミン級のピッチ大暴れ、その他モジュレーション実験もいける。リバーブ、ディレイ、Juno っぽいコーラスはどれも十分以上の品質。64ステップのポリシーケンサーも楽しかった。
  10. ラチェット、プロバビリティ、モーションレコーディング付き。アルペジエーターも小ネタ以上の使い出があるし、Riser 機能で次の EDM ドロップに向けて盛り上げられる。メニュー潜りの地獄を和らげるために、モータルコンバットの必殺フィニッシュ技みたいなショートカットがいくつも用意されている。
  11. 接続は全部ミニジャックか、ノイズを拾う USB-C ポート経由。内蔵充電池は交換不可なので経年でどうなるかは今後次第。200ドルという値段を考えれば、デジタル象形文字が並ぶ極小ディスプレイもまあ許せる。機能セットは充実していて、音質も上位の Roland シンセに引けを取らない。
  12. 「みんな、俺がこれを番組で扱えるようにわざとヘイトコメント書いただけなんじゃないか?」 今日のイントロで鳴っていたのもこいつだ。良い仕事をしている。ただ、この手の Roland エミュレーションはもう散々聴いた気がしてならない。伝統の Bad Gear ジャムでテストの時間だ。EDM 上等。
  13. 「愛する TB-3 があんなに嫉妬してるのは初めて見た」。使いやすいシーケンサー、主要なシンセパラメーターにすぐ手が届く配置、Roland クラシック由来のプロっぽい音源。
  14. 4ボイスのポリは大歓迎。限界まで押し上げて、そう遠くない親戚をジャムに追加してみる。
  15. いい感じ。ここではもっと Juno 寄りのエンジンのほうが好みだったかもしれないが、S-1 は十分渡り合える。SYSTEM-1 の Alienware みたいな色のツマミよりは目に優しいものの、S-1 のいじり心地は決して快適ではない。ほぼ完璧な80年代シンセ音がすぐ出るせいで、追加されたオシレーター機能の存在を忘れがちになる。
  16. というわけで、もっと現代的な音が作れるか試す。SF ハウス、ダウンテンポなトランス、90年代テクノフューチャリズムのベスト盤。文字どおりの意味でも比喩的な意味でも。ロボットダンスをやれ。
  17. Verdict。個人的には、S-1 は1990年以降で最も考え抜かれた Roland 楽器だ。コンパクトな形ゆえの制約はあるしメニュー潜りは相当な苦行だが、音質は素晴らしい。音源は全部いじれる。
  18. 強化されたオシレーターはほぼ Waldorf 的な音まで出す。初心者にも入りやすく、経験者にも深い。そして正直、S-1 をこの番組の出演資格に押し込んだヘイトコメントに、この俺のほうが本気でイラっとした稀なケースだ。完全に不条理な話だが、良識ある視聴者の皆さんは、この新たに得た力を「好きなシンセを Bad Gear に出す」ために悪用したりはしないはず。……いや、するのか?
  19. 視聴ありがとう、また次回。いつもの締め。高評価・登録・Patreon 支援、それから次に見たい/聴きたい機材をコメントで教えてくれ。