Donner B-1

Bad Gear - Donner B-1

この回の結論

TB-303 の系譜のモノシンセには二つの流派がある。究極の忠実さという聖杯を求めて英雄の旅に出るか、手持ちの機材で 303 的な「演奏の本質」を掴んで概念を昇華あるいは転覆させるか。Donner B-1 はそのどちらにも自分の得物にはならない。伝説のアナログ泡風呂の魔法の粉も無ければ、古典のベースラインに新しい角度を与える個性も無い。ただし、B-1 より使いやすい 303 系シーケンサーを自分は知らない。酸っぱい水に足を浸してみたいなら試す価値はある。Donner のシンセデビューは自分向けではなかったが、Uli Behringer が B-1 の存在を初めて聞かされた時の顔を見るためなら、あと 200 ドル払ってもいい。

何を喋っているか

  1. 「賢者は言った、誰にでも 303 は必要だと」。シンセメーカーはこの格言を真に受けすぎたらしい。今日は Donner B-1、Roland のお気に入りの商業的失敗作にインスパイアされた新品のアナログ・モノシンセ。ユーロラックにハマってなかった頃のパトリック・ベイトマンが使ってそうな見た目で、しかも作っているのは謎に包まれた会社。Roland の IRA 系の放射能じみた光にはもう慣れたが、この青い LED はまだ現役なのか。
  2. 一見して 303 の定番デザインの箱には全くチェックを入れていない。Alibaba 印の Bang & Olufsen ハイファイ。フロントパネルには 2 オクターブのベロシティ非対応ラバー鍵盤 — これが弾き心地は本当にいい。鍵盤の数字はシーケンサー操作用の Num Lock 兼用。パラメーターは「オスカー・ピーターソンお気に入りのベーシスト」でおなじみの一式、プラス数個。
  3. Donner はドイツ語で「雷」。ただし B-1 を作った会社の出自を特定するのは簡単ではない。Crunchbase では North Carolina、LinkedIn では中国。主に知られているのは Yellow Fall のような安価なエフェクトペダルで、これは自分のジャムに毎回出てくる Rowin のディレイと怪しいほど似ており、そのディレイ自体も別の EQ ペダルの基板がベースらしく、そのペダルはヨーロッパの某大手楽器店で買える Joyo 系ペダルと同じ工場で作られていると思われる。
  4. Donner の製品ラインナップは膨大で、自社 R&D 部門があると主張してはいるが、実態は中国の工場がその時々に安く吐き出しているものをリブランドしているだけと考えて差し支えない。マーケティングチームがあることだけは信じている。ただ、これと似たデザインのシンセを売っている他ブランドは知らない。
  5. 単一オシレーターのノコギリ波と矩形波が音の土台。酸っぱさの度合いは色々で、受動攻撃的なベースの一撃から、
  6. ぐにゅぐにゅしたリード、そして全開のアシッド・チャープまで。チャープといえばフィルターは伝統に則り、レゾナンスを上げると完全なる低音キラー
  7. Donner はディストーションとディレイも放り込んできた。シーケンサーは簡単で、Rec を押して 128 個のプリセットパターン (意外と使える) のどれかを消して、最大 16 ステップ入力するだけ。
  8. 即バンガー。ステップごとにゲートレングスを入力でき、最大設定はタイになる。303 的なアクセントも、
  9. あまりグルーヴィーではないスライドもある。ラチェット機能はありがたい。シーケンサー周りの機能は全部リアルタイムに演奏できる。アルペジエーターとホールドも良い追加だが、
  10. リアルタイムでのパターン録音、シーケンサーを走らせながらのプログラム、パターンのチェーン、アルペジオをパターンに変換 — このどれもやり方が見つからなかった。フロントの 4 つのミニジャックはモジュラー勢の目を引くかもしれないが、中身はただの Phones / Aux / Sync。Sync のフォーマットは Donner のソフトで変更でき、そのソフトがまた Behringer のアプリと怪しいほど似ている。
  11. B-1 は USB 給電はできないが、USB MIDI はクラスコンプライアント。モノ出力はまあまあ、そして 5 ピン MIDI 付き — やった。David Hilowitz は PolyBrute と比較するブラインドテスト動画をやっていた。価格はややこしく、彼のバイラル動画のサムネは 152 ドルと出ている。地域で価格は変わる。Donner から直販で買うこともできるが、レビューの評判を考えるとお勧めはしない。
  12. 自分の場合はうまくいった。クーポンコードは必ず使うこと。そして自分は、この美しい惑星でこれに実際に金を払った唯一の YouTuber かもしれない。Roland の 303 のクローンは山ほどあるし非常に安い。B-1 は競合に伍せるのか、そもそもアシッド・モノシンセがもう一台必要なのか。今日のイントロ曲で既に B-1 は鳴っている。レゾナンス低めの音は、
  13. オリジナル版で使った Doepfer MS-404 に非常に近い。このシンセが大きい子たちと遊べるのか確かめたい。
  14. ベースの音は十分張り合える。レゾナンスを上げると耳障りで脆い音になりがち。ラチェットは古典的なアシッドパターンに面白いバリエーションを作れる。内蔵ディレイは自分の好みには控えめすぎる。Donner 以外のエフェクトペダルを足してみる。
  15. ペダルを足しての演奏デモ。
  16. 驚きは無い。オンザフライのトランスポーズはよく効く。ただしエフェクトを足しても、オリジナルの 303 でよく語られる「深み」が足りない。既に「上品なアシッド」と「壮大なアシッド」はやったので、いよいよ第三の、最も繊細でない 303 の作法の時間 — 「プリセットじゃなくなるまでに何音変えればいいのか」問題、答えは『たぶん』。ランダムな 90 年代後半のアクション映画のレイヴシーン。
  17. ランダムパターンでの演奏デモ。
  18. Verdict。TB の系譜のモノシンセには二つの流派がある。究極の忠実さという聖杯を求めて英雄の旅に出るか、手持ちの機材で 303 的な演奏の本質を掴んで概念を昇華あるいは転覆させるか。Donner B-1 はそのどちらにも自分の得物にはならない。伝説のアナログ泡風呂の魔法の粉も、
  19. 古典のベースラインに新しい角度を与える個性も無い。ただし、B-1 より使いやすい 303 系シンセのシーケンサーは知らない。酸っぱい水に足を浸してみたいなら試してもいい。Donner のシンセデビューは自分向けではなかったが、Uli Behringer が B-1 の存在を初めて聞かされた時の顔を見るためなら、あと 200 ドル払う
  20. 締めの挨拶。高評価・登録・パトロン、そして次に見たい機材をコメントで、といういつもの。