ベスト・オブ・バッド 2024

Best of Bad 2024

この回の結論

判定は冒頭で宣言された通り「完全に公平、偏りゼロ、純粋な客観性の発現」である。God tier は Behringer TD-3、S tier は Elektron Digitakt、最下層の F tier は Teenage Engineering Choir。OP-1 だけは「OP-1な人には間違いなくS tier、自分にはD tier」という二重判定になっている。締めは「レーティングが間違っている、俺のお気に入りが入っていない、という怒りのコメントを残すのを忘れずに」。

何を喋っているか

  1. 記憶に残る Bad Gear 回のシンセ・ドラムマシン・グルーヴボックスを、5年前に学校のイケてる連中がやっていたティア表という形式でランク付けする。「いつも通り、俺の判定は完全に公平で偏りがなく、純粋な客観性の発現である」。Bad Gear は200本以上あるので Patreon の面々に予備選挙をしてもらい、そこに個人的なお気に入りを何本かこっそり混ぜた。
  2. 「非常に興奮している」と言って KORG microKORG から開始。これは思い入れが深い一台で、チャンネルを始める何年も前にオーストリア版のクレイグスリストで買い、売り手とその後べろべろに酔い潰れた。YouTube で収益化が通った動画でもあり、今の Bad Gear のコンセプトを形作った回でもある。
  3. microKORG は史上最も売れた電子楽器の一つで、エンジンは MS2000 ベース。「シボレーは一切入っていない」。バージョン2が発表済みで、これは間違いなくこの番組に出ることになる。オリジナルは solid tier。続いて Teenage Engineering Choir、これは二重の意味で悪夢だった。一つはチャッキー化して寝ている間に自分を殺しに来るのではという恐怖、もう一つはハインバーグでもない限り音楽が作れないこと。
  4. Choir の音源生成は原始的で、90年代のボーカルシンセ寄り。唯一の通信手段である Bluetooth MIDI がまともに動かない。「本物の合唱団と同じで、マイキングもやたら難しい」。F tier。次は E-mu Orbit、番組で扱った中でいちばん楽しい機材で、見た目もグルーヴィー、中身は9種のレイヴの怪物で満杯。
  5. Orbit はグライミーでローファイで汚いが、シンセエンジンは意外に深く、bat phaser のような良いフィルターとエフェクトが入っている。安く買えたものの、電源を入れるたびに東南アジアの魚市場の匂いがするので、使いたいほどには使っていない。B tier。次は Arturia DrumBrute、これまで扱った中で最高のアナログドラムマシンでありながら、最高に使えない音がする。
  6. DrumBrute は Bad Gear で唯一、実際に曲を作らなかった楽器。弟分の Impact のほうは大好きで常用している。ただしオリジナルはインスタ映え用として優秀で、シンセに興味のない人間を感心させるには最高の見た目。D tier。続いて Elektron Digitakt、「俺の赤ん坊」でほぼ全セットアップの背骨、バックアップ用にもう一台買おうか考えている。
  7. Digitakt は結局ワークフローが全てだが音も良い、習得に2年かかっただけ。完全にランダムな制限つきなので、愛するか憎むかのどちらか。自分にとっては文句なしの S tier。次は Yamaha FS1R、謎に包まれた遺物で、アンオブタニウムとユニコーンの毛の合金でできている。高い、特にラック版は。
  8. 入手の経緯。友人が DJ をしていたパーティで、恒例通り同類のシンセ好きが集まるテーブルに着き、冗談で「FS1R 持ってる人いる?」と聞いた。すると「持ってないけど、2台持ってる奴とスタジオをシェアしてる奴を知ってる奴なら知ってる」という返事。2日かけてその本人を突き止めたら、その伝説の男は面識もないのに1台を車で自宅まで運んできてくれた。
  9. 渡されたときの一言が「心配するな、お前がどこに住んでるかもう知ってるから」。恐ろしかった理由はそれだけでなく、当時が猛暑のさなかだったこと。FS1R には内蔵電源が自分自身を焼き殺す前科があるので、90年代サウンドデザインの聖杯が煙を上げる瞬間を見るのではという恐怖と同居していた。音はまとも、UI は変。C tier、Hydrasynth を買え。
  10. Teenage Engineering OP-Z。TE 製品の中ではいちばん好きな一台。ただしビルドクオリティはクソ、UI もクソ、本領を出すにはスマホかタブレットが必須。「ちゃんとしたグルーヴボックスとして出してくれたら買う」。B tier。次は Yamaha DX7、これは要するに「箱に入った80年代ポップスの PTSD」
  11. DX7 は B tier。本気で FM を触りたいならソフトを落とすか、KORG volca FM のようなものを使え、という流れに。volca FM は非常にパワフルで UI も良く、音質も十分以上。DX7 のパッチ互換なのが素晴らしい。ポリフォニーとベロシティ管理に制限があり、KORG はバージョン2でそこに手を入れた。本物の鍵盤奏者には向かないだろうが、自分には A tier。
  12. Roland JD-08。「気づいたか? このリストで最初の Roland だぞ」。正直、非常にインスパイアされる一台だった。マイクロフェーダーの UI は侮辱だしフィルターも本物っぽくはないが、オリジナルの JD-800 の鍵盤から赤い接着剤が垂れてくるよりはマシ。A tier。
  13. Elektron Digitone は、サンプリング周りを取り払って超クリーンな音のメガドライブ音源を積んだ Digitakt のようなもの。FM シンセにしては驚くほど詰めやすい。ドラム音より音階ものの方が好みだったが、ポリフォニーが限られているので設計上はドラムマシン用途が前提で、そこが自分にとっては決定打だった。B tier。次は Teenage Engineering PO Modular 400、音は好き、コンセプトは嫌い。
  14. PO Modular 400 はチューニングが実際に問題で、要するに安い部品でできた DIY キット。音楽を作るより部屋の飾りに向いている。D tier。続いて Behringer TD-3 で、言いかけて「Roland に訴えられなかったのが未だに信じられない」
  15. TD-3 は緑で醜くてプラスチック、なのに自分のお気に入りモノシンセになった。この不当に低く見られている楽器を称える動画がチャンネルに丸々1本ある。オリジナルの TB-303 の精神を捉えていて、適当なシーケンスを打ち込んでカットオフとレゾナンスを回す、それだけ。God tier。次は Teenage Engineering OP-1、2010年代を定義した機材であることに疑いはない。
  16. だが OP-1 は自分がグルーヴボックスに求めるものの正反対。昔アナログテープ編集の試験を受けさせられた身なので、バーチャルテープは論外。とはいえ音は良いので、ワークフローが合うならそれは結構なこと。OP-1 な人には間違いなく S tier、自分には D tier。続いて Moog DFAM、「母親違いのドラマー」、最高に凶悪な音を出す装置。
  17. DFAM はアナログの屁ベースの打楽器音を無限に作れるカタログ製造機。数え切れないほどの、しかもどう見ても意図的な制限のせいで顔を覆う場面が山ほどある。本当に欲しい方のシンセを Moog が作っていないのが残念。B tier。そして最後、bad gear の権化、元祖にして唯一、悪名高き Beat Thang。
  18. このヒップホップ特化のグルーヴボックスは Netflix のドキュメンタリーになる価値のある物語を持っていて、カメオ出演なら喜んで引き受ける。デカい機械でパッドは素晴らしく、可能性しかなかったのに、最後は2015年に Best Buy の在庫一掃セールで叩き売られて終わった。壮大な悲劇である。E tier。締めは「レーティングが間違っている、俺のお気に入りが入っていない、という怒りのコメントを残すのを忘れずに」。