Windows XP — 音楽制作に最適???

Bad Gear - Windows XP - Best For Music Production???

この回の結論

Windows XP を今のインターネットに繋いだら長くは生き延びられないが、オフラインのワークステーションとしては今も安定して確実に動く。最新のデジタル音声処理が要らないなら、大きめのプロジェクトでも十分使えるプラットフォームだ。音楽制作ライフハック狂としては、こういう古いマシンを MIDI と ADAT ライトパイプで今のセットアップに繋ぎ、昔の汚いプラグインを片っ端から走らせるビンテージ音源モジュールとして使うことを勧める。

何を喋っているか

  1. 番組の名乗り。前回のエピソード (Waldorf Rocket が取るに足らない脇役で出てきた回) について、最後の音楽パートに仕込んだイースターエッグに触れたコメントが1件も無かったのが意外だった、と早々にぼやく。
  2. 代わりにコメント欄を埋め尽くしていたのは「お前の古い Windows XP マシンをやれ」という要望だった。参加してくれてありがとう、お前らが自分を続けさせている、と礼を言う。この待望の回がここまで遅れた理由は「法的なことを片付ける必要があったから」。詳しくは言わないが、先週の金曜、人生初の著作権クレームを食らった。発売から19年経った今も XP を日常的に使っている人間は大勢いる。
  3. 自分は2012年、今も使っているデスクトップ PC を買った時点で XP という正しい信仰から離れた。羊飼いは迷える羊を家に連れ帰れるのか。見た目のチェック項目は全部クリア — ビンテージのオープントップ設計、個性の出た佇まい、程よいパティナ、そして最先端の冷却システムの心安らぐ音 (=爆音のファン)。一度もインターネットに繋いだことはないが、もしこれが自分の交際相手なら、それでも性病検査は一通り受けてもらう
  4. スペックは健康的。Service Pack 2、2.13GHz CPU、RAM 2GB。オーディオインターフェースは Echo Layla 20bit、E-MU 1212M、そして今もメインの RME Fireface 800 を経て、現在は M-Audio Firewire 410 が繋がっている。DAW は今とほぼ同じで Ableton と Reaper。そして当時の自分は降順に並べたカードの束は色が違っても丸ごと別の列に動かせると100%確信していた (ソリティアの話)。
  5. 旧式の UAD-1 Duo は今の PC に移植したが、Focusrite Liquid Mix はこの機体で現役稼働中。他にも遠い昔の遺物が出てくる — Nord Modular 1 と 2 のエディタ、Oberheim Matrix 1000、そしてもちろん Jomox Airbase 99。当時のオーディオワークステーションは、マスタリングエンジニアから送られてくる DDP イメージ用のプレイヤーが無ければ完成しない。ラウドネス戦争における核オプションとしての TT DR オフラインメーターも。
  6. さらに DVD リッパー、Audacity、CDex、そしてウイルススキャナやレジストリクリーナーを装ったマルウェアが山ほど。この PC に元々いくら払ったかは覚えていない — 何度も改造と更新を重ねたからだが、地元のクラシファイドで同等かそれ以上のマシンが20ユーロで出ているのを見つけた。この旧マシンは既に音でも登場済みで、新しい PC からコントロールする音源モジュールとして使っている。BFD1 の DW ドラムサンプルがここまでショボかったのは忘れていた。
  7. ほぼフリーウェアだけで組んだソフト音源のジャムを流し、当時のソフトシンセの音を実際に聴かせる。
  8. 当時の自分がどれほどのドケチだったかを思い出す。昔のプラグインフォルダは有害廃棄物処分場と証拠品保管庫を掛け合わせたような有様。それでも音の大半が今でも普通に使えるのには驚く。もっと衝撃なのは、この誇大妄想気味の電卓みたいなマシンで、ラジオでそこそこオンエアされたアーティストの楽曲を実際に制作していたこと。そのうちの一人、オーストリアのシンガーソングライターに連絡を取った。
  9. Gabriel が「この回でミックスを1曲開いてもいい」と了承してくれた。二枚のシングルで一緒に仕事をし、うち1曲のリミックスを制作している。リミックスは原曲の120BPMではなく126BPM。頭は Future Music 2007年8月号の CD-ROM から取ってきた四つ打ちキックで、Variety of Sound の Ferric サチュレーションが掛かっている。2009年の KVR Developer Challenge の優勝作だから、良いに決まっている
  10. ヴァースのベースはサブに TAL Bassline、上のプラックに Native Instruments FM8。どちらもフィルターで Daft Punk 風に絞ってある。ストリングスは原曲の生の弦にストックプラグイン。特に見るものは無いが、UAD の Pultec EQ の代わりに使った BaxterEQ だけは例外。
  11. ドロップに向かうのは Plugsound 3 をベースにした歪んだ Rhodes サウンド。ちなみに Plugsound は古き良き優秀なロンプラー系プラグイン、と一言添える。ここでは classic chorus を使用。メインのクラップは — またしても Future Music 2007年8月号の CD-ROM から。
  12. クラップには元々 UAD の LA-2A が挿さっていたが、Variety of Sound の ThrillseekerLA に差し替えた。Massive のベースが1台、そして定番のシンコペーションしたパーカッションはアタック音の寄せ集めと、ええ、やっぱり Future Music 2007年8月号 CD-ROM のサンプル。ループに変化をつけるのに dBlue Glitch を使用。
  13. TAL のシンセプラグインの大ファンで、中でも U-NO-60 がたぶん一番出来がいい — ビンテージ感のあるトーンと FX が良い。そしてプラグイン界のスクルージ・マクダックだった自分は Auto-Tune を使わず、もっとアーティファクトが出るタダのピッチ補正プラグインを選んだ (字幕は "caraby"、KeroVee 系と思われる)。そして間違いなく掛け過ぎた。
  14. 実際にボーカルの効いたサビが流れる。先述の Massive のベースは dBlue Glitch で徹底的に刻まれ、さらに編集した上でもう一度 Glitch を掛けてブロステップ風の質感にしてある。
  15. 「法務コンサルタントの助言により、この2本のリターントラックはお見せできない」。どのプラグインが挿さっているかは各自ご想像を。ここから総括 — 完全に思い出旅行だった。日頃から古いロンプラーや VA シンセを触っている人間として、Muon Tau のような評判の悪い大昔のフリーウェアですら、人々が数百ドル/ポンド/ユーロ払うハードウェア音源に食らいついていくことに驚いた。
  16. Verdict。Windows XP を今のインターネットに繋いだら長くは持たないが、オフラインのワークステーションとしては今も信頼できて安定している。最新のデジタル音声処理が要らないなら、大きめのプロジェクトでも十分成立する面白いプラットフォーム。音楽制作ライフハック狂としては、こういう古いマシンを MIDI と ADAT ライトパイプで今のセットアップに繋ぎ、昔の汚いプラグインを走らせるビンテージ音源モジュールとして使うのを勧める
  17. 視聴の礼と、高評価・チャンネル登録・「次はどんな機材を見たいか」のコメント依頼で締める。