割高なモノラル・ドラムサンプラー?

Bad Gear - Elektron Digitakt - Overpriced Mono Drum Sampler???

この回の結論

先に言っておくと、Digitakt は自分の一番好きな電子楽器のひとつで、Elektron は革新的な会社だ。いいアイデアを持っていて、しかも自分たちのコンセプトを曲げない — この組み合わせは珍しい。それでも、特に MPC 流のビートメイクから来た人には合わないのは理解できる。単体完結の制作プラットフォームとしても優秀だが、本当に光るのは2つ — DAWless セットアップの司令塔としてケーキの上のアイシングになる時と、明日など来ないという勢いでぶっ叩くビートを作る時

何を喋っているか

  1. 世界一嫌われているオーディオ機材の番組 Bad Gear へようこそ。何十本もやってきた今でも、お気に入りの楽器が bad gear の資格を満たしていると判明するのはみぞおちに軽くパンチを食らうような気分だ、と切り出す。
  2. 選定プロセスは科学的とは言い難く、唯一の基準は「ネットの罵倒でこの画面を埋められるか」。どんな機材でもできるだろ、と言われそうだし実際やってみるが、この必須項目にチェックが入らない機材も山ほどあると弁明する。
  3. 今日の題材は愛機 2017年製 Elektron Digitakt。掲示板がブラックフライデーの Walmart より速く埋まったのには面食らったと。自分と今日の主役の間にはほぼエロティックな関係があるが、それでも Bad Gear 待遇は免れない。
  4. 一見すると欠点のチェックボックスが全部埋まる。もし80年代なら、の但し書き付きで — モノラルサンプリング、ループのクロスフェード無し、ドラムループのスライス無し、録音時の波形ズーム無し、サンプル長は33秒まで、そして神と人とすべての聖なるものに逆らってソングモード無し
  5. 一方でファンが忘れてはいけない長所も列挙。明るいディスプレイ、優秀なビルドクオリティ、ASMR に値するボタン、超スムーズなエンドレスエンコーダー、クリアでパンチのあるヘッドホン出力。ステレオアウトのみは人によっては致命傷だが、そこは次で触れる USB の魔法で解決している。
  6. レガシー機材向けの DIN シンク対応 MIDI トリオを装備。再生を止めずにサンプリングできる点を実演付きで強調。サンプルは1GB超のドライブに保存され、鳴らす前に64MBのサンプルメモリに読み込む必要がある。
  7. 80年代 Roland のラック機や当世の KORG 系のメニューとマニュアルに深く傷を負った身としては、Digitakt の構造は新鮮な風。ただし学習曲線はある。深いからだけでなく、Elektron の連中は「物事はこうやるべき」という非常に明確な考えを持っているからだ。
  8. 繊細なダイナミクス、精密なマイクロタイミング、グリッドを外したリズム、複雑なオートメーションとモジュレーション — 全部ある。ただし全部 Elektron 流でやる必要がある。そのワークフローが肌に合わないとかなりフラストレーションが溜まる。
  9. 自分は真の Digitakt マスターからは程遠いと自己申告。だいたい勝手は分かるが、一度も使ったことがない、そもそも存在すら知らない機能が山ほどある。細部を知りたいなら自分が学んだ先人たち — Cuckoo、Ricky Tinez、Bo、LuPop、Dave Mech、Ess (Ess / Eva) の動画を勧める。
  10. スペック整理。8つのポリフォニック MIDI トラックと、8つのモノフォニックなサンプルプレイヤーボイス。基本は網羅 — 順再生/逆再生/ループ、ビットクラッシャー、ADSR 付きのローパス/ハイパスフィルター、オーバードライブ、簡素だが機能するアンプエンベロープ、ディレイとリバーブ、非常にパンチのあるマスターコンプ、そして凝った LFO セクション。
  11. ノートのクオンタイズ、サンプルのクロマチック再生 (chromatically / dramatically の言い間違いをそのまま繰り返してみせる)、最大4小節のパターン。批判の筆頭であるソングモード不在は、パターンの一時的なチェインで凌ぐしかない。作ったものを丸ごとバックアップする素直な方法は自分の知る限り無い。
  12. PC 連携は現状2つ。サンプル交換用の Transfer と、それ以外全部の Overbridge。Overbridge はプラグインとしても優秀で、MIDI 同期と個別アウトのストリーミングを多かれ少なかれリアルタイムで DAW に送れる。
  13. Digitakt は高価だが好きな楽器屋で普通に買える。中古も全然お買い得ではない。制約は創造性を生むのは周知だが、Elektron は Digitakt の設計でやりすぎたのか? と問いを立てる。
  14. イントロ曲で既に Digitakt は鳴っていた、と種明かし。象徴的な TR-707 のドラムサンプルにマスターコンプが与えた微妙なエッジに気づいたかもしれない、と。まずはワークフローの練習台としてミニマルなブームバップビートから。
  15. デモを受けて — Elektron は UI で素晴らしい仕事をした。モード切り替えはすぐ筋肉記憶になる。サンプルエンジン、FX、コンバーターはハイエンドで、特にマスターコンプが好み。回避策は山ほどあるが、それでもノッてくると8ボイスはあっという間に食い尽くされる
  16. ドラムがいけるのは全員知っている。ということで今度はマルチティンバーのシンセ兼 MIDI 司令塔として、本格的なトランス編成の中で使ってみる。
  17. 制約を脇に置けば、Digitakt はセットアップの中心として万能。MIDI はタイトで、慣れさえすればワークフローに引っかかりもない。さらに結晶のような音質は、他の楽器がもっとまろやか寄りの時に良い補色になる
  18. どこまでデジタルで面と向かった音が出せるのかを、「氷より冷たい北欧的な控えめさ、マキシ・ミニマル・フィボナッチ・テクノ」で確かめる、と大仰に宣言してデモへ。
  19. Verdict。まず言っておくと Digitakt は自分の一番好きな電子楽器のひとつで、Elektron は革新的な会社。いいアイデアがあり、しかもコンセプトを貫く — 珍しい組み合わせだ。それでも万人に刺さらない理由も分かる、特に MPC 流のビート作りの流派から来た人には。
  20. 単体完結の制作プラットフォームとしても優秀だが、真価を発揮するのは2つ — DAWless セットアップの整理役兼「ケーキの上のアイシング」と、ジャンル問わず明日が無いくらいぶっ叩くビート作り。「Bad Gear のネタが尽きたのか? いや、たぶん一生尽きない。単に番組で Digitakt をいじり回す口実が欲しかっただけだろって? もちろん違う」と締める。
  21. いつもの締め。気に入ったら高評価と登録を、次に見たい/聴きたい機材はコメントで、と呼びかけて終了。