この回の結論
深くて精密な音はテクノ、トランス、エレクトロで実によく効くし、SF のゲームや映画のサウンドデザイン用としてもさぞ楽しいだろう。もっと伝統的なスタイルにも使えるが、しばしばほとんどデジタルに聞こえる音の美学と、オタクくさい UI は多くの人にとっては敬遠材料になる。そして本題の、レトリックではなく自分自身にも突きつけている問い —— 市場に残った最後の Pulse 2 に 500ドル近く払う価値はあるのか。むしろ Blofeld のエンコーダーを修理に出しておくべきだったのでは。
何を喋っているか
- 「世界一嫌われているオーディオ機材」の番組へようこそ。高機能なシンセ中毒者として、普段は衝動買いなどしない。機材投資は事前に綿密に計画され、あらゆる項目にチェックが入るまで徹底的にリサーチされる —— という建前。
- 今日の題材は Waldorf Pulse 2。この2014年のアナログモノの生産終了をシンセ系ニュースが報じた数ミリ秒後には、ヨーロッパに残っていた最後の一台らしきものに引き金を引いていた。綿密な計画とやらはどこへ行った。ただ、この番組のスクショが Waldorf 公式SNSに魔法のように登場している以上、Pulse 2 が全項目にチェックを入れてくるのは驚きではない。
- 初代のノスタルジックな19インチラック筐体は消え、代わりに来たのは鍵盤なしの「ティーンエイジ・ミュータント・ヒーロー Blofeld」。防弾仕様に見えて、どこか頼りない。ついでに言えば、この威圧感のあるプログラミング・マトリクスの裏には、別のボンド悪役の名前を付けてほしかった。
- その下に眠っているのは洗練されたオシレーター群。Pulse 2 は基本的に3DCO のモノシンセで、シンク、PWM、オルタネート・パルスウェーブを備える。
- クロスモジュレーションと各種 Unison モード。パラフォニック用途には最大8基の PWM オシレーターが使える。Nick も納得。
- オシレーター3のフィードバックとルーティングのオプションが、音作りの幅をさらに広げる。ループ可能なエンベロープが2基(それぞれフィルターとアンプにプリルーティング済み)と LFO が2基。アルペジエーターは一歩踏み込んだ作りになっている。
- 昔から Waldorf のフィルターは好きだし、これも期待を裏切らない —— レゾナンスに触りさえしなければ。
- レゾナンスは低音もパッチ全体の音量も朝飯代わりに食い尽くす。さらに押しが欲しいなら Drive の最初の設定が確実に役立つ。Mod セクションは Eurorack 級のモジュレーション地獄を可能にする —— ケーブルを挿す官能的な体験は伴わないが。
- 深いエディットの快楽の話をすると、比較的大きめのモノクロディスプレイは、ほとんどの時間を馬鹿でかいパッチ番号の表示に費やしている。Blofeld の関数電卓的なセクシーさまでは期待していなかったが、今選んでいる列のパラメーター値や、今まさに上書きして消そうとしているパッチの名前くらいは見せてほしかった。先代と違ってパッチスロットは潤沢。
- とはいえプリセットが全部金というわけではない。Waldorf は独自解釈のグライドなど、かなり個性的な機能も足している。
- アナログ部を全部デジタル制御しているおかげで、パッチチェンジも含めて動作が非常にタイトで速い。CV/GATE 出力はモジュラー勢を刺激する。ステレオ出力の存在理由は、見つけられた限りモジュレーション可能なパンだけ。実現しなかった FX モジュールの計画があった形跡もある。5ピン MIDI(THRU なし)、クラスコンプライアントな USB MIDI。ノブが自分の Blofeld のものより長持ちすることを願う。
- モノシンセにこれほどの金を払ったことはない。Pulse 2 は高価だが唯一無二のアナログシンセで、機能セットは注目に値し、Waldorf ならではの癖も満載。生産終了には理由があるのだろう。今日のイントロで既にこのシンセの音は聴いている。UI に慣れるには時間がかかるが、ドイツの職人仕事という定型句どおりの品質は明らか。ここからは底なしのベースを掘りに行く。
- ベース中心のデモ演奏。
- 「これはかなり気に入った」。広大な音のツールキットから削り出された、音程の精密さと純粋なカオスの間の面白いバランス。UI を扱うのに必要な抽象度の高さは万人向けではないし、この音を例の「アナログ」的な決まり文句で表現する気にはならない。次はパラフォニック PWM モードで小さな Waldorf パーティーを開く。
- パラフォニック PWM のデモ。ついでに、自分の Blofeld のエンコーダーは火を入れるたびに悪化していく。
- とはいえ Blofeld は「深いベースが必ずしもアナログである必要はない」ことをきれいに証明している。Pulse のパラフォニックモードもギミックには程遠いが、兄弟機の複雑さには敵わないし、FX ペダルを何台か計算に入れるのも忘れずに。「最も押しが強く攻撃的なクラシックシンセの一つ」という評判の割に、今日聴いた音はどれも比較的おとなしい。これをテクノモンスターに仕立てられるか試す。
- 「EBM に最適なシンセは何か」的な、お約束の攻撃力テスト演奏。
- 結論。深く精密な音はテクノ、トランス、エレクトロで抜群に効くし、SF のゲームや映画のサウンドデザイン道具としても相当楽しいはず。もっと伝統的なスタイルにも使えるが、しばしばほとんどデジタルに聞こえる音の美学とオタクくさい UI は、多くの人を遠ざけるだろう。
- そして本題の問い —— これはレトリックではなく本気で自問している —— 市場に残った最後の Pulse 2 の一台に 500ドル近く払う価値はあるのか。「たぶん Blofeld のエンコーダーを修理に出しておけば良かったんだ」。