素人のためのベースライン

BASSLINES for Amateurs

この回の結論

「毎週それなりに聴ける音楽を量産できてる汚い秘密を覗いたせいで、このチャンネルを見る楽しさが減ってなければいいんだが」と締める。8分音符のオクターブジャンプやダブステップのワブルみたいな絶対的定番を入れられなかったことは謝罪。視聴者には自分の制作ライフハックをコメントで教えてくれ、今日の戦略が効いたかどうかも知らせてくれ、とだけ。

何を喋っているか

  1. 音楽理論も正規の作曲スキルも無い人間がベースラインを作る方法を7つやる。アレンジの「下半身」をどう作るかの話で、ハウスやテクノ向けだが他ジャンルでも効く手はある。「人が実際に聴く音楽をそこそこ量産してるが、自分はいまだにアマチュアだと思ってる」ので、狙いはその層。
  2. 経験のあるミュージシャンでも「こんなに何もしなくて済むのか」と驚くかもしれない。第1章「オフビートのドンク」。ダンスミュージック史でも最も古臭いベースラインから。四つ打ちを組んで、キックのパターンをコピーして2ステップ右にずらす。ただし鳴らすのはキックではなくドンク。
  3. 伝統的にドンクはFM音源で作る単純な音だが、ネットで拾った馬鹿げたほど過剰加工のサンプルでも全く問題ない。ロシアンハードベースに人生を捧げたくないなら、ドンクを他のパンチのあるベース音に差し替えてもいい。ノートを少し上下させて、友達の前で流しても恥ずかしくないベースラインにする。
  4. 第1章a「ゴアのギャロップ」。サイケデリックトランスの作り手になりたければテンポを140BPMに上げ、キックが乗っていない全ステップにノートを置く。理想はどこまでもデジタル臭いプラグインを容赦なく鳴らすこと。芝刈り機が石を噛んだような音になったら合格。
  5. 睡眠不足の客の脳を吹っ飛ばしたいなら、DAWやシーケンサーを本物のミュージシャンが「三連符」と呼ぶものに設定する方法を探せ。1つの音を長時間鳴らし続けるのは社会的に許容されている。3日間までなら全く問題ない。第2章「ウンパルンパ」。これは技術的にも知的にもリソースが限られている人に最適。
  6. オールドスクールなミニマルテクノ向き。例の古代のドラムマシンのローtomをベース音に使う。定番のオフビートではなく、1つめと3つめの音を1ステップ右にずらす。ウンパルンパに聞こえるまでやる。tomは本物のベースシンセに置き換えてもいい。
  7. バリエーションを付けてもいいが、付けなくてもいい。第3章「偽サイドチェイン」。もう気づいてるだろうがキックとベース音の間には常に何かが起きている。低域はアレンジの中で場所を食う。ここまでやってきた事の目的はただ一つ、キックとベースを分離させてミックスを綺麗に保つこと。
  8. 今回はちょっとした音作りのトリックで同じレシピを守る。いわゆる「リース」——汚いベースの連続した壁を指すお洒落な用語——をサンプラーに読み込む。ノートレングスを4分音符にして、またキックパターンのコピーで鳴らす。史上最悪のベースラインの完成。そのあと全ノートの頭に軽いフェードインを付ける。
  9. やり方はアンプエンベロープのアタックを調整するのが理想。そう、EDM全曲で聴くあのサイドチェイン効果にほぼ聞こえる。しかも手間は半分。フェードインなしのリースベースはドラムンベースでもよく効く。
  10. 第4章「安易な逃げ道」。ベース音とキックを同時に鳴らすと問題は起きうるが、可能なだけでなくこの場合は超簡単、不便ですらない。必要なのは16ステップという良き伝統から外れた長さに設定できるシーケンサーだけ。この機種ではlast stepという名前の機能、DAWでもいい。
  11. 規格外のパターン長を1つ決める。自分は5がかなり好き。あとは何かを感じさせるノートを数個だけ、多くはなくていい。それだけ。ナードが「ポリメーター」と呼ぶこの技法は、延々と変化し続けるように聞こえる催眠的なモチーフを生む。ベース以外の音にも効く。
  12. 副作用はステレオタイプな踊り方、大学中退、ベルリン移住。第5章「アシッド」。ついにキックとベース音が本当にぶつかりうる領域に入ったので、両者の同居を音楽的に楽しくする手が要る。例えばキックをデカく、ベースを軽くする。この「本物のベースじゃないベースライン」の原型がアシッドで、伝統的には Roland TB-303 で作られる。
  13. ここではこの名機の公式後継機を使うが、レゾナンスの付いたシンセなら何でもいい。サイケデリックなパターンを作るには、またシーケンサーにランダムな音を打ち込むだけ。体内の化学反応に何か起きるようなやり方で打ち込めたらボーナス点。アクセントを数個、できれば他のミックス要素と喧嘩しない位置に。あとスライドを足せば、
  14. あの旨味が出る。儲かる。第6章「ランブル」。良い知らせ、この方法に音楽的スキルは一切要らない。悪い知らせ、音作りではいきなり深い所に飛び込むことになる。キックを組んで、別チャンネルに完全なコピーを作る。1つめは無加工のまま置いておく。
  15. 2つめには容赦なく手を入れて、リバーブで醜い塊に変える。ランブル(轟き)なんだから当然高域は削る。有害なプラグインのカクテルでブーストして、フロアの客が即座に吐かないように退屈な整音作業もやる。そして最も重要なのが、これを無加工のキックにサイドチェインすること。
  16. 退屈にならないよう他の帯域用のレイヤーを作ってもいい。第7章「ジョルジオ」。電子音楽の開拓者たちは2つの問題と戦わされた。ベースラインのYouTubeチュートリアルが無かったことと、シーケンス機材が極めて原始的だったこと。結果として初期の作品の多くは、
  17. 本物のベーシストが電卓でイカしたMoogを操作させられたら弾くであろうリフみたいな音になっている。短いのに忙しないパターンに徹すること。音は地元のビンゴホール委員会が無害と判定する範囲のものを使う。劇的効果のために曲全体で移調してみてもいい。
  18. あとは繰り返す。「毎週それなりに聴ける音楽を量産できてる汚い秘密をちょっと覗いたせいで、このチャンネルを見る楽しさが減ってなければいいんだが」。8分音符のオクターブジャンプやダブステップのワブルみたいな絶対的定番を入れられなくて申し訳ない。自分の制作ライフハックをコメントで教えてくれ。
  19. 今日の手が効いたかどうかも知らせてくれ。高評価、チャンネル登録、パトロン、そして下のリンクを使ってくれればチャンネルの支えになる——あんたのゲストが何を買えと命じてこようが関係なく。観てくれてありがとう、また次回。