FL Studio

Bad Gear - FL Studio

この回の結論

DAW を憎むのは意味がない — Logic は別として。FL Studio の機能セットは圧倒的で、一部は Doom の武器 mod みたいに強すぎる。Image-Line は伝統的な音楽制作から切り離された独自の哲学とワークフローを作り上げた。このやり方が肌に合う人、あるいはゲーム畑から FL Studio で育った人にとっては完璧な選択肢。ただし旧世代のサウンド屋でハードウェアのジャム狂である自分としては、Ableton の緻密なリアルタイム演奏性が恋しかったし、何十年もかけて編み出した小汚いトリックを移植するのに苦労した。

何を喋っているか

  1. サンタの尋問から始まる。「お前はとんでもなく悪い子だった。リストによれば、完全にまともな機材を番組に晒しただけでなく、OP-Z を『opz』と呼んだ」。「本当にすみませんサンタさん、石炭の塊とかで勘弁してもらえませんか」と懇願するが、下されたのは最も重い罰 — 一週間、DAW だけで過ごすこと。「Ableton は使っていいですか」→ 却下。今年のクリスマス回は Fruity Loops で決まり。
  2. 番組口上。世界で最も憎まれているオーディオ機材の番組。DAW は素晴らしい — 少なくとも自分が慣れてるやつは。それ以外は、ウォッカを一本空けた後に操縦経験ゼロで飛行機を着陸させるような感覚だ。
  3. というわけで今日は FL Studio。自分の世代のオーディオ老害にとっての宿敵であり、史上最もミーム化された音楽ソフト。1997年に Fruity Loops の名で登場した — KORG Z1 と同じ年なので、公式にヴィンテージ機材とみなして差し支えない。
  4. 「要するに、FL Studio の Reddit スレ全部で笑いものになり、Bad Gear のコンセプトを完全にぶち壊し、自分の無能さを大量のミームで覆い隠す回だ。メリークリスマス」。第一印象は「音楽制作について自分が知っていることは全部間違っている」。DAW に期待する部品は一通り揃っているが、それぞれがゆるく繋がっているだけ。ワークフローの核は Channel Rack と、その代名詞であるステップシーケンサー。
  5. Channel Rack の各要素は 125ch のミキサーへ手動でリンクさせる必要がある。やらなければ謎の裏路地を通ってマスターに辿り着く。アレンジ画面は Playlist と呼ばれ、見た目は Mario Paint の作曲モードのプロ版。他の DAW に慣れていると、基本的なズーム操作すら難関になる。
  6. Playlist のトラックは Channel Rack ともミキサーとも基本独立しているが、トラック丸ごとをミキサーチャンネルにルーティングすることもできる。ステップシーケンサーで足りないならピアノロールがある — こいつは本気でヤバい (whips the llama's ass)。コード一発入力、アルペジオ、半アルゴリズム的なリフ生成、ヒューマナイズ、内蔵 LFO。
  7. 「お前の好きな機能が入ってなかったらコメントで教えてくれ」。この MIDI 編集の重量級機能を抜きにしても、ワークフローがあまりに洗練されていて、Ableton に戻ったときに数々の便利機能が恋しくなるだろうと認める。ショートカットは石に刻まれた福音として崇めるべきだが、キーボード上に散らばりすぎているのが好みではない。
  8. F9 でミキサーを開くために居心地のいい修飾キーの一角から出るのはまだ許せる。だが FL でオーディオを編集していて、人生で初めて右 Shift キーを使った。中クリックまで出番がある。マルチタッチ機能を使っている人はコメントを。ここで「老人が雲に向かって叫ぶ」時間 — Windows め。付属のソフト音源、ドラムシンセ、サンプルは大量にある。
  9. 内容は基本的なものから壮大なものまで。実用系プラグイン、複雑さの異なる複数のサンプラー、そしてほぼあらゆるシンセシス方式が揃っている。Sytrus は FM と減算のハイブリッドで、Ableton の Operator を朝食に食う。VA は 50 種類 (50 Shades of VA)。
  10. ROMpler 類と、Boo Bass や Autogun のようなミーム的シンセ — Autogun のプリセット数は 4,294,967,296 個 — に気を取られて、Harmor のような加算合成のモンスターを見落としかねない。プラグインの狂気はまだ終わらず、コンボリューション系エフェクトやピッチ補正まで入っている。
  11. 新しい Luxeverb は良い音。もっとキャラの立ったコンプが欲しかったが EQ2 は普通に使える。FL Studio の信者が「至高の DAW」を語るとき決まって出てくるのが二つ — Gross Beat (Ableton の Beat Repeat が怪しげな研究用薬物をキメた状態) と、もちろん Soundgoodizer。
  12. Soundgoodizer は音がスピーカーから飛び出してくる完全なミーム系エフェクトで、馬鹿げているほど最高。「Mac の Ableton で同じことをやる方法を見つけたらコメントで教えてくれ」。CPU を食う小細工と回りくどい workaround に頼る Ableton と違い、FL Studio は本質的にモジュラー。何でも何にでも繋げられる — 基本的なルーティングでは逆に取っつきにくいが、モジュレーションとお約束の EDM サイドチェーンの宇宙が開く。
  13. この計り知れない罰の一週間のために選んだのは 150 ドルの Producer 版。上位の Gourmet Edition は 3.99。Image-Line が海賊版相手に Metallica ばりの全面戦争を仕掛けず、代わりに生涯無料アップデートを提供している点は評価できる。v21 が出たばかりだが要らない — 安定しているし、ネットはカルト的な賞賛で溢れている。最高の DAW をめぐる議論 (答えはもちろん Ableton Live) は完全に無意味、という点は全員合意できるはず。
  14. FL Studio 叩きを終わらせる時が来たのか。今日のイントロ曲でもう FL のストック音源は鳴っていて、曲を丸ごと打ち直したが、自分がどうしようもない新参者であることを痛感した。FL には象徴的な 808 サンプルが 4 つプリロードされている。これを実際のアレンジで使えるのか。
  15. 打ち込みのデモ。「Cubase よりは楽しい」。ショートカットをいくつか覚えられていればもっと楽しかったはず。学習曲線は確実にあるが、全体のコンセプトさえ掴めればビートを叩き出すのは簡単。
  16. 次は、老人たちがあれほど毛嫌いする典型的な「FL サウンド」を出せるか検証。Soundgoodizer を 11 まで振り切り、Fruity Limiter を全力で潰し、さらに難易度を上げるためパフォーマンスモードでライブ演奏する。
  17. 演奏パート。実演の後「やっぱりな」。
  18. 「いくらあっても足りないものが二つある — Soundgoodizer とベース系プラグインだ」。以降はプログレッシブハウス的な演奏が続く (この区間は字幕が崩れている)。
  19. Verdict。DAW を憎むのは意味がない — Logic は別として。FL Studio は圧倒的な機能セットを持ち、その一部はDoom の武器 mod みたいに強すぎる。Image-Line は伝統的な音楽制作から切り離された独自の哲学とワークフローを作り上げた。この考え方が合う人、あるいはゲーム畑から FL Studio で育った人には完璧なソフト。
  20. ただし旧世代のサウンド屋でハードウェアジャム狂の自分には、Ableton の緻密なリアルタイム演奏性が恋しく、何十年もかけて編み出した小汚いトリックを移植するのに苦労した。「サンタさん、呪いを解いてもらえますか。年内最後の回では本物の機材に戻りたい」→「もちろんだ。しかも特別なものを持った旧友を連れてきた」。「もうどうでもいい」
  21. アウトロ。「Gus Williams のやってることは全部チェックしてくれ、完全なレジェンドだから」。登録・パトロン・コメント (次に見たい機材) の呼びかけ。最後は例によって謎の掛け合いで締め。