この回の結論
Volca Drum は魅力的な楽器だ。Volca Beats のような第一世代の粗っぽい単純さは消え、次世代の機能リストの長さと、現代的な音色の立派なパレットは素直に評価できる。Volca の生態系の中では欠点が見当たらない — そしてそれこそが最大の弱点だ。ベッドルームジャムとサンプル作りには最高だが、限られたメモリスロット、いじりにくいコントロール、バックアップ手段の欠如が、大人のセットアップに組み込むことを無駄に難しくしている。KORG、砂糖のせでお願いだから、このシンセエンジンをとっくに出てるべき Drumlogue に載せてくれ、それも急いで。
何を喋っているか
- 世界一嫌われたオーディオ機材を扱う番組。Volca は「ゲームチェンジャーなのにオモチャっぽい電子楽器」がミーム化した存在で、Roland の Boutique と並んで自前の Bad Gear ポケモンだと紹介する。
- 今回は 2019 年の Volca Drum。ドラム専用の Volca としては3台目で、他の2台がほぼアナログなのに対しこれは思いっきりデジタル。KORG のもっと上等なコレクション一族の、お気に入りの一員を思い出させる作りだという。「KORG、これはしくじるなよ」。
- 見た目は一目で Volca。象徴的な縮小デザイン、光る極小ツマミ、16ステップシーケンサー。初期3機種からの進化は大きく、本物のディスプレイを積んだ初の Volcaで表示はくっきりスタイリッシュ。専用 FX セクションは「悪魔崇拝の儀式に使うスチームパンク装置の制御盤」みたいな見た目。
- OG Electribe のファンならシンセエンジンは馴染む。ER-1 同様に主役は基本波形の過剰なモジュレーション。サイン、ソー、フィルタードノイズをピッチモジュレーションの拷問にかけ、シンプルなエンベロープと、サイン波かランダムを選べる LFO 的なもう一系統で制御する。
- アンプの時間変化は3種類のエンベロープカーブで整形。リニア、エクスポネンシャルのアタック・ディケイ、そしてクラップ系にうってつけのマルチピーク。結果としてルーティングの組み合わせは膨大になるが、それを操作するツマミはたった1つ。ライブでは到底理想的とは言えない。
- 音はさらにビットリダクション、ウェーブフォールディング、オーバードライブで追い込める。伝統的なドラムの音は「何かが何かにぶつかる」ことで生まれる、という話につなげる。
- その挙動を再現するため、Volca はパートごとに前述のシンセエンジンを2レイヤー持つ。スネアの打撃音と胴の鳴り、バスドラの最初のクリックと長いブーム、どちらも問題なし。ポリフォニーは6、チョークグループも組める。
- ディレイ FX くらいは載るかと思いきや、Volca Drum はさらに一歩進んで物理モデリングの waveguide セクションを搭載。チューブとストリングのモデルでいかれたレゾナンス、リバーブっぽい FX、変態的なディレイが出る。センド FX としてうまく実装されている。音ごとの個別パンとピッチクオンタイズも、多少メニューに潜れば使える。
- シーケンサーとパッチメモリで KORG は本気を出した。パターンは全部で16個だけだが、ベロシティがない分はボイスごとのアクセントトラックで補われる。スライスはラチェット的な連打に使え、パターンチェイン、スウィングもグルーヴィー。パターンとキットは別々に保存できる。
- ただし Volca のワークフローに慣れた人間はキットを保存し忘れてビートを台無しにする可能性が高い — 実際やらかした。ランダマイザは意外なほど使える音を吐く。
- モーションレコーディングは KORG の伝統芸だが、今回は Elektron 式パラメーターロックの追加という大改修を受けた。「実にいい」。パートごとのアクティブステップ設定で複雑なポリリズムが組め、ステップジャンプ機能もある。
- MIDI 実装もついに酒が飲める年齢に達した。ただし MIDI 経由でクロマチックに鳴らす方法は見つけられなかった。ここから地雷が醜い頭をもたげる。恒例により MIDI OUT も USB 端子もなく、作ったものをバックアップする手段が一切ない。
- エンジンが深く、わずかなパラメーター変化が大きく音を変える機種だけに、ライブ5分前に新品をゼロから打ち込み直す羽目にはなりたくない。それ以外は価格 150 ユーロ前後という点も含めて完全にいつもの Volca。機能は新旧とりまぜて満載のデジタルドラム工場だが、この小さくて操作しづらい筐体に全部詰め込む意味はあるのか。イントロ曲でも既に鳴っていて、Volca だけで組んだバージョンもある。赤い Electribe のようにオールインワンのテクノグルーヴボックスとして使えるのか試す。
- 1本目のジャム後の感想。オリジナル同様ツマミいじりの結果は時に予測不能だが、ピッチクオンタイズとパラメーターロックは本物の改善。音は堂々とデジタル。
- 2本目はアナログの Volca 兄弟と Roland のブティーク機を足して制作。
- Volca のキックと組み合わせると弱点が露わになる。ファンキーなデジタルパーカッションは気に入っているものの、太くて腰のある音にするのは難しい。シーケンサーが強化されたとはいえ曲を丸ごと作るには向かない。3本目は DAW に繋いで、サブウーファーに優しい超デジタルなダウンテンポ = リミナルスペース系を作る。
- Verdict。Volca Beats のような第一世代の粗い単純さは消え、次世代機能と現代的な音色パレットは評価できる。だが Volca の枠内では欠点が見えない = それが最大の弱点でもある。
- バックアップ不可・メモリ不足・操作性の悪さが大人のセットアップへの統合を難しくしている。「KORG、砂糖のせでお願いだから、このエンジンを待ちくたびれた Drumlogue に載せて急いでくれ」。最後は恒例の高評価・登録・パトロン募集と、次に見たい機材のリクエスト呼びかけ。