この回の結論
今の時代でも Peak は最上級の楽器だ。アレンジに組み込みやすく、多機能で扱いやすく、信号経路の端から端まで音質に一切の穴がない。ただ、Novation のあのトレードマークの音 — このデラックス版は特に好きなのだが — をトラック中に貼り巡らせたいとは思わないし、もっと温かくて、もっとタガの外れた音が欲しくなる場面が何度もあった。発売から約7年で音楽機材の地図は様変わりし、普通のシンセ仕事にも豪華な音作りにも、もっと安い選択肢がいくらでもある。この程度の不満を除けばこの気高いモダンな艶と精度は心底楽しめた。それでも言う、Novation はそろそろ Bass Station 3 を出す時だ。
何を喋っているか
- いつもの口上。「世界一嫌われてるオーディオ機材の番組へようこそ。スカイネットみたいなプラグイン、映え重視のデザイン、Dark Souls フル体験のワークフローがあってもなお」。
- 1機能1ノブという古臭いやり方は、今でも多くのミュージシャンにとってシンセUIの頂点。今日は Peak — 2017年のハイブリッド高級ポリシンセだ。大人向けのノブだらけのインターフェース、そんなに秘密でもない音作りの隠し味、そして Roland のグルーヴボックスより深いメニュー潜り。さらに、好きか嫌いかの二択しかないあの Novation の音を強化した版が乗ってくる。一目見た時点で Peak は Bass Station 3 のチェック項目を全部埋めている。
- 官能的なカットオフノブ。エンベロープのスライダーもたくさん — それでも「もっとよこせ」と言いたくなるが。そして、古めかしいディスプレイと最低限のメニュー潜り機能でしかたどり着けない、隠れた音の層がある。
- 8ボイスのポリフォニーは通称 Oxford オシレーターで生成される。定番の波形に加えて、1つあたり5波で構成されるシンプルなウェーブテーブル群も鳴らせる。
- このオシレーターは FPGA ベース。高サンプルレートのデジタル技術で、エイリアシングがほぼ出ないとされている — 「原理は正直まだ完全には理解できていない」。専用の SHAPE ノブで PWM、波形シェイピング、ウェーブテーブルのスキャンにアクセスできる。
- スーパーソーとオシレーターシンクはメニュー潜りが必要。素の音が無菌すぎるという人向けに、音程の揺らぎ(不安定さ)を足すこともできる。ノイズには専用フィルターが付き、キーシンクもある。
- キーシンクは安定したパーカッション音や、挙動の読めるリングモジュレーションに便利。ユニゾンはそこそこ太く、Novation はアップデートでデチューン関連のオプションも足した。フロントパネルの2基の LFO に加えて、「シンセのメニュー構造という名の、人の住めない冥府」にもう2基が潜んでいる。
- 3基のエンベロープも見た目以上の中身がある。AHDSR 形状でループ設定も可能。アナログフィルターセクションは紛れもなく Novation の音。自己発振し、12dB / 24dB、ハイパス・バンドパス・ローパスが選べる。
- 独特のフィルターオーバードライブは昔から好きな部分。基本的なモジュレーションは手元のノブで触れる一方、気取らないモジュレーションマトリクスが深いシンセパラメーターを全部束ねている。MiniNova でおなじみの ANIMATE ボタンで、パッチを一時的に変化させられる。
- 比較的地味な FX セクション — ディストーション段、コーラス、ディレイ、リバーブ。使いやすく、隠しルーティングもあり、仕事はきちんとこなす。このモダンなポリシンセ的な充実ぶりは、機能美重視の EDM ベースにぴったりだ。
- 顔面直撃のトランス的トッピング、FX まみれのサウンドスケープ、氷のように冷たいパッド、そしてアルペジエーターを走らせた半自動ダンストラックのクルーズコントロール。
- 予想どおりビルドクオリティは最高。ノブの感触は素晴らしく、リアパネルを見れば人類への信頼が多少は取り戻せる。今回も貸してくれた Synth Anatomy の Tom に感謝。Peak は現代的な機能と、実績のある Novation らしさを組み合わせた王道フラッグシップのデスクトップ音源。ライバルと並べるのか、それとも既に音の古い Bass Station 3 でしかないのか。
- 今日のイントロ曲でもう鳴っている — 「思ってたほどカッコよく仕上がらなかった」。まずは軽めに、ユニゾンベース + パッド + アルペジオから。
- いい感じ。Minimoog 系のような温かさや生々しい獰猛さは出ないが、ベースはミックスの中に収まりよく座り、音には明確にモダンな風味がある。メニュー頼りのワークフローの割に、音作り自体は簡単。次はテンポを上げる。
- この楽器の力強い音色をさらに押し出す。ここでもレトロフューチャーなベースが主役をかっさらう。
- パッドの音はもう少し臨床的でないほうが、と思う人はいるかも。追加処理なしで完成品レベルの音が出せるのが Peak の強み。実際のミックスでの立ち位置を確かめるべく、一見よくある YouTube の AMV、実はディストピア系インディー・ブーマーシューターの別バージョンサントラという代物の、肥満体のベースを味わう。
- Verdict。今の時代でも Peak は最上級の楽器だ。
- アレンジに組み込みやすく、多機能で扱いやすく、信号経路の全域で音質に穴がない。ただ、あの Novation の音は — 特にこのデラックス版は好きなのだが — トラック中にべたべた貼りたい種類の音ではなく、もっと温かく、もっとタガの外れた選択肢が欲しくなった。発売から約7年、音楽機材の地図は根本から変わり、もっと安い代替がいくらでもある。
- 標準的なシンセ仕事にも贅沢な音作りにも安い選択肢がある今、この程度の不満はあれど、気高いモダンな艶と精度は心底楽しめた。それでも言う、Novation はそろそろ Bass Station 3 を出す時だ。見てくれてありがとう、また次回。いいね・登録・Patreon、そして見たい機材をコメントで。
- 番組で扱ってほしい機材のリクエスト募集で締め。