この回の結論
Roland はまたやってのけた。プロの現場に耐える音を出せる説得力のあるコンセプトと、素晴らしいデザイン。ただし改善の余地は同時にあって、SYSTEM-1 は細かい欠点まみれでもある。驚くほど客に優しいアップデート方針でかなりの数は潰されたが、限られたポリフォニー、最悪の鍵盤、妙なUIの細部、そしてダメ押しに面倒で金のかかるコンピューター連携 — あまりに Roland らしくて、Uli が「できるから」という理由だけで同じことを全部やる日を待ってしまう。デジタルのハードウェア・シミュレーションは「箱に入ったプラグイン」でしかない、というお馴染みの議論があるが、今回はそれが公式である。
何を喋っているか
- Bad Gear は世界で最も嫌われているオーディオ機材を扱う番組。プラグインは、ある人にとっては欠かせない道具で、別のある人にとっては美しいハードウェアセットアップを壊す魂なき破壊者。とはいえ、あの奇天烈な SynthEdit 製プラグインの時代からバーチャル楽器が長い道のりを来たのは否定できない。
- 今回は SYSTEM-1。2014年のコンパクトなバーチャルアナログ鍵盤で AIRA ファミリーの一員。Roland が不朽の名機のプラグイン・エミュレーションを現実世界に持ち込もうとした最初の試み。Boutique ラインが名機の縮小版を出すのに対し、こちらは「プラグアウト」を、正体不明のポリシンセの助手席に乗せた形。『マトリックス』を雑に下敷きにした、ラスベガスの場末のハロウィンショーに相応しい装置。
- 一見して SYSTEM-1 は全部入り。ただ、この忌々しいライトの消し方を誰か教えてくれ。溶接用ゴーグルを装着すれば、Roland が本当に手をかけたのが分かる。ほぼワンノブ・パー・ファンクションのインターフェイスで、ノブは頑丈、スライダーはそこまで頑丈じゃない。初心者にも自明な配置。
- SYSTEM-1 独自の4ボイスエンジンは、基本波形とその「スーパー」版、そして COLOR パラメーターを持つ。
- Roland はさらにファームウェア更新で VOWEL オシレーター、簡易 FM、そして俺の祈りが届いたに違いないカウベル・オシレーターを追加した。加えて2基のオシレーターはかなり凶暴なクロスモジュレーション、シンク、リングモジュレーションに設定できる。
- LFO は1基しかないが、専用のピッチエンベロープは嬉しいし、アンプ/フィルターのエンベロープスライダーが返してくる視覚的フィードバックは値千金。これらのモジュレーションは全部オシレーターの COLOR に送れて、PWM や妙な FM 音、効果音が作れる。
- 耳障りなリードも。ミキサーではサブオシレーターとノイズを足せる。Roland のデジタルフィルターは好みが分かれる代物だが、これは滑らかで音楽的で驚いた。可聴なステッピングも無い。レゾナンスはわりと穏やか。
- 自己発振はサイン波オシレーターとして良く働く。基本の音はさらにハイパスフィルター、70年代の Hi-Fi 風トーンコントロール、ビットクラッシャー、そして簡素だが実用的なリバーブで加工できる。
- ディレイもある。ユニゾン、ポルタメント、FX と LFO のマスターテンポ同期も。シンプルなアルペジエーターは素晴らしい。SCATTER はアルペジオのパターンだけでなく、シンセのパラメーターやテンポにも影響する。
- Roland が鍵盤に載せ続けている 80年代式ピッチベンド/モジュレーションのアレは好きじゃない。とはいえゼロ年代の映像機材の残り物みたいなデュアル・ジョグダイヤルの方がマシかどうかは何とも言い難い。モジュレーションホイールに至ってはボタンになっていて、実生活での使い道は見つからなかった。
- ここまでは結構。だが多くの人はコンピューター無しでプラグインが動く機能目当てで来たはず。それが、ほとんど出来過ぎなくらい上手く動く。ただし本体はプラグアウトのスロットが空の状態で届く。Roland がサブスク方式に切り替えた今、同梱のプロダクトキーカードはほとんど皮肉に見える。買い切りのプラグアウト・ライセンス2〜3本の値段は中古の SYSTEM-1 より高い。
- Roland Cloud の無料30日トライアル期間中は対応エミュレーションを全部使えた。ただしその後プラグアウトを本体から取り除く確実な方法はまだ見つかっていない。本体が保持できるモデルは一度に1つだけ。PROMARS と SH-101 のプラグアウトは本当に気に入った。Roland Cloud の仕組みについて重要な情報をくれた Nu-Trix The Synth Guy に感謝。
- 批判を大量に浴びた後、パッチは64個保存できるようになった。バックアップも簡単。浅くてスイッチみたいな鍵盤は、俺みたいな下手くそな鍵盤弾きにとってすら侮辱。USB MIDI にドライバーのインストールが要るのは実に90年代的だし、オーディオ入力が無いのでオーディオインターフェイスとしての用途は限られる。
- 鍵盤無しでユーロラック対応の版は今も新品で買えるし、通常の SYSTEM-1 もそこそこ手頃な値段で見つかる。SYSTEM-1 は Roland の看板と言える音を新旧問わず幅広く、しかも弄り倒せる箱で出してくる。カラーリングだってそこまで酷くはないだろう? 今日のイントロ曲ではプラグアウトと内蔵エンジンをごちゃ混ぜにして使ったが、なかなか上手く行った。本物の DAWless ジャマーらしくアルペジエーターをキーホールドに設定する時間だ。
- 内蔵エンジンでのジャム演奏。
- 面白い切り口だ。フィルターのスイートスポットが広くて良いし、音がミックスに馴染む。オリジナルの SYSTEM-1 エンジンをどのアレンジでも使いたいとは思わないが、明るくて太い音はトランスや EDM のようなジャンルには確実にハマる。プラグアウトのエミュレーションが本当に進歩なのか確かめたい。
- プラグアウトでの演奏。
- オリジナル機はそこまで詳しくないが、エミュレーションは自分には十分効く。内蔵エンジンの追加機能をエミュレーションと一緒に使えないのは残念。SYSTEM-1 は思っているよりずっと広い音色の幅を持っている。どの音がフィナーレに残るか — 撮影時点ではまだ出来ていないが、80年代のチーズとカウベルと SH-101 まみれになるに決まっている。だってそれが俺のやり方だから。未来の俺、ありがとう。
- フィナーレの楽曲。
- Verdict。Roland はまたやってのけた。プロの現場に耐える音を出せる説得力のあるコンセプトと素晴らしいデザイン。同時に改善の余地もあり、SYSTEM-1 は細かい欠点まみれ。驚くほど客に優しいアップデート方針でかなりの数は潰されたが、限られたポリフォニー、最悪の鍵盤、妙な UI の細部、そして面倒で金のかかるコンピューター連携が残る。
- あまりに Roland らしくて、Uli が「できるから」というだけの理由で全く同じことをやる日を待ってしまう。デジタルのハードウェアシミュレーションは「箱に入ったプラグイン」でしかないという例の議論があるが、今回はそれが公式である。視聴に感謝、また次回。高評価・登録・パトロン、そして次に見たい機材をコメントで。