Roland GAIA SH-01

Bad Gear - Roland GAIA SH-01

この回の結論

デジタルシンセを買うなら SH-01 は第一候補にはならない。もっと安くてもっと個性のある選択肢があるし、GAIA は今も新品で買えるのに古臭くて未完成に見える。オシレーターを巡る論争が気にならない人でも、Roland のマーケティング戦略は信頼を誘うものではなく、「詐欺だ」と感じる人の気持ちは分かる。ただし教材としては優秀で、基本的な減算合成の要素が全部きれいに並んでいてレイヤリングの勉強にはなる。これほど使いやすい機械が、実際にレコードに入れたいと思う音をこれほど作りにくいというのは皮肉だ。

何を喋っているか

  1. 番組の口上。今日の相手は Roland ——「機材界のアルファでありオメガ」「アイコンと珍品の両方の実家」、良いもの・悪いもの・醜いものの間を行ったり来たりしながら、このチャンネルを何百年も食わせてくれる止まらない存在。
  2. 扱うのは 2010年の GAIA SH-01。機能てんこ盛りのシンセ鍵盤で寝室スタジオの主役。「存在意義がこの番組に出ることだったとしか思えない見た目の楽器」。しかも表面の下にはもっと闇の深い、もっと分からん平行世界が潜んでいる。
  3. 一見するとチェック項目を片っ端から埋めていく。ホームインスペクターがジャクソン・ポロックになったみたいなチェックの入れっぷり。白黒のデザインは Green Lantern カラーの AIRA シリーズへの見事な対抗策。1ノブ1機能 (ほぼ)、キーボーディストが喜ぶフルサイズ鍵盤、そして噂に反してこの鍵盤はちゃんとベロシティ対応。
  4. 中身は独立した3基のシンセエンジン。Roland の名物サウンドを現代的に焼き直せる —— 骨のように乾いたベース、夢見心地のエレピ、生意気なリードシンセ、動きのあるポリ、映画的なパッド。各エンジンにオシレーターが1基ずつ。
  5. 波形は基本波形、PWM、ノイズ、そして後で話すことになる問題のスーパーソウ。エンジン同士の絡みはシンクとリングモジュレーションだけ。
  6. フィルターには驚かされた。非常に多芸で、90年代デジタル機の悪名高い「頭にアイスピック」レゾナンスによる脳フリーズにはならない。LFO は1基でピッチ・フィルター・ボリュームに送れ、フェードタイムが便利。
  7. モジュレーション周り。アンプ、カットオフ、ピッチにそれぞれ専用エンベロープがある。スライダーの操作感も気に入っている。
  8. エンジンは1基・2基・3基まとめて選んで編集でき、設定のコピペも可能。だが MIDI でエンジンを個別にトリガーできず、スプリット機能もない。FX セクションは全エンジンのミックスにしかかけられず、もっと複雑なルーティングが欲しかった。
  9. 装備の点呼。80年代っぽいモジュレーション系エフェクト、90年代の D-Beam、モノ+ポルタメント、64パターンとホールボタン付きアルペジエーター、8小節×8パターン保存できるフレーズレコーダー。
  10. センターキャンセル付きの外部入力もある。「俺のやり過ぎなヨーロッパ訛り抜きで Bad Gear を聴きたい人には便利」。ただしミニジャック入力は今の目で見ると厳しい。V-LINK を使ったことがある人はコメントを。
  11. ここから暗い面。バーチャルアナログとして売られているのに、実はサンプルベースの音色が入っている。フロントパネルから選べるのが8つあり、無難な音から妙なボーカルサンプルまで。
  12. さらに MIDI 経由でしかアクセスできない General MIDI 音源が丸ごと入っている。それでいて完全な GM 互換ではない —— 1チャンネルは常にメインのシンセに取られているからだ。
  13. 穴をもっと深く掘ると、GAIA は VA ではなく完全にサンプルベースの楽器ではないかという有力な証拠がある。自分で再現を試みたら、スーパーソウ波形の中に互いに打ち消し合う完璧なループを見つけてしまった。これは怪しいどころの話ではない
  14. オーディオインターフェース機能、電池駆動、USB サムドライブへのバックアップ、そして予想外の MIDI スルーまで搭載。SH-01 のフロア展示機を貸してくれた Klangfarbe に感謝 —— すでにちょっと埃をかぶっていたので、断れないオファーを出してくれるはず
  15. 豆知識 —— 新品 GAIA の値段で、先週やった Moog DFAM と1ヶ月分のインスタントラーメンが買える。SH-01 は分かりやすいシンセで、どこを切っても Roland。だがマーケティング部門は今回ちょっとやり過ぎたのでは。今回のイントロ曲でこのシンセと GM ドラムはもう聴いてもらったが、まだ納得していない。ジャムで多芸さを試す。
  16. 1本目のジャムの評価。予想より上手くいった。単体の音は正直あまり好きになれなかったが、アレンジの中では機能した。ただ GM 音源が MIDI チャンネルを塞ぐせいでセットアップへの組み込みは楽ではない。次はサンプルベースの音を掘る。
  17. Roland が GM セットをこしらえられるのは周知の事実だが、MIDI でいじってやると意外に表情豊かな音があるのには驚いた。ドラムはあまり好きではない。SH-01 が Jupiter-8 でないのは確かだが、そのモダンでやや デジタルな音を武器にできるかを、シンフォニックなデジタル・ファンクで試す。
  18. 総括 (Verdict)。デジタルシンセを買うなら第一候補にはならない。もっと安くて個性のある機種がある。GAIA はまだ新品で買えるのに古臭く、未完成に見える。オシレーター論争を気にしない人でも、Roland のマーケティング戦略は信頼を誘わない。「詐欺だ」と感じる人の気持ちは分かる
  19. 同時に、教材としては優秀。基本的な減算合成の要素が全部きれいに並んでいて、レイヤリングの勉強になる。これほど使いやすい機械が、レコードに入れたいと思える音をこれほど作りにくいというのは皮肉だ。最後はいつもの like / subscribe / patron と、次に見たい機材のリクエスト募集。