この回の結論
Quasimidi には敬意しかない。Roland・Yamaha・KORG というゴリアテに、革新的で非常にドイツ的な電子楽器で食らいついた90年代テクノ界のダビデだ。だが次世代級の機能、良いドラム音、説得力のあるコンセプトがあってなお、「あともう少し人手があれば完成度の高い製品になっていたはず」という感覚が拭えない。なにしろ Roland は MC-303 のディテールを一つ残らず完璧に仕上げてみせた会社なのだから。
何を喋っているか
- 「世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組、Bad Gear へようこそ」。1996年はグルーヴボックスの年だった。
- この呼び名で正式に売られた最初の機材 Roland MC-303 が老若男女の注目を集め、Terrence Dixon 相手に「我々にはもったいない」と平伏していた頃、ドイツの革新者 Quasimidi はもっと専門特化した答えを出した。それが Rave-O-Lution 309。モノシンセ部付きのこのドラムマシンが完全にテクノ勢狙いなのは見りゃ分かる。Quasimidi は数年前からダンス系楽器に舵を切っていた。
- Quasar・Raven・TechnoX で培った独自の機能とサウンドライブラリの蓄積があった。ただ、当時のグルーヴボックスという概念自体まだ黎明期で、90年代半ばのダンスフロア用サンプルとプリセットが「ワインのように熟成した」のは言うまでもない。
- 一見すると 309 は条件を全部満たしている。ツマミは潤沢、TR 系シーケンサー、整理されたフロントパネル。そして突然の記憶喪失に襲われても、パネルを見れば基本波形の形を確認できる。ドラム部はほぼサンプルベースで4パート構成。
- 素の状態でキック26、スネア25、ハイハット7、パーカッション128種を搭載。
- パーカッションは12音ずつ最大10キットに組める。シンセ部はさらに28音色で、これは Waldorf 系のモデルがベースだと言われている。
- エンジンはレゾナントフィルター、VCA にもルーティングできるフィルター ADSR、LFO という構成。深い音作りはメニュー潜り必須。ドラム音にもシンセパラメータが用意されている。
- さらに各ボイスにプリプログラム済みパッチを順に送れるノブが付いている。「これは他の機材にも付けてほしい」。各ボイスは「モチーフ」と呼ばれる単位で鳴らす。最大8小節のモチーフ5本を、
- 組み合わせて1パターン、8パターンで1ソング。ソングにはさらにオートメーションを持たせられる。追加モチーフやフィルは専用のループトラックに放り込める。パターン作成はリアルタイムとステップの両方。そしてここで、シーケンサー技術がこの25年でいかに進歩したかを思い知らされる。
- ステップモードに入る/出る、編集中に楽器を切り替える——それだけでシーケンサーのタイミングが完全に崩壊する。既存パターンの長さは変更不可。シンセパートのステップ編集は確定申告の書類仕事みたいな気分。そして最大の問題は——言うのも恥ずかしいが、
- Moog に誓って、作ったものを確実に保存する方法が分からなかった。追い打ちに、309 はパターンを切り替えた瞬間に未保存の変更を容赦なく全部捨てるタイプの機械だ。ただし内蔵 FX はしっかりした90年代の質。マスター EQ もあり、「Overblast」を使えば
- トラックがカーオーディオ仕様に仕上がる。そしてマニュアルはひどい。ドイツ語ネイティブでもひどい。本体は拡張すべきで、この個体はドラムと シンセの拡張入り。波形が増え、機能も列挙しきれないほど増える。ただしシンセのマルチティンバー動作はオーディオ入出力拡張も入れないと有効にならない。309 は——お察しの通り——希少で高価。ウィーンのハードテック界の伝説にして
- Roland MC-707 の達人、The Herbman が貸してくれた。309 は電子音楽の作り方を変えようとした野心的な試みだった。90年代の小さな会社が老舗の巨人たちを出し抜けたのか。冒頭のイントロ曲がすでに 309。この番組の基準で見てさえ生々しくデジタル。
- 「何をやってるのか自分でも分からない顔」でのジャム。
- 良い知らせ: 309 はドラムマシンとしては優秀。悪い知らせはもう察しがつくだろう。シンセ部は愛用の Quasimidi Sirius のものとよく似ているはずなのに、気に入る波形とフィルター設定がなかなか見つからない。
- パーカッションのライブラリとドラムのいじり甲斐は良い。次のラウンドでは Overblast を抑えめにして、コンプで全体を締め、シンセを足す。
- Overblast はドラムには効くが、シンセ部は切った方がバランスが良い。それでもシンセは大抵の用途で第一候補にはならない。オーディオ拡張は入手困難になる一方で、
- 全部の音をステレオ出力1系統に押し込むのは本気で足枷。DAW に繋いでの一曲は「人生は130 BPM から始まる」熱くて汗まみれの changa tuki ミームファンク。
- Verdict。Quasimidi には敬意しかない。Roland・Yamaha・KORG のゴリアテに、革新的で非常にドイツ的な楽器で対抗した90年代テクノ界のダビデだった。しかし次世代級の機能、良いドラム、
- 納得のいくコンセプトがあってなお、もう少し人手があればもっと洗練された製品になっていたはず、という感覚が拭えない。なにしろ Roland は MC-303 のディテールを一つ残らず完璧に仕上げた会社なのだから。
- 高評価・登録・Patreon支援と、見たい機材のコメントを募る。恒例の月例ボコーダー・シャウトアウトへ。Tier 4 から開始。
- Tier 5・6。しばらく出番のなかった Roland VT-3 ボイストランスフォーマー、マイクは Neumann KMS 104。
- そのプロセッサをさらに、Bad Gear 的に最高の資格を持つギター用エフェクター2台で処理している。左が Zoom 505、右がオリジナルの Line 6 POD。「こういうのをもっと番組で見たいかコメントで教えてくれ」。
- 支援への感謝と、また来月。