この回の結論
コンパクトで軽く、機能が詰まっていて、1台で曲を完結させるのにちょうどいい道具が揃っている。ReBirth 好きには理屈の上では理想の機材。ただ、カタカタした操作感は素早いつまみ回しの興を削ぐし、同じ値段なら Roland AIRA Compact か Behringer のアナログ機を組み合わせた方が同等以上かもしれない。手頃さを守る姿勢は好ましいが、「金属筐体に木のサイドとまともなノブと鍵盤を付けて、がっつり高く売ってくれ」。
何を喋っているか
- 「世界で最も嫌われているオーディオツールの番組、Bad Gear へようこそ」。出来が悪いからだけでなく、自分のとても個人的な(でもそこまで珍しくない)好みに合わせて仕立てられたかのような、この番組のために作られたとしか思えない機材がある。
- 今日は Sonicware deconstruct MINIMAL。「信じてほしい、これは狙い撃ちされている」。見た目からして全部の条件を満たしている。ミニマルなグルーヴボックスで、どう見ても Propellerhead の ReBirth に影響されている。中身は 303 系のモノシンセ1台だけ。
- それにマテル(おもちゃメーカー)製みたいな見た目のドラムマシン。キックとスネアにはドラムシンセのモデルがあり、それ以外のモノのドラムはサンプル再生トラックで鳴らす。
- パーカッション、音程のある素材、そしてステレオのループ用トラックが1本。「うわ、まんま俺じゃん」。LIVEN シリーズの兄弟機と違ってサンプル管理の制限がゆるくなり、ついに USB 端子が付いた。ただし USB 給電では動かない。
- 実際のサンプリングと USB オーディオはちゃんと動く。シンセ部には、定番のアシッド系モデル用の専用 UI と、もっと本格的なマルチオシレーターのエンジンがある。
- トランシーバーみたいな小さいノブで、ドラムの音は TR 系ドラムシンセでもサンプル再生でも同じように調整できる。分かりやすいとは言えないが、控えめなディスプレイが助けになる。ベース部の追加パラメータもここ。ディレイとリバーブも足せる。
- そして、これを全部鳴らすのが意外なほど強力なステップシーケンサー。バリエーションは最大4つで自由に選べる。16ステップはそれぞれ別の速さで回せて、Roland TR のノリへのオマージュもあり、ポリメーターも簡単に組める。
- Elektron 式のパラメーターロックとリトリガーは2026年なら当然だが、ちゃんと作り込まれている。アクセントトラックとベロシティのランダム化が気に入った。ベースのドライブに加えてマスターエフェクトもあり、地元の場末のバーで DJ ブースから叩き出されるようなフェイザーも選べる。Roland の Scatter みたいなフィルも一発で出せる。
- さらに歪みとフィルター、お約束のサイドチェインコンプ。ドラム用のアイソレーター EQ は大歓迎。一方で鍵盤と内蔵スピーカーは相変わらず盛大にひどい。5ピン MIDI が無いのは本当に惜しく、個別出力が無いのも気になる。
- 単3電池でも動く。現時点で「箱に入った ReBirth」に一番近い機材。ミニマルさは創造性を生むのか、それとも削りすぎたのか。1本目のジャムは TR-707 のサンプルも読み込まず、ドラムマシンとシンセとマニュアルへの完全な無知だけでどこまで行けるか試す。
- 1本目のジャム。
- 「1998年の気配が強い」。シンセトラックがもう1本欲しいし、ベースのサンプルの場所もまだ分かっていない。でもドラムモデルはパンチがあり、音のセレクトもセンスがいい。303 の再現は本物に忠実とは言えないが、十分使える。次は USB でサンプルを入れ、シンセを足して ReBirth を完全再現する。
- 2本目のジャム。
- 思ったより楽しかった。USB が付いてもサンプルの取り込みは古臭いままで、リバーブは他のエフェクトに見劣りする。それでも UI は気前がよく、癖はあるが作業の流れはすっきりしている。個別出力が無いので本格的な制作には使いにくい。最後は PC と同期し、サンプラー側にのめり込みすぎて 303 を後から無理やりねじ込む羽目になったらどうなるか試す。
- 「テキサスでついさっき禁止された何か」のためのBGMを作る3本目のジャム。
- 結論。俺の ReBirth 狂いを知っている人なら、この機材は少なくとも理屈の上では理想の1台だと思うだろう。小さくて軽く、機能が詰まっていて、扱いやすさと幅の広さが両立している。1台で曲を完結させるのにちょうどいい道具が揃っている。
- とはいえ、カタカタした筐体はつまみを素早くいじる時にしらける。同じくらいの値段なら、Roland AIRA Compact や Uli(Behringer)の選りすぐりのアナログ機を組み合わせた方が同等以上の仕事をするかもしれない。手頃さを大事にする Sonicware の姿勢は好ましい。
- でも「これを全部金属の筐体に入れて、木のサイドと洒落たノブとまともな鍵盤を付けて、がっつり高く売ってくれてもいい」。