この回の結論
Clavia Nord Lead 2 は現場に持ち出せるハンズオンなシンセで、プロ仕様の機能と非常にはっきりした個性を持っている。確かにもっとオーガニックに鳴る楽器は他にあるし、レゾナンスを取るか低音を取るかは自分で決めるしかない。現代のシンセとしては少し埃っぽい音だが、全能なプラグインの化け物と激安 Minimoog クローンだらけの時代にあっては、それは必ずしも欠点ではない。あの時代のデジタル楽器としては驚くほど「大人」で、反応が良く、ほぼ安定していて、多少の乱暴にも耐える。
何を喋っているか
- 世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。北欧諸国はどうもシンセに優しいらしい。ネット上の有名シンセ人格の生息地であるだけでなく、主要な音楽機材メーカーの本拠地もこの辺りに集まっている。
- 今日は Clavia Nord Lead 2 の話。1997年のこのクラシックは、最初期の、というかおそらく世界初のバーチャルアナログシンセである初代 Nord Lead の後継機。1995年の初代はライバルらしいライバルもいなかったが、2 は Yamaha、Roland、Quasimidi、Access といった連中の楽器と真正面から張り合う羽目になった。90年代の連中は手加減というものを知らなかったらしい。
- パッと見の Nord Lead 2 は、エレガントな北欧的チェック項目、そして何よりも「赤い」チェック項目を軒並み満たしている。不滅のオーラを放つ金属筐体、本物のアナログに期待する全パラメータが並んだ実用的なUI。Clavia は親切にも、そこまでアナログではない機能のちょっとした早見表をフロントパネルに印刷してくれている。
- やや過剰デザインの石みたいなモッドホイールと木のピッチ棒は、初代の登場から30年近く経った今でもカッコいい。2 はポリフォニーが16ボイスに増え、しかも初代のような高価なボイス拡張なしでそれを達成している。カーテンの裏のデジタル男を無視すれば、90年代のアナログ愛好家にとって学習コストはほぼゼロだった。
- クリアで見通しの良いオシレーター2基。カラフルなノイズ、幅広いシンクサウンドのパレット、リングモジュレーション。
- FM は荒々しいのに音楽的。アンプとフィルターのエンベロープはプラッキーで打撃感のある音なら何でも得意。専用のモジュレーションエンベロープもある。そしてシンセエンジンで一番賛否が割れるのがフィルター。
- そう、レゾナンスを上げると、大事にしていた低域が多かれ少なかれ即座に消し飛ぶ。とはいえ5つのフィルターモードのおかげで外科手術みたいな精度の音作りはできる。万人向けでないのは確か。意外だったのはノッチ+ローパスの組み合わせで、レゾナンスを高めに振っても周波数スペクトルの下半身はほぼ無傷だった。
- スタックノートのトラブルが頻発したので、いまいち冴えないディストーションよりも Shift + Distortion のパニックモードのほうを多用する羽目になった。LFO は扱いやすく、エコーモードとシンプルなアルペジエーターも良い。
- ユニゾンとポルタメントも問題なし。パッチ管理はあまり上手く歳を取れなかった。4つのプログラムスロットが指先にあるのは確かに良いし、4パートのマルチティンバーでもある。だがプログラム40より先は全部リードオンリー、そして4スロット全部の設定=いわゆるパフォーマンスの保存は……
- ……SRAM ベースの電池バックアップ付き PCMCIA カードを使わないと不可能。レイヤーとスプリットも組めるし、モーフは2つの設定の間をまあモーフしてくれる。
- モーフの素晴らしさは個別の4アウトと同じくらい。鍵盤についてはネットで散々な悪口を読んだが、自分は特に不満はなかった。アフタータッチは非搭載、ただし MIDI 経由で受けることはできる。パーカッションキットは驚くほど新鮮な音で、しかもよく弄れる。MIDI 実装はほぼ文句なし。エフェクトは無い。
- 極上コンディションの Nord Lead 2 を貸してくれた友人 Alfred Oslo に感謝。古い Nord は決して安くない。バーチャルアナログは90年代半ばから遥かに進歩したが、Nord Lead 2 は今の music tech の風景でまだ通用するのか。そして氷のように冷たいのか。今日のイントロ曲でもう鳴っている。本来のホームグラウンドには思えないが、なぜか成立している。
- このシンセには「音が前に出すぎる」という評判がある。だからこそもっと控えめな音も出せるのかを知りたい。
- いい感じ。この音を「温かい」と呼ぶかは微妙だが、チルなアレンジにちゃんと奥行きを持って馴染む。特にパーカッションのパッチが気に入った。次のジャムではそれをコンプで締めて、他の音はドライのままでいく。
- アナログの Juno を売り払ってこれを買う奴はいないだろうが、この攻撃的な解釈は好きだ。
- そして FM がまた強烈に刺さる。Clavia のデジタルドラム畑での経験がはっきり出ている。90年代のバーチャルアナログ台頭はジャンルも国も問わずダンスミュージックを押し上げた。その精神を、この極冠が溶けるスオミ風サイテックトランスで呼び戻せるか試す。
- ジャム演奏。
- 結論。Clavia Nord Lead 2 は現場に持ち出せるハンズオンなシンセで、プロ仕様の機能と非常にはっきりした個性がある。もっとオーガニックに鳴る楽器は他にあるし、レゾナンスを取るか低音を取るかは自分で決めろ。現代のシンセとしては少し埃っぽい音だが、全能なプラグインの化け物と激安 Minimoog クローンだらけの時代にあっては必ずしも欠点ではない。
- さらに面白いのは、あの時代のデジタル楽器としては Nord Lead がどれだけ「大人」かということ。反応が良く、ほぼ安定していて、多少の乱暴にも耐える。だが一番驚くべきは、未来の我々が鍵盤の上に専用スペースを必要とすると Clavia が予見していたことだ(何を置くスペースかは字幕が崩れていて聞き取れず不明)。見てくれてありがとう、また次回。