ヴィンテージゲーマーのシンセ?

Bad Gear - Roland Sound Canvas SC-55 - Vintage Gamers Synth???

この回の結論

Roland Sound Canvas SC-55 は、音楽制作にも、パソコンなしで MIDI ファイルを聴くのにも使えるスイスアーミーナイフ。コンシューマ向けだけあって当時の他のサンプルベース機より扱いは楽だが、たとえば Roland の D シリーズよりは制限が多い。標準化された MIDI 再生と 80年代末のカサカサしたサンプルは今やアプリにも DAW にもプラグインにも入っていて、必要かどうかの判断は余計に難しい。だが「必要じゃなくても欲しい」と認めていいと思う。ちゃんとしたピアノ、Prodigy 風のストリングス、いい 808 キット、効果音一式をパソコンなしで出したいなら旧型 Sound Canvas を買え。当時買えなかった 90年代キッズが、DOOM の DOSBox セッションのために究極の正統派 MIDI 音源を手に入れる口実としても完璧。

何を喋っているか

  1. 世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組 Bad Gear へようこそ。Patreon をやっている、専用の動画も出す、宣伝終わり。今日は非常に特別な機材の話。
  2. Roland Sound Canvas SC-55。この1991年の何でも屋が狙っていたのは、Sound on Sound が当時うまい言い方をした「まだ定義されていないマルチメディア市場」— コンピュータと映像と音声が合流して娯楽・教育・情報伝達の全く新しい形を生むとされた領域。要するにコンピュータゲームと、趣味の MIDI ファイル再生と、カラオケである。
  3. SC-55 は Roland 初の Sound Canvas だが、この急成長するニッチを最初に押さえた機材ではない。アマチュア音楽家向けの楽器として設計された MT-32 が、ハイエンドなゲームサウンドトラック再生の事実上の標準になっていた。規格といえば SC-55 は General MIDI を初搭載した機体でもある — シンセ野郎が「素人向けの安っぽい定番音」と結びつけがちなあの用語だ。
  4. 一方レトロゲーマーは SC-55 を愛している。Descent、Monkey Island 2、Sam & Max Hit the Road のサウンドトラックを別次元に引き上げるからだけでなく、Bobby Prince が DOOM II の音楽を書いたときの主力作曲ツールがこれだったから。で、DOOM は動くのか。見た目は90年代初頭のハイファイタワーに収めるには小さすぎるが、押さえるべき点は全部押さえている。メーターブリッジ付きのデカいオレンジのディスプレイ。
  5. ちゃんと意味の通る配置のボタン群、そして MIDI 入力が2つ。RCA とミニジャックの端子については文句を言わないでおく。32kHz/16bit の音色が317、Roland の RS-PCM と LA シンセシス技術ベースで、前述の General MIDI 規格に沿って並んでいる。ただし GM ロゴなしの初期生産ロットは規格に完全準拠していない。
  6. 全音色を延々と鳴らして拷問するつもりはないが、ピアノ、ベース、オーケストラ音はさっと聴いておく。そして Rise of the Triad のサウンドトラックを鳴らす。
  7. 音のパンが振れて、リバーブとコーラスが足せる。さらに半ば隠れたメニューがあり、フィルター・ADSR エンベロープ・ビブラートといった合成パラメータをいじれる。Roland は赤外線リモコンも同梱していた — 使う喜びを味わったことは一度もないが。このリモコンは MIDI ファイルプレイヤー兼シーケンサー Roland Sound Brush の操作も兼ねていた。
  8. 16パートマルチティンバーで、パーシャルベースのロンプラーエンジンは24ボイスのポリフォニーを「あっ」という間に食い尽くす。先週の Yamaha RX15 と同じく、この個体は友人 Wendy から借りたもの。相場は完全に暴走してはいないが、ミント品でない個体にその金額を払うかは微妙。万能そうな機材なのに、なぜこれほど嫌う人間がいるのか。
  9. 「ヌルモデムケーブルで一対一デスマッチ中に IDDQD と IDKFA を打ち込んだお前みたいに」嫌われている。イントロ曲でもう SC-55 の音は聴いている。当時この連中、あのスネアを相当誇りに思っていたに違いない。次は Legowelt 公認の TR-808 キットで、もう少し繊細な音を聴いてみたい。
  10. 悪くない。この音は間違いなく90年代のディズニー映画に耐える品質だ。
  11. フロントパネルでパラメータをいじれるのは見たとおりだが、内蔵の音作りツールは過激な部類ではない。「置いて忘れる」楽器としては理解できる判断。ただし SysEx の領域まで踏み込まずに MIDI でシンセエンジンのパラメータをいじる方法は見つからなかった。基本的な内蔵ミキサー機能は標準の MIDI コントローラーで操作できる。もっと露骨なエフェクトのためにギターペダルとフェーダーボックスを足して混ぜていく。
  12. 80年代から電話だ、サウンドスペックを返せと言っている。
  13. MIDI 制御はきっちりしているが、音は当たり外れがある。プリセット機ならよくあること。この番組の常連なら知っているとおり、俺の友人たちは素晴らしい人間であるだけでなく、膨大な機材も溜め込んでいる。育ち続ける Bad Gear サンプルライブラリを製作中で、そのために親友にして Bad Gear の共犯者 Raimond から上等な Neve のランチボックスを借りてきた。オリジナルの Sound Canvas から、この高級チャンネルストリップでどれだけプロっぽい艶が出せるか知りたい。
  14. ステロイドを打った DOS ゲームのサウンドトラックみたいなリキッドファンク、メロディックなドラムンベースのトラックで実演。
  15. Verdict。SC-55 は音楽制作にも、パソコンなしで MIDI ファイルを聴くのにも使えるスイスアーミーナイフ。コンシューマ狙いなので当時の他のサンプルベース楽器より扱いやすいが、Roland の D シリーズなどと比べれば制限も多い。
  16. SC-55 はあくまで始まりにすぎなかったことも忘れてはいけない — Sound Canvas 系の製品は目が眩むほどの数があり、Sound Canvas VA もあり、KORG や Yamaha など他社の類似機も山ほどある。ある電子楽器が必要かどうかは常に判断が難しいが、この機材の場合はさらに難しい。80年代末のカサカサしたサンプルによる標準 MIDI 再生は、もうアプリにも DAW にもプラグインにも組み込まれているからだ。
  17. 必要ではなくても欲しいと認めていい、と俺は言いたい。ちゃんとしたピアノ、Prodigy 風のストリングス、いい 808 キット、効果音一式をパソコンなしで出したいなら、旧型の Sound Canvas を買え。当時買えなかった90年代キッズが、DOOM の DOSBox セッション用に究極の正統派 MIDI 音源をどうしても必要とする口実としても完璧。
  18. 高評価・チャンネル登録・Patreon 支援と、次に取り上げてほしい機材のコメントをよろしく。