この回の結論
modwave は機能満載のウェーブテーブル・シンセで、本来 DAW やモジュラーでしかできない音作りの手法を数多く再現できる。とはいえ「箱入り Serum」ではない。ほとんど滑稽なことにプラグインかエディタ無しでは、Steve Duda の傑作より遥かに操作しづらいし、この怪しいビルドクオリティを思えば Serum のライセンスを買う方が長持ちする投資かもしれない。そして KORG のウェーブテーブル解釈は、EDM のストラトキャスターたる Serum の精度・パンチ・前に出る獰猛さには到底かなわない。おかしな話だが、俺のような老いたシンセオタクはむしろその方が好きなのだ。
何を喋っているか
- 「世界で最も嫌われているオーディオ機材の番組、Bad Gear へようこそ」。シンセ好きにとって今はなんという時代か。時代を超えた名機の超激安クローンが並び、最もマイナーな音源方式さえ魂ひとつ分の値段で手に入る。
- サンプラーは今や1991年当時とほぼ同じくらいパワフルになった。その一方で、この美しい楽器たちは実際の music production ではほぼ無意味になり、Serum の海賊版が入ったゲーミングPCに取って代わられた。今日の題材は modwave。2021年に登場したこのウェーブテーブル機は、その業界標準プラグインの強さをハードウェアの世界に持ち込もうという KORG の試みに見える。
- つまりあり得る限り最も暗い並行世界かもしれない。一見して modwave は全部持っていってしまう。KORG は真新しいラック型のシンセボックスを出したばかりで、生産終了した最初の2バージョンの安っぽい鍵盤は誰も惜しまない。ただし不気味なほど軽い筐体に、見た目は安いがグラつきはしないノブが付いている。
- お馴染みのメニュー潜り地獄は相変わらず物足りない。そして Kaoss コントローラーが再び流行りに戻ってきた。シーケンスとモジュレーションの機能は無数にある。
- その辺りは後で触れる兄弟機 wavestate のものとよく似ている。それを別にすれば modwave は驚くほど素直だ。メインのオシレーターが2基、控えめな量のウェーブテーブルを備え、3つ目の音源がサブ的な音や各種ノイズのスペクトラムを吐き出す。
- Serum 互換のウェーブテーブルを自分で読み込める。各オシレーターは同時に2つのウェーブテーブルを保持でき、それをミックスして多彩なモーフィング機能で捏ね回せる。FM とリングモジュレーションも入っている。
- ヴィンテージ KORG の信者は、ウェーブテーブルではない DW-8000 風のサンプルを気に入るはず。フィルター部が好みで、一般的なタイプからアナログ風モデルまで揃っている。エンベロープはかなり細かく詰められるし、5基の LFO も同様。
- 4基のエフェクトエンジンで音を飾り付けるといい。ただしここでこれから来るメニュー潜りの前菜を味わうことになる。その件だが、shift ボタンの容赦ない多用に加え、このシンセを唯一無二にしている機能の多くは、果てしなく続く浅い階層のメニューからしか触れない。しかも白黒だ。
- そう、バイティンバー構成の performance を管理し、ワイルドカードの mod ノブを割り当て、軍用グレードのモジュレーション・マトリクスを操作するのは、なかなか気後れする作業だ。
- まだ set list モードにいたせいでパッチをいくつか壊した後で気づくのだが、本番はシーケンサーだ。音程のパターン用、リズムのバリエーション用に独立したレーンがあり、複雑なモジュレーションループで中世の拷問めいた真似ができる。
- 馬鹿げたほど強力な shape ステップは見事だが、いつも楽しいとは限らない。カオス機能はパラメーターと LFO 的なモジュレーションを手で触れるだけでなく、パッチにドラマを足すためのステロイド漬けの Pong 物理演算まで持ち込んでくる。
- 物理的な UI で音を作るのは骨が折れるので、つい専用エディタに頼りたくなる。modwave native プラグインが DAW 内でまったく同じシンセエンジンを提供していることを思えば、これは少し馬鹿げた話だ。あるいは randomize を押して幸運を祈るという手もある。MK2 鍵盤版と同じくモジュール版は 60 ボイスで、初代の 32 ステレオボイスより多い。
- 安っぽい手触りは多くの人にとって決定打になるだろう。このプラスチックの装置をツアーに連れて行くのは俺なら躊躇する。そして知る限り、金回りのいいシンセ愛好家向けの modwave SE は存在しない。フロア展示機を貸してくれた Klangfarbe に感謝。兄弟の opsix と wavestate と比べると、modwave は KORG のプラスチック製プラグインホスト一家で最も地味な一員だろう。
- では箱入り Serum なのか。実はもう今日のイントロ曲で聴いている。いや、エフェクトを盛ったのは何かを誤魔化すためじゃない。プリセットのひとつからモジュレーションを拝借し、ウェーブテーブル以外のサンプルを掘り、締めに冷たいパッドを足す。
- 悪くない。モジュレーション周りは時に手に余るが、扱いやすい FX セクションが全体をまとめてくれるので必須。生々しい Hydrasynth 系のパッチにあるような深みと繊細さは物足りないかもしれない。
- ウェーブテーブル・シンセといえば重いベースと変化し続けるパッド。mod ノブの筋トレの時間だ。
- ソフト勢と比べると、このシンセ全体の音色はより暖かくまろやかと表現したい。批判的な人は「暗くてスポンジみたいだ」と言うだろう。モジュレーションの選択肢が複雑なせいで、ゼロからのパッチ作りは時間を食う。その手間に見合うのかをスタジオで確かめたい。レトロなサウンドのタペストリーを敷いて、
- 精神状態の自己投薬治療を行う。
- Verdict。modwave は機能満載のウェーブテーブル・シンセで、本来 DAW やモジュラーでしかできない音作りの手法を数多く再現できる。とはいえ箱入り Serum ではない。ほとんど滑稽なことにプラグインかエディタ無しでは、Steve Duda の傑作より遥かに操作しづらい。この怪しいビルドクオリティを思えば、Serum のライセンスの方が長持ちする投資かもしれない。
- そして KORG のウェーブテーブル解釈は、EDM のストラトキャスターたる Serum の精度・パンチ・前に出る獰猛さには到底かなわない。おかしな話だが、俺のような老いたシンセオタクはむしろその方が好きなのだ。視聴に感謝、また次回。like・subscribe・patron 登録と、次に見たい機材のコメントをどうぞ。