Roland JP-8080

Bad Gear - Roland JP-8080

この回の結論

JP-8080 を使っている間、3つの段階を通った。まずアイコニックな音による初期の脳汁ラッシュ、次にクセと奇妙な仕様に実際ぶつかった時のかなりの苛立ち、最後に実際のミックスに置いた時の安堵。Roland 最後の「デカくて革新的」な楽器の一つであることは確かだが、全体の音にはどこかプラスチックっぽいツヤがある。「Roland が本気でダメになり始めたのはここから」の線を90年代のどこに引くかは人それぞれ。好むと好まざるとにかかわらず、JP-8080 をヴィンテージ・ダンス以外の文脈で使うのは驚くほど簡単だ。ただ、俺がやりたくないだけで。

何を喋っているか

  1. 世界一嫌われてる音響機材の番組 Bad Gear へようこそ。特定のスタイルと同義になってしまったシンセがある。303 はアシッドの音、DX7 は80年代ヒットの材料。そしてカフェインレスの無脂肪アーモンドマキアートと OP-1 の相性が良いのも周知の事実。
  2. 今日は 1998年の Roland JP-8080。このバーチャルアナログの先駆けとキーボード版の兄弟機が90年代末のダンスミュージック全般、特にトランスにとって何なのかというと、ゴードン・ラムゼイにとっての「人を罵倒すること」に等しい。核にあるのが Supersaw 波形。明るくてブザブザして人工的な音として愛され、まったく同じ理由で憎まれてもいる。
  3. パッと見、8080 は「ここはもう別世界だ」系のチェック項目を全部埋めている。フルサイズのノブ30個、フィルターとエンベロープ用のフェーダー、緊急時には鍵盤代わりに使えるボタン、そして5ピン MIDI 入力が2つ。
  4. 先に出たキーボード版と比べると、このラック/デスクトップ機はアップグレードと言っていい。フルメタル筐体、ポリフォニーは8ボイスではなく10ボイス。エンジンの土台はオシレーター2基で、片方には悪名高い Supersaw が載る。
  5. Supersaw だけでなく、より一般的な波形も入っている。PWM 付きの矩形波、フィルター済みノイズ、そして心地よくカオスなフィードバックオシレーター。
  6. オシレーター2も同じくフルに弄れて、チューニングレンジが巨大。外部オーディオ入力に差し替えることもできる。リングモジュレーションとクロスモジュレーションがあり、オシレーターのシンクも可能。
  7. フィルターは意外なほど滑らか。レゾナンスはいかにも90年代 VA という感じ。時代を物語るもう一つがエンベロープで、パンチのある設定とクリックの出ない設定を選べる。
  8. フェーダーと専用のピッチエンベロープは気に入っている。LFO 2基のうち1つはモジュレーションホイール担当に寄っている。JP-8080 の音が薄いという不満はかなり読んだ。特にヴィンテージのアナログや同時代の他の VA と比べた時に。ただしシェルビング EQ、ディレイ、モジュレーション系 FX で太らせることはできる。
  9. 「もっと分厚いユニゾンを聴いたことがある」が、ポルタメントとソロ/レガートモードはありがたい。プリセットは膨大で、80年代クラシックのまともな VA 版から、例の90年代レイヴ怪獣まで揃っている。
  10. その間を埋める使えるサウンドも大量にある。アルペジエーターあり、パターンシーケンサーあり。
  11. Roland が KORG の electribe より何年も前にモーションコントロールを実装していたとは正直知らなかった。内蔵メモリに128音色保存でき、パフォーマンスも作れる。レイヤー、スプリット、2パッチの独立 MIDI 制御が可能で、パフォーマンスを弄っても通常バンクには影響しない。いい仕様。
  12. 内蔵スロットを使い切ったら MIDI ダンプでバックアップするか、超レアで高価な5V スマートメディア (最大4MB) を探すか。レアで高価と言えば、状態の良い JP-8080 の価格はもはや現実離れしている。ウィーンの DJ / プロデューサーのレジェンドがわざわざ Bad Ischl まで車を走らせ、友人の Ingo からこのシンセを入手してくれた。二人に感謝。
  13. JP-8080 が90年代末のエレクトロニックミュージックに与えた影響は疑いない。だがそのジャンルの外の音は作れるのか、そしてクセと狂った中古価格は致命傷なのか。今日のイントロ曲でもう JP は鳴っている。すまない、クラシックな Supersaw リードを使う衝動に抗えなかった。最初のジャムは少しトーンダウンして。
  14. 最初のジャム。
  15. これぞ「ザ・90年代 VA トーン」。ただしカチカチ鳴るエンベロープを嫌う人はいるだろうし、マルチティンバー用途にステレオアウトをもう1組欲しかった。ハンズオンなインターフェースの割に、いま鳴らしたパッチは些細な変更にすらあまり良く反応しなかった。実際どこまで弄れるのか知りたい。
  16. ゴムっぽくて深くモジュレーションのかかった音は本当によく機能するし、パッドは苦もなくミックスを抜けてくる。
  17. FX セクションは基本的だが役目は果たす。ここからレトロ・レイヴのノスタルジーに全振り、惑星トランスへの片道切符。深夜のドライブ、レトロゲーム、壮大な宇宙戦闘に最適。
  18. JP-8080 を使っている間、3つの段階を通った。アイコニックな音による初期の脳汁ラッシュ、実際に使った時のクセと奇妙な仕様による相当な苛立ち、そして実際のミックスに置いた時の安堵。
  19. Roland 最後の大きく革新的な楽器の一つではあるが、全体の音にはややプラスチックっぽいツヤがある。「Roland が本気でダメになり始めたのはここから」という線を90年代のどこに引くか次第だ。好き嫌いに関わらず、JP-8080 をヴィンテージ・ダンス以外で使うのは驚くほど簡単。ただ俺がやりたくないだけだ。見てくれてありがとう、また次回。
  20. 高評価・チャンネル登録・patron 登録をよろしく。次に見て聴きたい機材をコメントで教えてくれ。