37を買っとけ?

Bad Gear - Better get the 37???

この回の結論

音的にできることは多くないが、やることは本物の Moog らしい重厚さと気品でやってのける。見た目も良く、机やステージの面積が限られている人には十分アリな選択。ただし使い込むほど兄貴分の広々した UI が恋しくなり、プリセットテンプレートで隠しメニューを回避できるとはいえ、視覚フィードバックの無さと、短くノイジーでアフタータッチも無い鍵盤は多くの人にとって決定打になる。Moog は今や自分自身のカバーバンドなので、このサイズでのベスト盤を期待したいところだが、たぶんまた Radio Shack シンセが来る。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われているオーディオ機材の番組、Bad Gear へようこそ」。10年ほど前、今の inMusic 傘下の Moog ブランドと「もちろん完全に同一の会社」が、テクノ大好きな加齢した禿頭の男たちにとって最高であろうシンセキーボードを出した
  2. 今日扱うのはその弟分 Subsequent 25。最近ディスコンになったアナログモノシンセで、兄貴分を実際のミュージシャンにとって使えるものにしていた機能を全部欠いており、そのおかげで金銭感覚の壊れたネット上のポーザーにとっての夢の楽器になっている。一見して「Moog ボディシェイミング時代の再来」チェック項目を全部埋めている。
  3. Sub Phatty との酷似はさておき、コアエンジンは 37 のものだとされている。太いメインオシレーター2基、波形はシームレスに可変、専用サブオシレーター、ノイズ、そして満足感のある咆哮を上げるハードシンク。
  4. 象徴的な Moog ラダーフィルターはデフォルトで 24dB。他のスロープにも切り替えられるが、その方法は「謎めいている」。後で詳しく見る。multidrive という驚くほど攻撃的なディストーション段も付く。
  5. レゾナンスを上げると、もちろん伝統に則って低音成分が容赦なく殺される。フィルターは見た目きれいに並んだ ADSR エンベロープで変調され、アンプ用にもう1基ある。
  6. モジュレーターの話をすると、LFO が1基しかないのが 37 (2基) との主要な違い。とはいえ滑らかな PWM を作るには十分機能する。フィルターエンベロープのリルートも可能で、モジュレーションホイールを使ったファンキーな運動や、ランダムなピコピコ音も出せる。
  7. 真のシンセ愛好家は「見たまま=そのまま」のパネルモードを使うだろうが、プリセットスロットも16個ある。基本これで全部——マニュアルを開いて、Moog が Subsequent 37 の機能を長々と隠しメニュー構造に埋めていたと知るまでは
  8. Roland が赤面するレベルの隠しメニュー。覚えづらい格ゲーの必殺技コマンドみたいなボタン+鍵盤の同時押しが、6〜18dB の別スロープへの扉を開く。複雑なエンベロープ形状、ノートプライオリティ、LFO レンジ、MIDI 設定もここ。オシレーター2基はパラフォニックに弾ける。
  9. 37 の duo モードに近いが、そのためには不可視メニュー構造という暗黒ダンジョンをさらに探索する必要がある。37 鍵盤版から削られたものは、鍵盤まるまる1オクターブ分、アフタータッチ、多くのハンズオンコントロール、ディスプレイ、アルペジエーター、シーケンサー。
  10. オーディオ・CV・MIDI・電源のサイドパネルは据え置き。エディターはシンセの製品登録が必要。MIDI 実装の充実ぶりは評価する。「最後の1台」を貸してくれた Klangfarber に感謝。小さな鍵盤に大量の古典 Moog トーンを詰め込んだわけだが、小さいものにこそ良いものが詰まっているのか、それとも「substandard 25」がディスコンになったのには理由があるのか。
  11. 今日のイントロ曲で既にこのシンセの音は聴いている。「こいつが出せるとされている、もう一つの音」を1本目のジャムで探せるか確認したい
  12. 悪くない。安っぽいプラスチックのプリセットボタンで隠し機能を掘り出す作業はプレミアム感ゼロだが、Moog らしい定番トーンはほんの数手で出せるし、ハードシンクが幅を持たせてくれる。
  13. デュオフォニックのモードはギミック止まりに感じた。モノシンセの本分に集中して、エピック度を上げるために FX をさらに足す。
  14. 予想以上に楽しかった。ラダーフィルター、またの名をオーディオ回路のシスティーナ礼拝堂をいじるのは至福。リバーブを少し盛りすぎると70年代リードシンセの領域に入る。Moog がケチったのはシーケンサーとアルペジエーターだけではない。
  15. 鍵盤演奏という芸術に対する歩く侮辱である自分ですら、この安っぽい鍵盤には一言ある。ただし DAW に繋いでしまえばそんなことはどうでもいい。「Subzero」——察しの通り鍵盤ゼロ——が出たら即買う。それまでは文字通りにも比喩的にも音の探検をして、いつものメタミームテクノを作る。
  16. Verdict。音的に Subsequent 25 ができることは多くないが、やれることは本物の Moog の重厚さと気品で仕上げてくる
  17. 見た目も良く、スタジオ机やステージの面積が限られている場合には十分アリな選択。ただし使えば使うほど兄貴分の贅沢な UI が恋しくなった。プリセットテンプレートを何個か作れば、この興ざめな「想像上のメニューシステム」は回避できるが、視覚フィードバックの無さと、短くしばしばノイジーでアフタータッチも無い鍵盤は残る。
  18. 多くの人にとってはそこが決定打になるはず。Moog は今や実質的に自分自身のカバーバンドなので、このフォームファクターでのベスト盤を期待したいところだが、どうせまた Radio Shack シンセが来るのだろう。最後は恒例のいいね・登録・Patreon・次に扱ってほしい機材のコメント募集。