この回の結論
microKORG のファンとしては、あれほど似ていてあれほど違うシンセを触れたのが面白かった。ゼロ年代のオリジナルなヒップスター鍵盤である microKORG が最も成功した楽器になった一方、Micron ははるかに深いシンセエンジンの上に立っていて、それが祝福であると同時に呪いでもある。兄貴分の Ion でパッチを作るのはたぶん生産的で最高に楽しいはずだが、Micron でゼロから音を作るには相当な精神力が要る。で、次に俺がやるべき馬鹿なことは何だ — Ion を買うか、それとも無数にいるらしい宇宙billionaireの誰かを「あなたの生き別れの息子です」と言いくるめて Alesis を100万ドルで買収させ、20年前のシンセエンジンで専用グルーヴボックスを作らせるか。すまん、デカくて嵩張るキーボードを置く場所はもう無い。
何を喋っているか
- 世界で最も嫌われているオーディオ機材の番組へようこそ。Alesis には特別な思い入れがある。Bad Gear の記念すべき第1回が Alesis 機材の回だったし、ADAT マルチトラックレコーダーは俺の脱毛の根本原因のひとつだ。
- 今日は Micron。2004年のバーチャルアナログシンセで、その1年前に Alesis が出したデカくて嵩張るキーボード Ion に縮小光線を当てたようなモデル。ビジネス判断としては理解できる。当時は誰もが、実績のある技術をベースにしたコンパクトシンセを欲しがっていた。microKORG のような。
- あるいは数年後の Novation Xio や Roland JD-Xi。「なんかパターンが見えてきたぞ」。一見すると Micron はチェック項目を全部埋めている。頑丈なレゴみたいなプラスチック筐体、最小限のフィジカルコントロール、アフタータッチ無しだが十分使える鍵盤(これがシンセエンジンのUIの一部として機能する)、そして何よりバックライト付きのピッチベンドホイール。
- リアパネルは整理されていて綺麗。オーディオ入力だけでなく MIDI 3点セットが揃っているのも良い。プリセットをめくり始めると — しかもプリセットの数が異常に多い — 下にあるシンセエンジンが相当複雑だと気づく。ベース、リードといった基本は全部ある。
- パッドもある。外部信号の加工もできる。専用シーケンサー付きのドラム音色、アルペジエーター、ポリフォニックのフレーズレコーダー。
- さらにマルチFXが2系統。このシンセ的な豪華さは膨大な数のパラメーターとセットで来るのだが、Alesis はそれを80年代の携帯電話みたいなディスプレイとコーヒーメーカーのUIで操作しろと言ってくる。エンジンは8ボイスポリ、1ボイスあたり3オシレーター。
- アナログドリフト、ユニゾン、シンク、FM、ノイズジェネレーター、リングモジュレーター。
- 超スムーズな分解能を持つフィルターが2基、クラシックなフィルターの各種エミュレーション、ディストーション段、ループ可能なエンベロープ3基、LFO2基、サンプル&ホールドのモジュレーションソース、カスタムモジュレーションカーブ、そして最後に軍用グレードのモジュレーションマトリクス。
- 「多すぎる」。パラメーターは終わりの見えない1本のメニューに一列縦隊で並んでいる。拷問のように聞こえるが、Alesis はいじるのを耐えられるものにする小細工をいくつか入れた。クールではないが、耐えられる。ショートカットでエンジンの各セクションに飛べるし、ノブへのパラメーター割り当ては完璧に機能する。
- パラメーターの並びはだいたい Micron の信号経路に沿っている。この機能てんこ盛りぶりを考えれば、マルチティンバーなのも驚きではない。シーケンスをその場で止める専用ボタンもある。マニュアルは優秀。Ion のパッチを読み込めるし、スキルレベルを下げたい人向けにソフトウェアエディターもある。
- Micron のビルドクオリティへの苦情は多く読んだが、この個体は完璧に動く。Miley Cyrus が使っていたから良い物に違いない。シンセエンジンは Akai Miniak と同一という話。思ったほど見つけやすい機種ではなく、現在の相場は完全にランダム。おそらく世に出たコンパクトシンセ鍵盤の中で最も機能過多。
- こんな小さな箱にここまでシンセを詰め込んだのは、Alesis がやり過ぎたということなのか。今日のイントロ曲で既に Micron の音は聴いている。全員の好みには合わないだろう。8ボイスのポリフォニーでどこまで行けるか知りたい。「全部まるごとバーチャルリアリティ体験だった」。
- 「いいね」。この手のアレンジには8ボイスは多くない。内部レベルにももっと気を配る必要がある。
- それでも音とフィルターの滑らかさは気に入った。Micron のリズムセクションとシーケンスは驚くほど強力なので、BeatStep Pro に同期して試してみる。
- Micron のリズムセクションほどのパンチが無いドラムマシンは、世の中に結構ある。ワークフローは専用グルーヴボックスのような洗練さは無いが、誰も Elektron 級のユーザー体験なんて期待していない。
- Micron を「最もアナログっぽく鳴る VA シンセ」とは言わない。それでも、ある種のドラマと謎めいた感じは持っている。この不気味な遺物でコズミックホラー・ブレインダンスをやる時間だ。
- Verdict。microKORG のファンとして、あれほど似ていてあれほど違うシンセを触れたのは興味深かった。KORG のゼロ年代オリジナル・ヒップスター鍵盤との比較になる。
- microKORG が最も成功した楽器になった一方、Micron ははるかに深いシンセエンジンの上にある。それは祝福であり呪いでもある。兄貴分の Ion でのパッチ作りはきっと生産的で最高に楽しいはずだが、Micron でゼロから音を作るには健全な量の精神力が要る。で、次に俺がやるべき馬鹿なことは何だ。Ion を買うか、それとも無数にいるらしい宇宙billionaireの誰かを説得して自分が生き別れの息子だと信じ込ませるか。
- そして100万ドルで Alesis を買収させ、20年前のシンセエンジンをベースにした専用グルーヴボックスを作らせる。すまん、デカくて嵩張るキーボードを置く場所はもう無い。観てくれてありがとう、また次回。