この回の結論
Arturia のオリジナル Brute シリーズは、ヴィンテージシンセのいいとこ取りに現代的なひねりを少し足したもので、音はクラシックなアナログモノとソフトシンセと「Dimebag Darrell がブルースセッションで作りそうなエレキギターの音」の中間あたりをさまよう。MiniBrute の自己説明的な UI も素晴らしいが、それでも小さい Micro のほうが好きだ。コンセプトの本質だけに煮詰められていて、Mini の内部配線のほとんどは自分でパッチし直せるし、耳をつんざく変でガサついた重い音を作る邪魔をするものが何もない。個性の強いチーズと同じで、このやたら癖のあるフランスの珍味は誰の口にも合うわけではない。自分は特別な日のために一つ取っておく。
何を喋っているか
- 世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。今日は Arturia MicroBrute。時は 2013年、Arturia のシンセ・プロモ映像は「魅力的だけど親しみやすいヒップスター」度がピークに達していた。
- St. Anger のスネアみたいな音でヘンなシンセロックをやり、Instagram フィルター最大。「もう耐えられない」。その怪しいマーケ判断にもかかわらず、製品自体は振り向かれた。ただでさえ小さい MiniBrute をさらに縮め、コントロールを減らし、アリバイみたいな鍵盤を付けた版だ。
- 上位機と同じく完全アナログの信号経路と、あの Arturia モノの音。クエンティン・タランティーノが足を愛するくらい愛するか、まったく愛さないかのどちらかだ。一見するとチェック項目は全部埋まっていて、可愛さで加点まである。兄貴分に比べて機能とツマミは削られており、パルス幅のエンベロープ量ノブは無い。
- トライアングルの Metallizer も同様。ウルトラソウの「スーパー・ドゥーパー・ハイパー・ウルトラ」ノコギリ波コントロールは簡略化、ノイズジェネレーターも無し。Mini のサブオシレーターに何をやったのかは説明しづらいが、これはこれで嫌いじゃない。
- Steiner-Parker フィルターは Notch モードとエンベロープの Slow/Fast スイッチが省略されている。ただ、まったく非科学的な感覚として上位機より少し滑らかに鳴る気がするので自分は構わない。エンベロープは1系統のみで、VCA はゲートに設定できる。
- LFO は1基だが、かなり過激なモジュレーションがかかる。この小さいパッチベイで Colin Benders になれるわけではないが、さっき挙げた制限を回避したり他のアナログ機材と組み合わせるには役に立つ。Roland SH-101 スタイルのシーケンサーも好み。
- 豆知識その1: このシーケンサーを MiniBrute で使いたいなら、MiniBrute SE のファームウェアを入れれば載る。豆知識その2: このシンセにはプリセットが付いてくる。昔ながらのやり方で。
- Brute Factor は、Minimoog のヘッドホン出力をフィードバックさせる古典的な裏技を Arturia 流にやったもの。外部信号も両手を広げて歓迎する。USB は MIDI 通信とソフトからの設定に対応。MIDI IN が単身でぽつんとあるのはちょっと寂しげだ。奥まったチューニングノブは良い配慮。
- 基本的な CV/Gate 端子があるのもありがたい。中古の Micro の価格は非常に手頃なところから (字幕が途切れており正確な数値は不明)。このシンセを貸してくれた Sandro に感謝。MicroBrute は超凝縮されたモノシンセで、音も機能も非常に специфический — ちょっと特化しすぎかもしれない。
- 今日のイントロ曲ですでにこのシンセの音は聞いている。「普通のシンセサイザーの音」に自分が寄せられたのはあれが限界だ。まずは内蔵シーケンサーを軽く走らせてみる。
- 演奏デモ。「自分が作った音楽の中で最高の一曲ではまずないが、雰囲気は伝わるだろう」。シーケンサーは音楽的なアイデアを速く吐き出すのに向いている。
- ただし、伝統的なシンセ音と Arturia のモノが悪名を轟かせている攻撃的な音との境目は紙一重。そろそろ小さいパッチベイを使う頃合いだ。BeatStep Pro に繋いでみる。
- 「このセットアップがモジュラー愛好家の琴線に触れるとは思わないが、少なくとも車の防犯アラームみたいな音はしていない」。モジュレーションの選択肢があるのは素晴らしいし、外部機材のパッチインも問題なく機能する。
- Micro とジャムしていて、複雑に絡み合うパラメーターのスイートスポットを当てるのは必ずしも簡単ではなかった。スタジオで時間をかければ解決するのか試す。「閉ざされた扉のネオクラシカル・アナログ CGI ホラー・ダンスフロア・アンセムほど恐ろしいものはない」。
- Verdict。Arturia のオリジナル Brute シリーズは、ヴィンテージシンセのいいとこ取りに現代的なひねりを少し足したもの。
- 音はクラシックなアナログモノとソフトシンセと「Dimebag Darrell がブルースセッションで作りそうなエレキギターの音」の中間あたりをさまよう。MiniBrute の直感的な UI も良いが、それでも小さい Micro のほうが好きだ。コンセプトの本質だけに煮詰まっていて、Mini の内部配線のほとんどは再現できるし、耳をつんざく変でガサついた重い音を作る邪魔をするものがほとんど無い。
- 個性の強いチーズと同じで、このやたら癖のあるフランスの珍味は誰の口にも合うわけではない。自分は特別な日のために一つ取っておく。視聴に感謝。高評価・登録・Patreon・見たい機材のコメントもよろしく。
- 月例の「ヴォコーダー・シャウトアウト」。Tier 4 から。Mini Nova の回でヴォコーダー機能を完全に無視していたので、使えるかどうかここで確かめる。
- Tier 5 と 6。ヴォコーダー以外のボーカル FX もあるので、ついでに本物のチューブアンプに通し、Palmer PDI03 ロードボックス兼スピーカーシミュレーターで受ける。
- 支援への感謝。また来月。