過去のクリスマスのシンセ?

Bad Gear - Korg Kaossilator Pro - The Synth of Christmas Past???

この回の結論

Kaossilator Pro は玉石混交。自分を含め大半の人は KORG を愛しているし、この機械の音の多くは良い。だが山ほどの理由で、DAWless のセットにもコンピューター中心の制作にも、自分のどのワークフローにも収まらない。コメント欄で皆が言う通り「close but no cigar (惜しいが葉巻はもらえない)」。バズったKickstarter案件なら「まあ来年に期待」で済ませるが、KORG のような老舗は明白な欠点を大型ハードウェア更新でも直さないことが多すぎる。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われたオーディオ機材の番組、Bad Gear へようこそ」。メリークリスマス。今日は初日からコメント欄で恐らく最も多くリクエストされてきた楽器を扱う。
  2. KORG Kaossilator Pro。2010年発売、可愛らしい元祖 Kaossilator を盛りに盛った版で、リストの最上位に一ヶ月居座っていた。この静かな時期にちょっとした騒音を持ち込むのに理想的な道具だと思う。先週のドイツ臭さ全開の Quasimidi シリーズのように、革新と技術的進化と隆盛したシーンの物語を背負った楽器は多い。だが Kaossilator Pro を調べた結果分かったのは「これはただの楽器だ」ということだった。
  3. 兄弟機の Kaoss Pad と元祖 Kaossilator は John Paul Jones (我々ごときが語るのも畏れ多い) から Radiohead まで幅広く使われた。Kaossilator Pro 本体も Jon Hopkins や Kimbra の近くで目撃されている。ただ、あの唯一無二の Jordan Rudess (Dream Theater) ですらデモに苦戦しているとなると、疑いの目を向けたくなる。
  4. 一見すると Kaossilator Pro は全項目にチェックが入る。サタデー・ナイト・フィーバーのダンスフロアみたいなタッチ感応パッド、DJ機材風のラバーボタンがずらり、音量とメニュー潜り用のノブ。外部機器やマイクを挿してループ・加工・録音ができ、アルペジエーター専用スライダーもある。microSAMPLER に触発されたのか KORG はカードリーダーも載せた。USB 接続と専用エディターソフトは評価する。少なくとも自分の Windows 機ではちゃんと動いた。
  5. KORG は 200 のプログラムを収録している。ほとんど詰められないが。パッドコントローラー向けの FX 系だけでなく、明るいリード、最良の意味でプラスチッキーなベース、コード、ドラム、パターン、そしてボコーダー系に強く振った FX セクション。このうち8個をスロットに割り当てられる。
  6. 操作は理解しやすい。プログラムを選ぶ → パッドで何かする → 4つのルーパースロットのどれかに録る → 繰り返す。1つのバンクに好きなだけ音を重ねられるが、後からほどくのが少々厄介になる。大きな痛手として、自分の知る限り undo が無い。そして全然盤石でないのが MIDI 実装。
  7. 他の機材と同期を取るのが厄介なだけでなく、キーボードや DAW から音を鳴らそうとすると深刻な制限にぶつかる。内蔵シンセエンジンはコントロールチェンジしか受け付けない。ノートメッセージを Kaossilator が音楽的に意味のある形で受け取る CC に変換するチュートリアルや手順は存在する。が、勘弁してくれ。クリスマスの平和はもう壊し始めているので続けると、よく練られたスケール・キー・ノートレンジ設定があるにもかかわらず、パッドはメロディを弾くのに理想的なインターフェイスではまずない。
  8. パッドから得られる視覚フィードバックは常に役立つとは言い難く、クオンタイズ機能も見つからなかった。まあ必要としていたわけではないが。タイミングといえば、ロード時間。長くていらいらするロード時間。
  9. 5ピン MIDI は前述の制限付き。メインのオーディオ入出力は RCA のみで、これはあまり好きではない。後継の Kaossilator Pro+ は今も多くの店で在庫がある。クリスマスでなかったら、あの値段を出すかどうかは怪しい。欠点はあれど、靴下に詰めるプレゼントとしては十二分に悪くない。しかしなぜこんなに多くの人がこれを番組で見たがるのか。
  10. Kaossilator Pro の音は既に番組のイントロ曲で聴いてもらっている。白状すると本体のパッドで全部の音を弾いたわけではなく、80年代風の菱形パターンは早々に取りこぼした。ワークフローをロマンチックに美化した映像で、実際の動作を見てもらおう。
  11. こういう風に使えたら最高なのだが、勘のいい人は既に映像編集の魔法に気づいているはず。これをちゃんとやれる人はいると思うが、自分はクオンタイズの不在とパッドで正しい音を当てることと種々の不快な UI の癖に苦しんだ。MIDI 実装と同期機能については「惜しい取りこぼし」の話が山ほどある。このドラムンベース・ジャムで回避策をいくつか試してみたい。
  12. 繰り返しになるが、これも実際に弾いていた時の楽しさより映像の方が良く見えている。ループを外の世界と同期させ続け、コンピューターも専用の MIDI 変換ハードも使わずに BeatStep Pro でプログラムを鳴らす方法を見つけるまでに、かなりの時間を要した。
  13. 新しい機材を手にした時にまずやるのは、カウベルの音が出せるかどうかの確認だ。Kaossilator Pro には1つしか見つからなかったが、それを 2000年代後半風の音色群と組み合わせて聴いた瞬間、何をすべきか即座に理解した。カナダ・ヨーロッパ友好と時代遅れの通信機器を讃えるプログレッシブ・ハウス EDM である。
  14. Verdict。KORG Kaossilator Pro は玉石混交だ。自分を含め大半の人は KORG を愛しているし、この機械の音の多くは素晴らしい。しかし。
  15. 長々と挙げた理由から、これは自分のどのワークフローにも、DAWless のセットにも、コンピューター中心の音楽制作にも収まらない。コメント欄で多くの人が指摘した通り「close but no cigar (惜しいが葉巻はもらえない)」。これがバズった Kickstarter の目玉なら「まあ来年に期待」と肩をすくめて済ませる。だが KORG のような老舗企業の製品となると、最も明白な欠点を大型ハードウェア更新でも直さないことが多すぎる。
  16. 「郵便受けの隙間から廊下にペンキを塗っている」ような気分にさせる楽器がある。Kaossilator Pro はもっとひどくて、両手に40オンス瓶をテープで縛りつけられた酒盛りの真っ最中にエレクトロニックのライブセットをやろうとしている感じだ。誤解しないでほしい、自分だってこれをジャムに組み込みたい。でも全能なる KORG サンタへの願い事リストが、自分の趣味には少し長すぎる。次の Kaossilator Pro が「未来のクリスマスのシンセ」であることを願う。観てくれてありがとう、また来年。
  17. いつもの締め。高評価とチャンネル登録、そして次に番組で見聴きしたい機材をコメントに残していってくれ。