PS1で音楽を作ったらこうなった

I made MUSIC on the PS1 and THIS happened

この回の結論

露骨で強烈なノスタルジー補正を差し引いても、Music 2000 / MTV Music Generator がどれだけ強力で完成されていたかは驚異的。その敷居の低さとサンプリング機能はベースミュージック、ジャングル、グライムといったジャンルに影響を与えたし、ワークフローは10代の頃に何十時間も溶かしたマイナーな PSX ゲームと比べて大して悪くない。ただし MIDI もシンクも無く、当時のハードのグルーヴボックスより現代のセットアップには遥かに向かない制約だらけでもある。音楽的な挑戦と楽しい時間の浪費を求めていて、90年代末のダンスミュージックに弱いなら、古い PlayStation を引っ張り出す理由として十分。しかも、ほぼ同じ制約を抱えた今どきのグルーヴボックスより確実に安い。

何を喋っているか

  1. 今回は Music 2000、米国名 MTV Music Generator。初代 PlayStation 用の音楽制作ソフトだ。「例のもう一つの番組」用に買ったのに、調べたら文字通り誰一人これを嫌っていなかった。Crash Bandicoot と鉄拳3 をやっていた世代のオタクにとって、これが人生初の音楽制作ツールだった。しかも現代のグルーヴボックスと同じ、間抜けなグラフィックと妙な制限つき。
  2. 1999年のこのソフトは他の PlayStation ゲームと同じく CD-ROM から起動する。中身は大量のサンプル。定番のドラムヒット、シンセや生楽器のワンショット、そして俺の趣味には多すぎるギター。
  3. 90年代サウンドの山盛り。ソウルフルなボーカル、suffering だの hurting だのの喘ぎ、そしてお約束の DJ ウィキウィキ。自分の音もサンプリングできるがそれは後述。ジャングル系にかなり比重が置かれていて、CD に入っている Groove Rider のアレンジがそれを見事に証明している。
  4. 膨大なライブラリからプリセットループを並べるだけではない。ちゃんとした24トラックのシーケンサーが入っていて、リバーブ専用トラック、簡易テンポオートメーション、グローバルトランスポーズまである。打ち込みは伝統的なピアノロール。驚いたことに、俺の知る大半のグルーヴボックスのタッチスクリーンより PlayStation のコントローラーの方がこの作業に向いている。
  5. 簡易なリアルタイム録音もある。ノートデータ以外に、振幅とピッチにかかる LFO、リトリガー (なぜかリバーブセンドもここに同居している)、パンニング、サンプルスタートポイント、振幅用の複雑なエンベロープにアクセスできる。専用の FX パラメータでコーラスやディレイも。
  6. これらのパラメータはノート単位で変えられて、これが凄まじく強力。音楽情報は「riff」という単位に保存される。トラック自体はモノフォニックだが、複数トラックにまたがる riff を作ればそれなりに使えるポリフォニーになる。riff の最大長は8小節。
  7. 編集機能が意外なほど強力で、最大999小節のアレンジを楽に組める。riff を変更すると同名の riff が全部変わるが、複製すればバリエーションを作れる。FL Studio のワークフローとかなり似ている。
  8. 操作系の解説。X が決定と riff / ノートの挿入、□ が削除、○ がコンテキストメニュー、△ が一階層戻る。ショルダーボタンはショートカットで、すぐ手が覚える。SELECT はノートとシーケンサーの編集用、START は riff とアレンジの再生兼プリリスニング。OG の PlayStation マウスで使ったことがある人はコメントで教えてくれ。音声のサンプリング手段は CD ドライブのみ。
  9. 自分のサンプルもゲームディスクのサンプルも 11 / 22 / 44kHz のいずれかで取り込める。プロジェクトで使える音声の総尺はこの音質設定次第で、11kHz なら19秒、CD クオリティならたった5秒弱。ユーザーサンプルはメモリーカードに保存でき、メモリーカードは今も製造されている。
  10. サンプリング手順は CD の入れ替えが必要で面倒だが、音声編集は昔の Akai よりよほど快適だ。オフラインのループ処理、エフェクト、サンプルのミックスもできて良い。ドラムループのビートマッチを試したら最初はうまくいったが、セッションを読み直したらタイミングが完全に崩壊した。ジャム機能 (マルチプレイ対応のゲーム化の試み) からは音楽的に意味のあるものを何も引き出せなかった。
  11. MTV Music Generator と名乗るだけあってビジュアライザーが結構優秀。望むだけのサイケなベクターグラフィックスが手に入る。自動生成の映像も、専用の4チャンネルアレンジャーで組むカスタム映像もいける。ここで内蔵サンプルだけ、しかもほぼ最高音質で作った自作トラックを披露。ビジュアライザーが何を出してくるかも見たい。
  12. 自作トラックとビジュアライザーのデモ。
  13. 「音はパンチがあって、ちょっと処理を足せばレコードで使っても構わない」。PlayStation のリバーブを扱った動画がバズったのには理由がある。長いサンプルは既にサンプルレート低減の拷問を受けている。次はブレイクビーツを読み込んでガッツリ潰し、シンセ機能の欠如を microKORG で補い、リロードでループが全部壊れるまでどこまで行けるか試す。
  14. 2曲目、ブレイクビーツと microKORG のデモ。
  15. Verdict。ノスタルジー補正を除いても Music 2000 / MTV Music Generator は驚くほど強力で完成している。手軽さとサンプリング機能はベースミュージック、ジャングル、グライムに影響を与えた。ワークフローの悪さは、十代の頃に何十時間も溶かしたマイナーな PSX ゲームと大差ない。ただし現代のセットアップには当時のハードのグルーヴボックスより遥かに不向きな制限がある。
  16. MIDI もシンクも無い。そして視聴者の何人かは既にサウンドライブラリのバックアップの入手先を突き止めているはずだ。音楽的な挑戦と楽しい時間潰しを求めていて90年代末のダンスミュージックに弱いなら、Music 2000 は古い PlayStation の埃を払う十分な理由になる。おまけに、ほぼ同じ制限を持つ今どきのグルーヴボックスより確実に安い。
  17. 締めの挨拶。高評価・登録・Patreon の告知と、「この番組で Bad Gear 以外にどんな企画をやってほしいかコメントで教えてくれ」。