史上いちばん汚いドラムマシン

Bad Gear - Boss DR-202 - Dirtiest Drum Machine of all Time

この回の結論

Boss DR-202 は確かに非常に汚いドラムマシンだ。下敷きになっているサンプルライブラリは気に入っているが、サンプラーの兄弟機と同じく、90年代末の「安いグルーヴマシン」バブルのさなかに急ごしらえで組み立てられた感が拭えない。しかも全体の音はどこかぼやけていて、フィルターのレゾナンスは強く上げるとひどい音になる。で、ほぼ修辞疑問と化したあの問い「レコードみたいな音にできるか」だが、答えはイエス。ただし、きわめて90年代的で、きわめて汚いレコードならば、の話だ。

何を喋っているか

  1. 世界一嫌われたオーディオ機材の番組へようこそ。Roland が現代音楽史に与えた影響は過大評価しようがない。FX ユニットを一般層に広め、ヒップホップ・R&B・テクノ・ハウスの音を決定づけ、そして何より、このチャンネルがレビューする機材に永遠に困らないよう取り計らってくれた。
  2. 今日の題材は DR Groove こと DR-202。1998年、Roland の別人格である Boss からリリースされた。この文字どおりのドラムンベース・マシンは Dr. Rhythm シリーズの一員だが、他のメンバーがギタリストやソングライター向けの真面目で正直やや退屈なジャム相手だったのに対し、DR-202 は90年代の暗くていかがわしいダンスフロア用のサンプルを積んでいる。その時点でもう乗り気だ。
  3. 見た目は要件を全部満たしている。「マトリックスが赤かったら、これがマトリックスのドラムマシンだった」という感じの箱。ラバーパッドがたっぷり、バックライト付きのものとそうでないものが混在。リアルタイム・コントロールも一通り揃い、ジョグダイヤルの感触はかなり良い。そして伝統に従い、ディスプレイは忌まわしい代物。
  4. 207個のロービット・ドラムサウンドはピッチを変えられ、13音ずつ2キットに組める。ヒップホップ、ジャングル、ドラムンベースのデモを鳴らしていく。
  5. 四つ打ち系のネタと、やや保守的なドラムヒットも収録。さらにこれまた輪をかけてロービットなベース音が49個という、脈絡のない品揃え。
  6. これらは扱いやすいパターンベースのシーケンサーで鳴らす。素直なクオンタイズ、パターン長は最大8小節、ベースにはポルタメント、リアルタイム入力とステップ入力の両方あり。リアルタイム・モディファイアは全楽器にかけられる。
  7. しかも楽器ごとに個別にかかる。そう、キットのパート1つ1つにフィルターと基本的なエンベロープが付いている。ただし本物のシンセ並みの音質と自由度は期待するな。
  8. こうしたツマミ操作はパターンに記録できる。リバーブ・ディレイ・フランジャーの FX は非常に DJ 臭くて気に入っている。
  9. ローをブーストすればグルーヴの低域は理性の限界を超えて膨れ上がるし、カットすれば消し飛ぶ。DR-202 のロールは意外なほど複雑なパターンが組める。パートのミュート/ミュート解除の操作はやや分かりにくい。グルーヴ・クオンタイズも追加可能。
  10. 90年代末のダンスミュージック機材である以上、RCA とミニジャックの端子構成は驚くにあたらない。電源は FX ペダル用の AC アダプタか電池。MIDI 実装はやや雑。あとソングモードもある。この機械は非常にノイジーで、ワークフローも欠点なしとは言えないことは頭に入れておくこと。
  11. DR-202 は思っているほどレアではなく、価格もまあ許容範囲。スタイリッシュな低予算レトロ・ドラムマシンで、汚いロービット音がたっぷり入っている。今日の基準ではちょっと汚くてロービットすぎるくらいに。冒頭のイントロ曲ですでに DR Groove を聴いてもらっている。ドラムは太いが同時に少しスポンジっぽく、ベースのサンプルは本物のシンセの代わりにはならない。
  12. 緑と黒のデザインは、この DR シリーズにおける視覚的な良いカウンターポイントだと思う。
  13. それにしても凄まじい低域だ。ロール機能のおかげで複雑なパターンを素早く組めるが、パッドがベロシティ非対応なのはダイナミックなグルーヴを打ち込むうえで制約になる。正直、DR-202 を使いこなせるようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。というわけで近道を選び、BeatStep Pro を投入する。
  14. BeatStep Pro を繋いでのジャム。
  15. 「汚い地下のリハーサルスタジオでテープに録ったトラップキット」みたいな音のドラムマシンを探しているなら、探す必要はもうない。DR-202 の素の出音は、まあ、とにかく生々しい。ここで恒例、この「フューチャー・ジャングル・レトロ・ドラムンベース・ポスト構造主義ブレイクビート・おしゃぶり」をレコードみたいな音にできるか試す。
  16. 仕上げたトラックのデモ。
  17. Verdict。Boss DR-202 は確かに非常に汚いドラムマシン。下敷きのサンプルライブラリは好きだが、サンプラーの兄弟機と同様、90年代末の「手頃なグルーヴマシン」ブームのどさくさで急ごしらえされた感がある。おまけに全体の音はややぼやけていて、フィルターのレゾナンスは上げすぎるとひどい音になる。
  18. そこでほぼ修辞疑問と化したあの問いに戻る。レコードみたいな音にできるか。答えはイエス。ただし、それが非常に90年代的で、非常に汚いレコードであるならば。視聴に感謝、また次回。高評価・登録・Patreon、そして次に見たい機材のコメントを。