フランケンシュタインのテクノ研究室?

Bad Gear - Roland Phrase Lab MC-09 - Frankenstein’s Techno Lab???

この回の結論

まともな Bad Gear という点で Roland は期待を裏切らない。MC-09 も同様で、より良い 303 エミュレーションも、より強力なルーパーも他にあるし、UI は完全に散らかっている。それでも音の新鮮さと 2000年代初頭特有の変な味は唯一無二。ただ、それが投じる時間と労力に見合うかは分からない。MC-09 は「まったく興味が湧かない」か「一目で惚れる」かのどちらかの機材で、後者ならひどい価格も変な UI も学習コストも気にならない。Roland が旧式化した90年代テクノロジーを最後に投げ込んだ物置、その不格好な美しさを少し味わってほしい。

何を喋っているか

  1. 世界一嫌われたオーディオ機器の番組 Bad Gear。信じられないことに Roland 製品を1ヶ月以上扱っておらず、もう深刻な禁断症状が出ている
  2. 炎上ネタになる Roland 機材が枯れる心配はまずない、と断言。今日の処方箋は Phrase Lab MC-09。2002年のシンセ+グルーヴボックス+ルーパーで、悪名高い MC の名を冠する中でも特に地味な一台。同年にフラッグシップの MC-909 が出ており、こちらは本格的な制作環境として作られたわけではない。
  3. そもそも MC-09 が何なのかを言うのが難しい。デジタル・モノフォニック・アシッド・フランケンシュタインに機能をちょい足しした代物。ルーパーの上にバーチャルアナログシンセとドラムマシンのさくらんぼが載っている。見た目は Y2K 風の疑似レトロデザインで、少し薄汚れているときが一番かっこいい。本体の奥にはターミネーターの眼球が埋まっている。
  4. スマートメディアのスロット付き。正直この10年まったく恋しくならなかった規格。5ピン MIDI 入出力と音声の RCA。構造はよく整理されて見えるが、見た目は当てにならない。FX・シンセ・ドラムの声部が同時に使えると思いきや、使えない。モノフォニックのリード/ベース部は思ったより多芸だが、深く弄るにはキーコンビネーションを大量に暗記する必要がある。
  5. 暗記が嫌ならトーンプリセットから選べばいい。中身は「メロウ・アシッド」「ダーティ・アシッド」「ウィアード・アシッド」といった具合。アシッドしかない。そしてリズム部にはがっかりした。
  6. キック・スネア・ハイハットからなるいじれないキット10種では、お気に入りの TR 系ドラムマシンの座は絶対に奪えない。Roland の他のグルーヴ機と同様、シーケンサーは使えるがやや面倒。タイ、スライド、アクセント、あと水を一杯。
  7. 外部入力とセンターセクションの出力を4トラックのルーパーに録って並べられる。同期は可能だが1ループ6秒未満に制限。サンプルのロードとセーブは、その間に買い物を済ませられるくらい長い。ループコントロールでサンプル1をクロマチックに弾ける。シーケンサーのボタンでサンプルを叩き、
  8. MPC 風にチョップもできる。複数トラックを1本にバウンスするのも可能、ビートルズと同じやり方だ。「Edit 1」機能は、ご想像どおりループ1のピッチ・開始点・長さを編集するもの。多少ヴィンテージ寄りの Roland 製品らしく、マニュアルは逆説的で、必要なのに大して助けにならない
  9. 作りは意外にしっかりしている。中古相場は本質的に壊れているので、この個体を送ってくれた Berlin の A Sound Sound System の Mux に感謝したい。ライブジャムと電子音楽制作には楽しそうな小道具。Uli Behringer はそのうちクローンを出すだろうか。MC-09 の音は既に番組のイントロ曲で聴いている。
  10. YouTube チャンネルのテーマ曲業界にいるなら第一候補ではないかもしれない。汚いオールドスクールなアシッド欲を満たせるか試す、というデモ。
  11. 結果は良し悪し半々。VA シンセ自体はなかなか良い。ハイエンドではないが TB 系モノシンセの解釈として面白く、キャラもある。ドラム部は好きになれない。音に抜けも深みも無く、いじる方法も見つからなかった。
  12. タム、クラップ、シンバルの音があれば助かったのに。ループ音量にフェーダーがあるのはいいが、もっと整理された UI は世の中にいくらでもある。次はドラムンベースのワークフローを掘り下げてみる、というデモ。
  13. 正直、あのデモにはかなり練習が要ったと白状。ジャム中のモード切り替えは事故りやすく、肝心なことをやるのに無駄な手順が多すぎる。ただしルーパーのざらついた音は好き。Phrase Lab は繊細な音も出せるが、このレビューには次のやつが欠かせない。
  14. 公衆衛生局長官による警告つきのデモ。荒廃した街の倉庫で発電機を回すパーティー、近隣迷惑
  15. Verdict。まともな Bad Gear となると Roland は決して外さない。この象徴的メーカーの機材だけを扱う専門チャンネルを開けるくらいだ。MC-09 も期待どおり。もちろん、もっと良い 303 エミュレーションも強力なルーパーもあるし、UI は散らかり放題。
  16. それでも音の新鮮さと 2000年代初頭の変さは唯一無二。ただ、それが投じる手間に見合うかは分からない。MC-09 は「まったく興味が湧かない」か「一目惚れ」かの二択の機材で、後者なら法外な価格も奇妙な UI も学習曲線も些細な話。
  17. 万人向けの茶ではないが、Roland が旧式化した90年代テクノロジーを最後に放り込んだ物置、その不格好な美しさを少し味わおう。最後にいつもの高評価・登録・Patreon・次に見たい機材のコメント依頼。