この回の結論
Drumlogue は扱いやすいドラムマシンで、KORG がグルーヴマシン屋として全盛だった頃を思わせる音がたくさん入っている。立ち位置は DrumBrute Impact の手触り重視と、Elektron 機のマリアナ海溝級の深さのちょうど中間。ただし全体が荒削りで未完成に見え、KORG の「製品放り出し」の前科を思うと落ち着かない。売上の数字は知らないが、近い将来これが投げ売りで 299 になってもちっとも驚かないし、その値段ならかなりの買い物だ。
何を喋っているか
- 世界で最も嫌われたオーディオ機器の番組へようこそ。KORG のディスコグラフィにはヒット曲がけっこう多い、と音楽アルバム風の紹介。初期の名盤、「Don't Fear The Roland」、死なないエヴァーグリーン、そして内なる自分を探らせてくれるコンピレーションアルバム。
- 今日の題材は Drumlogue。新型で待望のデジタル/アナログ・ドラムマシンで、KORG が「高級・次世代・取説必読」系メーカーに追いつこうとした一台。2年以上前に発表され、ベイパーウェア扱いされ、ようやく発売されるや大論争を巻き起こした — Bad Gear 級のリリースだけが起こせる嵐だ。
- 一見すると Drumlogue はシンセ・ミームを全部押さえている。Photoshop のモックアップみたいな箱、100%ぐらつかないノブ、そして「コード」。それが volca 風のちまちましたツマミ、ベロシティ非対応のシーケンサーボタンと不敬な同盟を組んでいる。
- ほぼ読めないラベルの隣に、UI を移動するためのさらに小さいボタン。手を動かせそうなコントロールが並んでいるのに、実際はメニューの奥深くに潜りながら画面を見つめている時間が長い。
- マーケティング受けのいいアナログ音源は、原始的でファジーなオシレーター+エンベロープの組み合わせが土台。そこに現代基準に引き上げるためのデジタル成分らしきものが、主にドラムのアタック部分に少量だけ足されている。キックのパンチ、スネアのノイズと Roland TR の破片、タムに意味を与える短いインパルス。
- 専用ノブはありがたいが、DJ フィルターを思わせるローパス/ハイパスのような重要パラメータの多くは結局メニューを見に行かされる。
- 6つのデジタル音は electribe 2 的な内蔵サンプルか、自分のライブラリから読み込んだもの。ただし読み込み先は残念なほど小さい 32MB のメモリで、現状この機械でサンプリングはできない。
- サンプルは前述のフィルターと、パーカッション種別ごとに用意されたエンベロープで加工できるが、これが自分の好みには制限がきつすぎて、ループのような長いオーディオをまともに再生できない。アナログ音にもある drive に加え、サンプルは Redux パラメータでデジタルなロー ファイの絞り器にかけられる。
- electribe ER-1 や volca drum の系譜のデジタル・ドラムシンセ的な楽しさを期待していた。KORG はシンセシス機能を入れてはきたが、どれもいまひとつ。パラメータ3つだけの簡素な FM ドラム音源、フィルターノイズ、そして……
- サードパーティ製エンジン用のプラグイン的なスロットが1つ、現在は Sinevibes の VA シンセが入っている。prologue / minilogue XD / NTS-1 のファンは自分の SDK 資産を突っ込めると期待するかもしれないが、アーキテクチャは似ていても Drumlogue とは互換がない。しかもマルチエンジン3つは同時に使えない。
- 実用本位の FX セクション。ディレイと FX センド、お約束のサイドチェイン、マスターバスの音破壊ユニット。
- 内蔵 FX で足りないなら、本体は6系統のオーディオ出力と柔軟なルーティングを持っている。ここは良し。
- KORG はスカンジナビア系ワークフロー機で知られる機能の実装にかなり頑張った。64ステップシーケンサーのパターンに動きと音程感を足すモーションレコーディングがあるのは言うまでもない。
- プロバビリティ、ラチェット、オルタネートの解釈はスウェーデンの本家にかなり近い。MIDI コントローラーやキーボード用の USB ホストにもなれるが、音程のあるパートの扱いは理想的とは言えない。MIDI で弾いて録音することはできる。
- モーションを使って手打ちすることもできるが、セットアップの中心に据える機材に期待するエレガンスと自由度が足りない。将来のファームウェアで変わるかもしれない。他には、フィルやバリエーション用の Loop モード、チェイン、機能するキット/パターン管理。
- MIDI は改善の余地ありだがアナログ SYNC と USB でのコンピュータ連携はある。この競争の激しい市場で沈まないため、KORG は Drumlogue をお手頃な299ユーロで売っている — 冗談だ、600ドル前後だ。つまりほぼ Roland TR-8S の領域。試聴機を貸してくれた地元の楽器店 Klangfarbe に感謝。
- 大きな約束を背負って登場した待望の楽器。それを守れるのか、それとも遅すぎ・足りなすぎなのか。今日のイントロ曲でもう聴いてもらったが、あれは色々な理由でうまくいかなかった。今度は得意分野を活かした「証明用」のジャムでいく。
- ジャム。こっちのほうがずっといい。内蔵シンセは Model D ではないが、ちょっとしたメロディを足すぶんには問題ない。今後別のバリエーションが出るかもしれない — 希望は最後に死ぬ。
- 基本的なビート作りのワークフローは好きだが、音程のある要素を入れ込むのは面倒になりがち。モノシンセと外部エフェクトを足す時間だ。
- ここには色々ある。複数出力はありがたいが、出力レベルが高すぎて必要以上にゲインステージングが難しい。さらにアナログ・ドラムは期待したほど外部処理に耐えてくれず、VA シンセの実装はガタついている。Drumlogue の音の美学は今日の基準ではやや埃っぽい。
- でも、レンジで温めた90年代テック系ミニマル・ダブテクノを何年もやった後なら、そろそろ北東部リバイバルの時期じゃないか?
- Verdict。Drumlogue は使いやすいドラムマシンで、KORG がグルーヴマシンの作り手として全盛だった頃を思わせる音が大量に入っている。位置づけは DrumBrute Impact の手触り重視と、Elektron 機のマリアナ海溝級の深さの中間。だが荒削りで未完成に見え、KORG の製品放り出しの歴史を思うと不安になる。
- KORG の販売数は知らないが、近い将来 Drumlogue が投げ売りで実際に299になってもこれっぽっちも驚かない。そうなればかなりお買い得だ。以上、また次回。よければ高評価・登録・patron、そしてコメントで次に見たい/聴きたい機材を教えてほしい。